« 「御隠居忍法 恨み半蔵」 御隠居、伊賀の亡霊に挑む | トップページ | 「風が如く」第2巻 でっこぼこな力 »

2009.05.14

「惡忍 加藤段蔵無頼伝」第4巻 漫画惡忍、まずは大団円

 「惡忍」コミカライズ版の第四巻にして最終巻が発売されました。惡忍・加藤段蔵が、越後の長尾景虎を向こうに回しての忍びの賭けの果てに、怨敵・千賀地服部家を相手に最後の決戦に挑みます。

 飛び加藤こと加藤段蔵が、長尾景虎=上杉謙信に対して名刀を盗み出すことを請け負い、これを見事にやってのけたというのは、「史実」として伝えられるエピソードですが、本作ではこれを、長尾家直属の忍び衆・軒猿の警戒をかいくぐって、段蔵が直江実綱の宝刀を奪えるか、という形にアレンジしていますが、もちろん腹に一物も二物もある段蔵が、おとなしく術比べをするわけがない。
 軒猿を挑発して怒らせる一方、ついに自分の前に現れた服部保俊ら伊賀衆を罠にはめ、軒猿と相打ちさせんと図るのですが…

 ここから先の展開は、二転三転ではすまない裏切りと逆転の連続。さしもの段蔵もただではすまない強敵たちを相手に、最後の死闘が展開されることになります。

 …が、原作読者からすると、この辺りがあまりに駆け足に見えてしまうのが何とも残念なところ。第三巻までで描かれたのは、ちょうど原作の半ば過ぎだったものが、わずか一巻で残り全てを消化しようというのですから、これはちょっと厳しいものがあったかと思います。
 野暮を承知で原作と比較すれば、二段重ねだったクライマックスを、一つにまとめてしまったゆえの性急さが、感じられるのです。

 とはいえ、原作ではかなり早い段階に描かれた段蔵の過去のエピソードの一つ――段蔵がかつて想いを寄せた薄倖の少女・桔梗の思い出――を終盤に持ってくることによって、段蔵の不敵な横顔の中に潜む怒りの大きさと、戦国乱世とそれを生む大名という存在への復讐のカタルシスを強調させてみせたのは、これは構成の妙と言うべきでしょう。
 戦いはこれからだ、と言わんばかりの終幕も、この構成により、それなりに無理がないものと感じられます。

 …実は、原作ラストで明かされた、段蔵にまつわる驚天動地の秘密がこの漫画版では描かれずに終わっているのですが、あれはむしろ突っ込みどころだったので、これはこれで。

 終盤が駆け足になってしまったのは残念ではありますが、漫画版「惡忍」、まずは大団円であります。


「惡忍 加藤段蔵無頼伝」第4巻(今泉伸二&海道龍一朗 新潮社バンチコミックス) Amazon
惡忍加藤段蔵無頼伝 4 (4) (BUNCH COMICS)


関連記事
 「悪忍 加藤段蔵無頼伝」第一巻 今泉伸二の新境地!?
 「悪忍 加藤段蔵無頼伝」第2巻 痛いほどの画の力
 「悪忍 加藤段蔵無頼伝」第3巻 これも画の力?
 「悪忍 加藤段蔵無頼伝」 無頼の悪党、戦国を行く

|

« 「御隠居忍法 恨み半蔵」 御隠居、伊賀の亡霊に挑む | トップページ | 「風が如く」第2巻 でっこぼこな力 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/45006010

この記事へのトラックバック一覧です: 「惡忍 加藤段蔵無頼伝」第4巻 漫画惡忍、まずは大団円:

« 「御隠居忍法 恨み半蔵」 御隠居、伊賀の亡霊に挑む | トップページ | 「風が如く」第2巻 でっこぼこな力 »