「AKABOSHI 異聞水滸伝」「月の蛇 水滸伝異聞」 二つの異聞、始まる
このブログでおそらく最も需要の少ないのは、水滸伝ネタの記事だと思いますが、それでも続けるのは、もちろん私自身が水滸伝の大大ファンだからであります。
そんな私にとって、この数日非常に気持ちが浮き立っているのは、別々の雑誌で二つの水滸伝漫画――「週刊少年ジャンプ」誌の「AKABOSHI 異聞水滸伝」と、「ゲッサン」誌の「月の蛇 水滸伝異聞」――の連載が開始されたからに他なりません。
天野洋一氏の「AKABOSHI 異聞水滸伝」は、絵柄といいキャラ造形といい、いかにも今の週刊少年ジャンプに原典を落とし込んでみせたといった印象の作品。
腐敗しきった宋国の圧政に苦しめられる民衆の間で伝説となっていた義賊「替天行道」の一人が、暴戻な悪徳官吏を倒して民衆を解放して去っていくという第一話のストーリーは、第一話の定番とも言うべき内容ですが、水滸伝でこれをやるとそれなりに新鮮味があるのがよろしい。
何よりも、終盤まで名乗らない主人公があの豪傑で、あの技をこう描くか! 的な楽しみがあったり、ゲストヒロインと悪役の名が、原典でも因縁があった金翠蓮と鄭屠であったりするのもニヤリとできるところです。
果たして主人公の言うように、梁山泊には――一般的な意味での――正義はないのか、これから描かれるであろうその真の姿も気になるところです。
一方、中道裕大氏の「月の蛇 水滸伝異聞」は、民衆の間で絶大な人気を誇る梁山泊が、実は悪の集団だったという意外な(?)設定で描かれる作品。
偶然とはいえ、こちらも理不尽な暴力に苦しむ語り手を、主人公が救い、去っていくという内容の第一話だったのには、上で定番の内容と書いたもののちょっと苦笑いしましたが、しかし先の見えなさという点ではこちらの方が上かもしれません。
個人的には、やはり梁山泊が悪人集団というのは、元々一面その通りでもあるのですが、心穏やかならざるものがあります。
しかし、あからさまに偽名っぽい主人公・趙飛虎の得物が黒い蛇矛だったり――水滸伝で蛇矛遣いといえばあの豪傑なだけに――、最初に登場したのが李忠に周通の桃花山コンビというのが、困ってしまうくらい似合いすぎだったりして、わかっていて壊す感覚が、何とも魅力的です。
さてこの二作品で興味深いのは、主人公が梁山泊側か、これに抗する側かという違いはあれど、共に梁山泊を単純な正義の味方として描いていないという点で共通していることでしょう。
もちろん、原典が元々ピカレスクロマンであることを考えれば、それはむしろ当然のスタンスなのかもしれません。しかし、ここではむしろ、梁山泊という反社会的集団を通しての、正義という概念の洗い直しのようにも見えてくる…というのは、いささか牽強付会でしょうか。
しかし確実にいえるのは、これら二つの作品が、水滸伝という複雑怪奇な物語の魅力を、それぞれの視点から再構築しているということ。
どうか水滸伝ファンにとってのこの幸せが、長く続きますようにと、祈っている次第です。
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コメント
書き込みは初めてですが、いつも楽しく読ませていただいております。
『水滸伝』を題材にしたマンガが二作品も少年誌で新連載になっているとは全く知りませんでした! 記事を読んで早速、読んでみました。二作品ともこれからの展開が楽しみですね。
僕もこの両作品について記事を書きましたので、トラックバックさせていただきました。
それから、僕はこちらのブログで『水滸伝』関連の記事をいつも楽しみにしてますよ! 日テレドラマ版のレビューも続きを楽しみにしてます。
投稿: Zhi-Ze | 2009.05.21 13:58
Zhi-Ze様:
嬉しいコメントをありがとうございます!
水滸伝ファンとしては、本当に嬉しいシンクロニシティですね。
こちらからもトラックバックさせていただきますね。
そしてこれからも水滸伝記事、遠慮せずに(笑)頑張りますのでどうぞよろしくお願いします。
ドラマ版水滸伝もどんどん感想書きますよ!
投稿: 三田主水 | 2009.05.22 00:35
初めまして。
水滸伝の好漢の星と名前と渾名を序列順に書ける程度の水滸伝好きです。
AKABOSHI 異聞水滸伝の方は知っていましたが、月の蛇 水滸伝異聞の方は不覚にも知りませんでした。
僕の感想は、前者の方は今週でとんでもない水滸伝漫画になる確信を持ちましたが、後者の方は聞けば聞くほどおもしろそうで、興味をひかれる水滸伝ですね。
これは、確認しなければ!!
投稿: はっけよい | 2009.06.25 00:47
はっけよい様はじめまして
同じ水滸伝好きとして、どうぞよろしくお願いいたします。
「月の蛇」はまだ始まったばかりですが、一歩間違えると水滸伝ファンにはイヤな内容になりそうなところを、作者の水滸伝愛で面白くしてくれるのではないか…という印象です。
ぜひ確認なさって下さい。
投稿: 三田主水 | 2009.06.25 01:07