「妖たちの時代劇」 好事家向けの怪談集
2005年に亡くなった歴史研究家・考証家の笹間良彦氏が、普段の著作の傍らに執筆してきたという時代怪奇小説を収録した短編集であります。
時代考証関係の著作を数多く遺されている方だけあって、作中に登場する事物や風習等の記述はきっちりしたもの。特に甲冑武具の研究や戦国時代の合戦研究を中心とされていただけあって、これらの要素がストーリーの中心となって物語が展開されていく作品も、数多く収録されています。
さて、本書には21編の短編が収録されているのですが、しかしその内容は、正直に申し上げれば少々微妙…
題材としてはユニークなものも多く、なかなか珍しい内容のものもあるのですが、小説としての完成度という点では、いささか厳しいものが――上に記した、考証部分が詳細に書かれているだけになおさら――あります。
「二つ髪の女」「深川の狼男」など、題名だけで、おっと思わされるものも少なくないのですが…(ちなみに後者は、狼の毛皮で猫の蚤取りを営んでいた男が、間男の末に私刑で殺され…という因縁話。確かにウルフヘッドなんですが…なんですが)
ちなみに本書は、シモの方面にまつわる作品が多いのも特徴の一つ。例えば上記の「二つ髪の女」も、隠し所の毛が頭髪並みに長い遊女の運命を描いた奇瑞譚で、これはこれで存外取り上げられることが少ない世界ではあり、面白いのですが、いよいよアングラ感が漂ってくるのは否めません。
ネガティブな感想が多くなってしまい恐縮ですが、これは私のような好事家向けの作品ということで、あまり一般の方には勧めにくいな…というのが、これは正直なところです。
「妖たちの時代劇」(笹間良彦 遊子館歴史選書) Amazon

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