« 「織姫かえる 宝引の辰捕者帳」 かえらない宝引の辰 | トップページ | 「闇の釣人 本所深川七不思議異聞」 釣り文化を守る者 »

2009.06.08

「漫画 水滸伝」全10巻 本場水滸伝の味?

 日本では、二年ほど前にソフトバンク社から全十巻で発売された、中国の湖南美術出版社発行の「漫画 水滸伝」翻訳版――存外に水滸伝ファンの間でも知られていない作品です。

 水滸伝の漫画化は、本邦でも様々なクリエーターの手で為されていますが本場中国の漫画というのは、個人的には読むのは初めて(というより中国の漫画自体ほとんど目にする機会はないのですが…)。
 果たしていかがなものかと思いましたが、これが色々な意味で実に興味深く、面白い作品でした。

 内容的には、原典の百回本をベースにした…というより、七十回(百八人の豪傑が集結するまで)をベースに、梁山泊が滅び、宋江が死ぬまでをダイジェストしたというもの。ある意味、水滸伝のリライトではおなじみのパターンです。
(原作の最初の方をじっくり描きすぎて、後の方がえらく駆け足になるのもおなじみ)

 その意味では、内容的にはさして新鮮なものでもないのですが、画的な部分は実によく描けていて、原典のイメージを実に忠実に描き出せていると感じます(特に美女は本当に美女なのがよろしい)。
 とはいえ、日本ではまずマイルドにされる残虐描写が、えらくしっかりと描かれているのには驚かされますが…美女も大変なことに。

 その一方で、動きの描写に乏しいところもあって、漫画表現としては今一つの部分はあり、絵物語的に見えてしまうところもありましたが、これも含めて作品の個性と受け取ることにします。

 さて、水滸伝の二次創作的作品で楽しみなのは、原典に登場する様々なキャラクターとその行動を、その作者がどのように料理するか、ではないかと思います。
 その意味では、本作においては、元軍人組よりも、江湖の豪傑組に、より力点を置いて描かれているのが目を引くところ。特に、魯智深と武松の活躍の描写に特にページが割かれており、初登場時の中心エピソードだけでなく、ラストに至るまで破格の扱いとなっているのが印象に残ります。
 これは、本国で人気のキャラクターということもあるかと思いますが(本国では人気が今一つという林冲の最期が、原典を遙かに超える…というか何か恨みでもあるのかと言いたくなるほどの悲惨な描写となっているのもこの辺りが原因かも)、作者がこの二人を梁山泊の象徴と捉えている表れなのかな、と感じます。

 まあ、この二人の他に、燕青がえらく目立っているのですが、奴は存在自体が反則なので仕方ない。
 とはいえ、燕青と○○○が――をというオチには度肝を抜かれましたが!


 正直なところ、水滸伝ファンの目から見ても無謀な企画だな…と失礼ながら感じておりましたし、速攻で絶版になってしまったのですが、水滸伝ファンであれば、本場の味(?)を一度味わっていただきたいものです。


「漫画 水滸伝」全10巻(梁小龍&陳維東 ソフトバンククリエイティブ) Amazon
漫画 水滸伝 第一巻 80万禁軍教頭、林沖の悲運 (漫画中国四大奇書シリーズ)

|

« 「織姫かえる 宝引の辰捕者帳」 かえらない宝引の辰 | トップページ | 「闇の釣人 本所深川七不思議異聞」 釣り文化を守る者 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/45270996

この記事へのトラックバック一覧です: 「漫画 水滸伝」全10巻 本場水滸伝の味?:

« 「織姫かえる 宝引の辰捕者帳」 かえらない宝引の辰 | トップページ | 「闇の釣人 本所深川七不思議異聞」 釣り文化を守る者 »