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2009.06.23

「弾丸の眼 爺いとひよこの捕物帳」 捕物帖の域を超えた大陰謀

 ほとんど毎月のように作者の新刊が刊行されているにもかかわらず、一年近く続きが登場せずに内心やきもきさせられていた「爺いとひよこの捕物帖」の二巻目が、ようやく登場しました。
 思わず応援したくなるようなひよこ(駆け出し)の下っ引き・喬太と、思わず頼りたくなるような訳ありの爺い・和五助の二人を主人公に据えた連作捕物帖です。

 三年前の大火で父を亡くし、今は叔父の下で下っ引き修行中の喬太。なりは大きいがどうも頼りなかった喬太が、深川に一人暮らす不思議な老人・和五助に智恵を借りるうちに、やがて捕り物の才能を発揮し始めて…というのがシリーズ一巻目のあらすじ。
 生真面目で観察眼はあるものの、ちょっと頼りない喬太が、昔は名うての忍びとしてずいぶんとやらかした和五郎に見守られて少しずつ成長する様は、風野先生一流のキャラクター描写も相まって実に楽しく気持ちよく、私は一冊読んだだけで、大いに気に入ってしまいました。

 この第二巻も、物語展開の基本スタイルは変わらず、これまた前作と同じ短編三話構成の中で、喬太と和五助の謎と人情味に満ちた冒険を、存分に楽しませていただきました。


 しかし本作は、単純な捕物帖というわけではありません。他の風野作品がそうであるように、本作にも、作品全体を貫く背骨となる物語があるのです。
 実は和五郎の過去は、戦国時代から島原の乱に至るまで第一線で活躍してきた伝説の忍び。かつては家康の側に仕え、今でも幕府の目付が事あらば頼ってくるという凄腕の人物であります。

 その和五郎が察知した、将軍家綱暗殺計画――その実行犯である凄腕の狙撃手は和五郎の旧知の人物。そして同時に彼こそは喬太の…というわけで、単なる捕物帖の域を超えた、幕府を揺るがす大陰謀にまで、物語は発展していくことになるのです。

 果たして喬太と和五郎は、この陰謀にどのように挑むことになるのか。そして渦中の人物との再会は…というわけで、いやが上にもこの先の物語が気になります。
 しかも本書は、「ここで終わるなんて殺生な!」と言いたくなるようなシーンで終わっているのがまた心憎い。今度は待たされずに、一日でも早く続巻に出会いたいものです。


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