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2009.06.11

「木曾の褥」 その褥に潜むもの

 大和国の山中で道に迷った一休と賈人の若者の前に現れた「キソ館」なる巨大な屋敷。その中に入り込んだ若者は、館の主である美しい姫に寝所に誘われる。一人外に残された一休は、館がこの地に出没する「ギ」という妖のものと知り、若者を救わんとするが…

 「異形コレクション 妖女」に収録されたお馴染み朝松健の室町伝奇、ぬばたま一休シリーズの一編です。
 今回一休が対決することとなるのは、山中の屋敷に住まう謎の美姫。アンソロジーのタイトルそのままの妖女である姫に魅入られた若者を救わんとする一休ですが、その屋敷に踏み込むことすら叶わず、思わぬ苦闘を強いられることとなります。

 山中異界で美女に誘われた男が、美女の本性である妖に襲われ、危ういところで命拾い…というのは、これは枚挙に暇のない物語のパターンであり、その意味では本作もその一つではありますが、しかし、一筋縄ではいかないのが朝松室町伝奇。
 館に潜む謎の妖「ギ」の正体と、その弱点を如何に暴くか…その一種の謎解き要素――きっちりとミスリーディングも用意されているのがまた心憎い――が、本作の興趣を増しています。


 尤も――この「ギ」の正体については、中国の怪異譚などでも似たような趣向の物語がありますし、また、作中の描写から推理するのは難しくありません。正直なところ、作者の作品としては、比較的ストレートな部類には入るかと思います。

 もちろん、それでも(まことに艶めかしい濡れ場も含めて)きっちりと読ませる作品となっているのは、これは作者の技というものであることは、間違いないでしょう。


「木曾の褥」(朝松健 光文社文庫「異形コレクション 妖女」) Amazon
妖女 (光文社文庫)

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コメント

はじめまして。木曾の褥は、ぬばたま一休で知りました。「ギ」の正体は、きになりますが、悪ではなく愛に生きる妖という解釈の作品もありますね。はり姫はキャラソン出されたそうです。

投稿: チュンリー | 2011.07.05 21:32

チュンリー様はじめまして。
なるほど、そういう解釈もあり得ますね。
妖のロジックは、人間では計り知れないのかもしれません…

投稿: 三田主水 | 2011.07.16 01:20

はい、妖の哲学やロジックは、人知では計り知れないですね。
「ギ」という妖は、作品によっては、セリフなどから愛情深い面がうかがえたりしますし、ストイックでシリアスなイメージで解釈されていたりすることもありますね。
妖は、だからおもしろいし、カッコイイですが・・・。

投稿: チュンリー | 2011.07.22 14:34

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