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2009.07.06

「信長の忍び」第1巻 忍びから見た信長記

 やはり戦国ブームということなのか、最近は戦国ものの漫画を書店でよく見かけますが、本作「信長の忍び」はその中でもユニークな部類に入るでしょう。
 タイトルの通り、織田信長に仕える忍びを通して、信長とその時代を描いた四コマ連作であります。

 本作のタイトルロールとも言うべき主人公・千鳥は、まだ少女ながらも伊賀有数の遣い手(ただしドジっ子)。
 幼い頃に川で溺れたところを救ってくれた信長に憧れ、望んで信長に仕えることとなった彼女の目を通して、若き日の信長の姿が描かれます。

 四コマギャグ漫画のスタイルに相応しく、本作で描かれるのは、ビジュアル的にもキャラ的にもデフォルメされた信長たち戦国の有名人が巻き起こす騒動の数々。
 しかし注目すべきは、それが単なる滅茶苦茶ではなく、きちんとした「史実」に則りつつ、そこにギャグを交えて四コマを成立させている点でしょう。

 一言で言えば、四コマギャグ漫画のスタイルを借りた信長記――歴史を材料にしてギャグを描くのではなく、ギャグを味付けにして歴史を描いた作品なのです。

 この姿勢は、巻末に記された、作者の「――この漫画は「忍び漫画」ではなく「忍びから見た戦国漫画」です」という言が、何よりも明確に示していると言えます。
 第1巻の解説は、織田時代史研究家の谷口克広氏なのですが、一見無謀とも見えるこの人選ですが、しかしこれほど適役はいないとも思えるのです。


 もちろん、それもこれも、四コマギャグとしての面白さあってこそですが、その点については全く問題なし。
 特に千鳥をはじめとする女性陣のキャラクターが――フィクションの要素を加える余地が大きいためかもしれませんが――実に可愛らしくも可笑しさ一杯で、時々差し挟まれるハートウォーミングな展開も相まって、安心して読むことができます。

 この第1巻で描かれるのは、信長と斎藤龍興との対立まで。まだまだ天下布武への道は遠いですが、その途上で千鳥がどんな活躍を見せてくれるのか、そして何を見るのか――また、先が楽しみな作品が増えました。


 ちなみに本作、登場人物の中に森可成や太田牛一という渋い面子がいるのが嬉しいところ。
 特に後者が漫画に出てきたのは初めて見ましたが、信長の業績を客観的に記した彼の存在は、ある意味本作の象徴なのかもしれません。


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