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2009.07.18

「目付鷹垣隼人正裏録 神君の遺品」 上田伝奇新章開幕!

 徳川綱吉直々に目付に任じられた鷹垣暁は、斬首された書院番に疑念を抱き、背後関係を調べ始める。それと期を同じくして彼の周囲には浪人や忍び、謎の僧兵たち。剣の達人の義兄・五百旗平太郎に救われながらも一歩一歩真相に近づいていく暁だが、それは徳川家の暗部を知ることだった…

 先日「勘定吟味役異聞」シリーズを完結させたばかりの上田秀人先生の待望の新シリーズ「目付 鷹垣隼人正 裏録」が開幕しました。
 その第一巻「神君の遺品」は、タイトルの通り、神君徳川家康の遺したある品を巡り、幕府の権を握らんとする幾つもの勢力が暗闘を繰り広げる中、主人公たちが孤軍奮闘を繰り広げるという、まさに初めから上田節横溢の物語です。

 本作のタイトルロールである鷹垣隼人正こと鷹垣暁は、林家の学問所で首席を取った秀才。それがためにか将軍綱吉に抜擢され、初めての役ながらいきなり目付、さらに綱吉から隼人正の名まで与えられた場面から、物語は始まります。

 目付と言えば、旗本等に対する監察をはじめとして、殿中礼法の指揮、評定所への立ち会い等々を担当した役職です。
 一見地味ではありますが、その職務は幕府の諸々の政務を対象とするものであり、つまり幕政を舞台とした様々な事件・陰謀に接してもおかしくない立場。この辺りのチョイスのうまさは、さすがと言ったところでしょう。

 更に本作では、暁を助ける存在として、彼の親友にして義兄の平太郎がいるのも面白い。文には秀でていても武の方はからっきしの暁に対し、田宮流抜刀術の達人である平太郎は武を代表する人物として、暁を襲う敵の数々を迎え撃ちます。
 この文武の二人分担体制は、現在進行中の「奥右筆秘帳」シリーズにも見られるスタイルですが、しかしこちらでは二人を親友同士と設定することで、時にさりげなく、時に熱い男と男の友情が描かれるのもまた良いのです。

 さて、その二人が挑む最初の事件は、ある書き付けを巡り、書院番が斬首、幼い子供たちが切腹に追い込まれた一件。
 その凄惨な死の数々に衝撃を受けながらも、その評定があまりに拙速であったことに疑念を抱き、密かに裏を調べ始めた暁の前に現れるのは、幕政の闇で蠢く様々な勢力…

 綱吉の後ろ盾があるとはいえ、暁が相手とするのはあまりに巨大な勢力の数々(そしてその綱吉も…隼人正の名に込められた意味には戦慄!)。
 幕府の闇を探り、時の権力を向こうに回して四面楚歌というのは、上田作品の定番ではありますが、本作はシリーズ第一巻だというのに、早くも暁包囲網は複雑を極める状態。

 第一巻だけに状況や舞台説明に紙幅を取られた面はあり、それゆえ作品の温度が少し低めに感じられる部分もなきにしもあらずですが、これから先は、そう感じる暇もなく一気呵成に物語が展開していくはず。
 上田作品ファンとして、伝奇時代小説ファンとして、この先の物語が楽しみです。


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