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2009.07.12

「佐和山物語 あやかし屋敷で婚礼を」 因縁の地に挑むカップル

 鳥居家の姫・あこは、三度も婚礼が延期となった末に、ようやく嫁ぎ先の井伊家の居城がある佐和山へ向かう。そこで初めて出会った許嫁・直継は超美形ながらも寡黙で気難しがり屋。その上、城にはあやかしが出没し、周囲のあこを見る目も何やらおかしい。果たして佐和山に潜むものとは…

 最近、面白い時代伝奇ものは児童文学や少女小説の方が多いのでは…と半ば本気で思っているのですが、本作もそんなことを信じさせてくれるに足る作品の一つ。
 一見、ありがちな歴史ファンタジー的見かけながら、しかしその舞台と登場人物のチョイスが、実に渋く、そこから展開される物語も、よくできているのです。

 何しろ、ヒロインは鳥居元忠の孫、その相手役は井伊直政の子・直継(直勝)…それそれの父祖は、戦国ものでもお馴染みではあるものの、しかし主役級の扱いとされるのはかなり珍しい人物であります。
 ましてや、井伊家幻の二代目と言うべき直継(直勝)を主役級の扱いとした作品を、寡聞にして、私は本作の他は知りません。

 そして、ここで戦国ファンであれば、主役カップルの父祖に――そして舞台となる佐和山の地に――密接に関わるある人物がいることに気付くでしょう。そう、石田三成に。

 実に本作は、鳥居家と井伊家と石田三成と、この三者の因縁を描いた物語。
 井伊直政が、石田三成亡き後の佐和山を領したという史実(ちなみに、直継の正室が鳥居元忠の孫というのも史実…というのはネタバレかしら)を踏まえつつ、平安の昔から井伊氏が背負った裏の、真の役目を設定することにより、本作では見事な時代伝奇世界が展開されているのです。

 しかし本作の優れた点は、それだけでなく、作品の本来の読者層に向けた、ガールミーツボーイの物語としても、きちんと成立している点であります。

 不思議なな因縁で結ばれ、奇怪な運命に巻き込まれつつも、あこと直継はまだ十代の若者。
 一見クールで物に動じない直継もまた、その心の内は、年相応に繊細なものを持ち、己の背負う、家と宿命の重みに喘いでいます。
 その彼と、じゃじゃ馬姫だったあこが出会うとき、何が起こるか――そこに描かれるものはある意味定番であり、ベタではあるのですが、しかし二人を取り巻き、縛るものが重く大きなものであるほど、そこで描かれるものは美しく感じられます。

 いかにもライトノベル時代劇のヒロイン的な言動のあこのキャラクターも、しかし直継への接し方など明るく健気で、しかし媚びや嫌味なく描かれていて良いのです。


 そして、思いもよらぬ因縁に巻き込まれた若きカップルの物語は、まだこれで終わったわけではありません。
 いくつかの問題を残したままで…しかし、その絆を強めた二人が、強大な敵にいかに挑むか。これは見届ける価値があると思います。


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コメント

こんばんは!!  私も佐和山よみました。それで興味をもったんで、色々調べてみたんですが、あこ(篠姫)は、正室ながら、子供を産んでいませんよね?また、私のペンネーム
の東梅院も、ウィキペディアでは唐梅院だし、弟の直孝も年齢が違いました。そこらへんは、違うとして、(文献によって変わったりするので...)やっぱり佐和山面白いです。
私は、あこ(篠姫)について知りたいのですが、なかなか載っていません。>< なにかいいサイト、 ご存知ありませんか?

投稿: 東梅院 | 2010.08.15 22:31

東梅院様:
こんばんは。

確かに、史実ではあこではなく側室が子供を産んでいるんですよね…その辺り、本作の設定的に考えるとすごく面白いですね。

しかし史実では直継はずいぶん長生きだったようで、その辺りも興味深いですね。

あこについて、それ以上調べられるサイトは、ごめんなさい僕も知りません。何か見つかったらまた書きますね

(コメントだぶりがあったので削除しておきました)

投稿: 三田主水 | 2010.08.16 00:22

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