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2009.07.14

「怪談集 花月夜綺譚」 過去という舞台に怪を見る

 夏と言えばやはり怪談の季節ですが、今回は、女性作家十人による、美しくも恐ろしい怪談集「花月夜綺譚」を取り上げましょう。

 収録作品と作者は以下の通り――
「溺死者の薔薇園」(岩井志麻子)
「一千一秒殺人事件」(恩田陸)
「一節切」(花衣沙久羅)
「左右衛門の夜」(加門七海)
「紅差し太夫」(島村洋子)
「婆娑羅」(霜島ケイ)
「ついてくる」(藤水名子)
「水神」(藤木稟)
「長屋の幽霊」(森奈津子)
「長虫」(山崎洋子)

 よくもまあこれだけの面々を…と、つくづく感心いたします。

 どの作品も、決して派手な内容ではありませんが、それだからこそ、惻々と怖さがこちらに迫ってくるようなものばかりで、まさにこれぞ「怪談」、といった印象。
 その本書をこのブログで取り上げるのは、怪談集としての中身の濃さもさることながら、いずれの作品も、古くは室町時代、新しくとも先の大戦前後を舞台とした、時代怪談集という側面を持っているからにほかなりません。

 現実とかけ離れた異世界などではなく、しかし、現在の我々からは確として隔てられた、直接触れる術のない世界…そんな「過去」という舞台は、異界と現世、死者と生者、彼岸と此岸が入り交じる怪談の世界を描くに、適したものではないかと感じる次第です。


 さて、収録された作品から個人的に印象に残ったものを、野暮を承知で三つ挙げるとすれば、「一節切」「左右衛門の夜」「婆娑羅」でしょうか。

 思春期から大人に向かう少女特有の想いが込められた人形の傍らで起きる惨劇を描き、結末で描かれるある転回も鮮やかな人形怪談「一節切」。
 幾多の女を食い物にしてきた色悪めいた男が迷い込んだ廃屋敷で体験する恐怖の一夜を、日本的な美すら感じられる文章で描いた「左右衛門の夜」。
 山中の奇怪な廃村を舞台に集った者たちの姿を通じ、人もバケモノも入り交じった室町時代の初めの猥雑な空気を浮かび上がらせる伝奇譚「婆娑羅」。


 もちろん、この他にも、いずれもバラエティに富んだ名品揃い。手にした方それぞれに、きっと琴線に触れる作品に出会うことが出来るはずです。


「怪談集 花月夜綺譚」(集英社文庫) Amazon

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