« 「水滸伝」 第13回「荒野の三兄弟」 | トップページ | 「リーンの翼」に鎮魂の姿を見る »

2009.08.14

「嵐ノ花 叢ノ歌」第1巻 エッジの効き過ぎた伝奇活劇

 満州国――半年前の鉄道事故で記憶を失った少年・シュテンは、骨董屋のケビンに拾われ暮らしていた。しかし謎めいた少女・真珠血が店に角ある神の玉璽を持ち込んだことから、神の血を受け継ぐ一族と日本の特務機関との暗闘に巻き込まれていく。

 気が付けば伝奇ファン的に見逃せない作品も増えてきた「COMICリュウ」誌に不定期に連載中の伝奇浪漫の第一巻であります。
 大日本帝国をはじめ、列強の思惑が複雑に絡み合い、まさに混沌たる状況の満州国を舞台に、古今東西のオカルト知識が投入され、超人・獣人・怪人にロボットまで飛び出す一大伝奇活劇。
 私のような、その手の作品が大好物な人間にとってはたまらない作品…ではあるのですが、物語の温度は意外なまでに低く、良くも悪くも静かな印象を受けます。

 正直なところ、ネット上での――それを鵜呑みにするつもりはもちろん毛頭ありませんが――評判は芳しからぬものがある本作。曰く難解、曰く詰め込みすぎ、曰く思わせぶり…
 私個人としては、周囲からさんざん脅かされていたため、ある程度覚悟はできていたためか、さほど難解とは思いませんでしたが、その感想も頷けるものはあります。

 神の血を受け継ぐ神農炎帝の一族、まつろわぬ者たちの集団たる嵐山機関、生命の源・大歳あるいはヒルコ、人喰いの獣人・渾沌、さらに鋼鉄の巨人・金剛蔵王――「好き者」であれば鼻血を出しそうなガジェットの数々は実に魅力的であり、一見バラバラで関連を持たぬようなそれぞれが、物語の中で有機的に繋がっていく様などは、まさに伝奇ものの醍醐味であるとは思います。
 しかし、それがエッジの効いたものであればあるほど、物語のとっつきにくさに直結し、画の力に物語が追いついていないやに感じられるのは、何とも勿体ないと感じます。
(特に予備知識として初歩的なオカルトや伝承(特に古代中国関連)の知識は持っていないと辛いかもしれません)

 個人的には、魅力的なガジェットが物語の中で十全に消化されきっていない(のに猛烈に面白い)辺り、こういう形で引き合いに出すのは本当に申し訳ないのですが、「ラストコンチネント」の頃の山田章博を彷彿とさせるものがあるのですが…


 果たしてこの先、本作がどのように展開していくか、それは全くわかりませんが、個人的には、そのエッジを失わず、突き抜けた物語を展開して――ただし、漫画としての形は失わずに――ほしいものだと思っているところです。
(尤も、狙いどころはわかるもののどうにも外れている感のある科白回しだけは…と思うのですが)


「嵐ノ花 叢ノ歌」第1巻(東冬 徳間書店リュウコミックス) Amazon
嵐ノ花 叢ノ歌 (アラシノハナ ムラクモノウタ) (1) (リュウコミックス)

|

« 「水滸伝」 第13回「荒野の三兄弟」 | トップページ | 「リーンの翼」に鎮魂の姿を見る »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/45928135

この記事へのトラックバック一覧です: 「嵐ノ花 叢ノ歌」第1巻 エッジの効き過ぎた伝奇活劇:

« 「水滸伝」 第13回「荒野の三兄弟」 | トップページ | 「リーンの翼」に鎮魂の姿を見る »