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2009.08.02

「水滸伝」 第12回「二竜山の対決」

 失敗続きの楊志は、諍いでごろつきを殺し、都を捨てる。一方、放浪の魯達は二竜山近くの村で山賊・錦毛虎に目をつけられた少女・鳳春と出会う。偶然出会った楊志と魯達は二竜山に向かうが、砦は難攻不落。が、公孫勝から授けられた策で内部に入り込み、駆けつけた林中らと共に、高求の配下となっていた錦毛虎一党を倒すのだった。魯達は梁山泊に向い、楊志は梁山泊の出城と称して二竜山に残るのだった。

 今回は、物語序盤から登場していたにも関わらず梁山泊入りしていなかった二人の好漢・魯達(魯智深)と楊志が主人公のエピソード。
 二人の二竜山穫りを中心に原典序盤の幾つかのエピソードをちりばめつつも、悪役の錦毛虎と対比することにより、それぞれのキャラクターを浮き彫りにしています。

 本作の魯達(出家した後もこの名前を使う回もあるのでややこしい)は、酒と喧嘩だけでなく、女も大好きなキャラクター。今回のゲスト・鳳春に頼られてデレデレしっぱなしというだらしなさがまたよろしい。

 一方の楊志は、魯達とはまた別の意味で人間くさいキャラクター。林中と関わって以来、失敗続きで尾羽打ち枯らし、遂に毛嫌いしていた高求を頼ることになります。
 そこですったもんだの挙げ句…というのは原作そのままですが、そんなことになっても己のプライドというものがあって…というのも、またらしい話です。

 そんな二人が偶然町で出会い(というか誤解から大喧嘩するのがまた実にだらしなくて良い。喧嘩の後、「我慢ができねえのはお前さんの方だ あれを見ろ!」でって楊志が言うから何かと思ったら、魯達がひっくり返したなけなしのお粥の鍋だったというひどいオチも最高)、挑むことになるのが二竜山の錦毛虎。

 この錦毛虎、名前は燕順の渾名から取られていますが、設定自体は原典のトウ竜というキャラクター(しかも以前に燕順が登場しているからややこしい)。さらに、鳳春の家に押し掛けて、布団に隠れた魯達にボコられるというのは原典の周通のエピソード…とややこしいのですが、それはさておき、高求に賄賂を送り、二竜山を梁山泊攻略拠点として献策し、その守備隊長に任じられるという一種の奸物であります。

 しかしここで冷静に見てみると、町を荒らし回る、女を拐かす、高求に阿ると良いところなしの錦毛虎が、実は本作の魯達と楊志の裏返し的なキャラであることに気付きます。
 いわばネガの魯達と楊志、そうなってしまったかもしれない二人…そんなキャラとして描かれているように思えるのです。

 その錦毛虎を二人が倒すというのは――それを助けるのが梁山泊の林中というのも――何とも象徴的な展開だと感じられます。
 自分のネガの部分と向き合い、これを倒すというのは、これはキャラの成長の王道ですが、魯達が梁山泊入りするのに必要な過程だったのでしょう。
(楊志は林中と扈三娘への複雑な想いから「女にかけちゃお前さんにはかなわないからな」梁山泊入りを断るのですが、これはこれで楊志らしくてOK)


 ちなみに今回、公孫勝は病の母を見舞うため梁山泊から離れるのですが、その途中で魯達と楊志に出会い、二人に策を与える(それもこっそり楊志の懐に文を入れておく)という展開が面白い。
 それだけでなく、公孫勝が梁山泊を離れることができたという事実から、魯達が梁山泊の自由さを悟る、という構成もうまいものです。


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