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2009.08.03

「無宿狼人キバ吉」第2巻 修羅の巷に最強の渡世人が吼える

 「無宿狼人キバ吉」については、第一巻を紹介して以来、そういえば第二巻はいつまで経ってもでないなあ…と思っていたのですが、実は発売されていたのに気付いたのはつい先日。
 ドラマCDとセットで、出版社のサイトでのみ購入できるという変則的――というより売る気があるのかわからない――スタイルであったとはいえ、何年も気付かなかった自分の間抜けさを、つくづく恥入った次第です。

 それはさておき、ようやく手にすることができた第二巻は、一冊丸々使っての長編エピソード「上州に地獄の風が吹くぜ!」。
 あの国定忠治をゲストに迎え、人間と人間、人間と妖怪の欲剥き出しの死闘が乾いたタッチで描かれます。

 伝説の侠客・国定忠治については、今更ここで云々するまでもありませんが、本作で描かれるのは、まだ親分になったばかりの忠治。
 忠治の名を高めたという、島村の伊三郎殺しの一件を背景として、キバ吉の物語が描かれるのですが…森野達弥先生描くところのこの忠治のキャラクターがインパクト十分なのであります。

 枯れたタッチの森野絵にしては珍しく、一目見ただけで、ギラギラとした精気が――それも、ひどく剣呑で暴力的なものが――伝わってくる忠治。
 相手が何者であろうとも、己の前に立ち塞がる者は叩き潰さずにはおかない忠治の存在感は、ある意味妖怪以上で、まぎれもなくこのエピソードの陰の主役と言うことができます。
 国定忠治という人物は、講談などで伝わる虚像と、史実から伝わる実像の乖離が大きな人物ですが、本作の忠治像は、実像のイメージに依りつつ、本作ならではの虚像を巧みに作り上げてみせた印象です。

 その忠治と、邪魂魔道・猿火甲――二つの巨大な力により、修羅の巷と化す上州で、一人孤独な戦いを続けるキバ吉の姿も、第一巻のそれよりもさらにクールに、寡黙になった印象で、忠治と好対照。史実という背景ができた分、その戦いにもどこか重みと安定感が出てきた…そんな印象もあります。

 しかしもちろん、クライマックスで展開されるのはド派手な妖怪バトル。
 いい具合に(当時の建築物との比率的に)巨大化した猿火甲を相手に、キバ吉が、そして忠治が縦横無尽に繰り広げる大決戦は、溜めに溜めたものが大爆発する任侠ものの快感にシンクロするものがあったかと思います。

 そして、人と妖怪の戦いが終わった後も、続くのは人と人との争い…
 妖怪の血を継ぎながらも、心は人間のキバ吉のつぶやきが、重く心に残ります。


 …さて、さすがにこの上、第三巻が出ているということはないでしょうから、この先のエピソードについては掲載誌を当たるほかありますまい。私も捜し物の旅に出ることとしましょう。


「無宿狼人キバ吉」第2巻(森野達弥&島本高雄 ワニブックスGum comics)


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