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2009.08.11

「醜い空」 その怪物の正体は…

 仏画を携えての旅を続ける一休と、旅芸人の刀禰。刀禰の故郷である備前のヒトカシラなる村に向かった二人は、そこで奇怪な怪物が、若い女を空から襲い、喰らう場に出くわす。女の顔を持ち、「いつまで!? いつまで!?」と鳴き声をあげるその怪物の正体は――

 お馴染み「異形コレクション」掲載、朝松健先生の室町伝奇最新作は、「伯爵の血族 紅ノ章」に掲載された「緋衣」の続編に当たる作品――といっても人物設定が共通しているのみで、内容は全く独立した作品。室町のゴーストハンター・一休宗純が、奇怪な空の怪物と対峙することとなります。

 その怪物の何たるかについては、「いつまで!? いつまで!?」というその鳴き声に依れば、妖怪ファンであれば一目瞭然。なるほど、その妖怪が「太平記」にも登場することを考えれば、いかにも室町伝奇に登場するに相応しいものと…と思った時点で、作者の思うつぼ、であります。
 空から若い女性ばかりを襲う怪物――その「正体」は、しかし、伝承に現れるものとは全く異なるもの。むしろ知識ある者ほど、この仕掛けに引っかかってしまうのは、なかなか心憎い仕掛けです。


 もっとも、その真の正体については、ある程度のところで予想はつきますし、その曰く因縁も珍しいものではないのですが、しかしそこに怪物の鳴き声が重なった時に生まれる、切なさとも哀しさともいえる空気は、さすがに作者ならではと感じるのです。

 そして、その怪物の由来を考えれば、それと対峙し、そして救う存在が、仏徒である一休というのは納得できます。
 彼が「醜い」怪物と対峙して取った手段…それは一面残酷ではありますが、しかし、その由来からすれば、やむを得ないことではあるのでしょう。
 単に妖を打ち砕くだけではなく、その心根を解き明かし、救う者――朝松一休の、一休たる所以に、本作でも触れることができました。


 さらに――なるほど、本作に登場するものが、怪獣でも妖怪でもなく、怪物であるという編者の井上雅彦氏の言葉にも深く頷けた次第です。



「醜い空」(朝松健 光文社文庫「異形コレクション 怪物團」所収) Amazon
怪物團―異形コレクション (光文社文庫)


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