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2009.08.25

「水木しげる 奇談 貸本・短編名作選 異形の者・吸血鬼」(その1)

 このブログでも何回か取り上げてきましたが、ここしばらく水木しげる先生の貸本時代などの過去作品の再刊が続いています。
 その中でもここ数ヶ月コンスタントに短編集を刊行しているのがホーム社文庫ですが、今回取り上げる「奇談 貸本・短編名作選」は、収録作のほとんど全てが時代もの。その中から、特に印象に残った作品を取り上げましょう。

「異形の者」

 越後柏崎で語られる、人の体に宿るという妖姥。その存在を一笑に付す青年僧は、妖姥が憑いていたという娘の弔いを行うことになるが、そこで恐怖の夜を過ごすことになる。

 「妖婆死棺の呪い」…の原作、ゴーゴリの「ヴィー」を明らかに原典にした作品。
(ご丁寧に、クライマックスにはヴィーそのままに、自分では瞼を持ち上げられない土の精が登場)

 しかし、海外作品を翻案した他の水木作品同様、本作も、原典をほとんど完璧に日本独特の舞台に移植し、違和感なく仕上げているのがすばらしいのです。
 それだけでなく、妖姥の正体と存在について、独自の考証を行い、それがある現実に繋がるという結末には、唸らされます。

 ちなみに本作は(正確には本作のリライトかと思いますが)、その後「ゲゲゲの鬼太郎」の一エピソードとしてアレンジされ、最新シリーズでも放映されました。作中で示された不死身性がここにも…と言いたくなってしまいます。


「聖なる輪」

 突然、頭上に正体不明の輪が現れた捨吉。ある日、捨吉の前に現れた武士は、彼に神になるための学問を教えると称するのだが。

 ちょっと寓話めいた雰囲気の冒頭部からは想像もつかないような奇想天外に過ぎる結末(ちょっとショートショート的皮肉さの)を迎える本作。

 その結末も印象的なのですが、個人的に一番インパクトがあったのが、驚愕のクライマックスに、SF映画ファンにはお馴染みのあのモンスターが登場することで…
 いやはや、間違いなくこのキャラが登場した時代漫画は本作のみでしょう。

 ちなみにこれは全く個人的な印象ですが、本書に収録された他の作品といい、以前にこのブログでも紹介した作品といい、水木漫画にはロケット登場率が比較的高い(ゼロではない、という程度ですが…)ように思います。

「吸血鬼」

 高松の某所にある地蔵に封じられたもの。それは江戸時代に高松藩を騒がせた、吸血の怪物を封印したものだった。その言い伝えを知らない少年たちは、その下を掘り返してしまう…

 吸血鬼といえば、水木作品にも幾度か登場していますが、本作の吸血鬼はその中でも、いや数ある吸血鬼ものの中でも特異なものでしょう。
 何しろ、その正体というのが、江戸時代に恨みを呑んで殺された者から生まれた赤ん坊なのですから…

 実は本作の内容、残虐な殿様に理不尽に殺された者の恨みを受け継ぎ、本来であれば無力である存在が強大な怪物になって…というもので、ジャンル的には化け猫ものの一変種、というべき内容であります(赤ん坊の親が、城のネコ係だったという点に、その辺りの名残があるのかもしれません)。

 しかし本作の恐ろしいところは、何の罪もなく城の牢に入れられたネコ係とその妻が、獄中で赤ん坊を生み、両親の血肉を食らってその赤ん坊が吸血鬼と化したという、あまりに陰惨な設定。
 オチなどは予定調和に過ぎる感もあるのですが、この部分だけでも満腹であります。


 長くなりましたので、次回に続きます。

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