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2009.08.19

「巫蠱記」 二人の道士が挑む謎

 梁山泊壊滅後、気儘に諸国を放浪する混世魔王樊瑞と神機軍師朱武は、巨大な桐の木が立つ南桐村で奇妙な邪気と聖気のぶつかり合いを感じ取る。村の保正の息子が、隣村の男に巫蠱術をかけられ、瀕死の状態にあることを知った二人は、呪いの込められた木偶を探すが…

 ねぶた大賞記念、というわけではないですが、梁山泊百八星の一・混世魔王樊瑞を主人公の一人とした「水滸伝」小説であります。

 この樊瑞は、梁山泊百八星でも数少ない道士、妖術使いでありながら、同じ道士の公孫勝の陰に隠れて今一つ目立てなかったキャラクター。
 もう一人の主人公である朱武も、古今の軍略に通じた軍師ながら、やはり正軍師の呉用にばかりスポットライトが当たり、活躍の場は少なかった印象があります。

 そんな、能力が個性的なわりには、本編でそのキャラクターが十分に描かれていたとは言い難い二人を主人公に据える当たり、作者の水滸伝ファンぶりが伝わってきて、思わずニヤリとさせられます。

 さて、その二人が挑む事件もまた、なかなかにユニークなもの。
 中国では幾度か史実の上でも登場する呪術・巫蠱を題材に、その巫蠱の標的となり、瀕死の状態に陥った男を救うために、道士としての素養を持つ二人が一肌脱ぐことになります。

 しかし、巫蠱を用いるには、標的の間近に呪いを込めた木偶を置くことが必要。それまで有徳の道士・僧侶が挑んでも発見できなかった木偶を、はたして二人に見つけることができるか…それが本作の焦点となります。

 そもそも、中国では昔から巫蠱を用いた者は極刑扱いなのですが、本作では巫蠱の証拠たる木偶が見つからない限り、犯人は罪に問われない、というのがうまいところ。
 犯人が誰か明確なものの、犯行方法や凶器が発見されないため、法で裁くことが出来ない、というのはミステリではよくあるシチュエーションですが、それをこの舞台で、この道具立てで見せてくれるとは…と感心いたします。

 もっとも梁山泊の無法者が法を云々するのも何ですが、その辺りは豪快すぎる結末で帳尻を合わせたということで…


 ちなみに本作で邪悪な巫蠱を施術した相手は、「水滸後伝」読者にはニヤリと出来る相手。この辺りの趣向も、水滸伝ファンとして大いに楽しめました。

「巫蠱記」(秋梨惟喬 「小説すばる」2008年1月号掲載)


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