「遊びをせんとや 地獄の花嫁がやってきた」 素晴らしい混沌の中で
斎院・多佳子に招かれた暁信の前に、彼にぞっこんの閻魔大王の娘・夜魅姫が再び現れた。暁信を地獄に連れて行こうとするヤミーとすごろく勝負をして圧勝した多佳子だが、収まらないヤミーは一同を地獄に引きずり込む。何とか現世に還った暁信たちだが、周囲で怪事件が起きるように…
「地獄の花嫁がやって来た」と、およそ平安らしくない(褒め言葉)シリーズタイトルとなったシリーズの第二弾は、「梁塵秘抄」の有名な一節「遊びをせんとや生まれけん 戯れせんとや生まれけん」を冠した物語。
しかしその内容は、恋の行方を賭けたギャンブルバトルからちょっと少年漫画チックな地獄巡り、かわいいわんこの登場に、愛欲ドロドロの三角関係が生んだホラー話、最後には地獄の勧善懲悪仏教説話に転がっていくという…素晴らしい混沌っぷりであります。
しかし、そんな本作の全編を貫くのは「愉しい」「面白い」「可笑しい」といった、コメディにとって必要不可欠な要素。
読者のはしくれとして、瀬川先生のお手並みについてはよく知っているつもりでしたが、しかしそれにしてもよくこんな面白いことを書けるものだ…と、つくづくと感心させられました。
まことに申し訳ないことに、主人公である暁信君自身は色々と必死なのですが、しかしコメディやギャグというものは、それだからこそ面白い。
斎院の姫と閻魔の娘、神魔両極端のヒロインに挟まれて右往左往する暁信君の姿には、大いに笑わせていただきました。
しかし主人公のように必死に恋愛している人間がいる一方で、遊びや戯れで恋愛している人間もいるのは事実。
平安貴族なんてそんなのばっかりじゃねえか、と喪男のひがみと偏見バリバリで思ったりもしますが、コワイコワイヒロインが大暴れする本作で、そんな男の風上にもおけない輩がどうなるかは言うまでもない話で…
かくして、平安貴族のダークサイド(?)を鋭く剔抉した――というのは大袈裟に過ぎますが、男としては世の理不尽にちょっぴり鉄槌が下って気分が良かった…かなあ。
とにもかくにも、暁信君の受難はまだまだ続く様子。本当に彼には申し訳ないのですが、こちらの楽しみもまだまだ続きそうです。
…ところで、馬頭鬼と牛頭鬼が出てきたところでちょっと期待した人、手を挙げて。
「遊びをせんとや 地獄の花嫁がやってきた」(瀬川貴次 集英社コバルト文庫) Amazon

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