「闇はあやなし 地獄の花嫁がやってきた」 闇も形無しの婚活騒動!?
貧乏貴族の子・暁信は、妻を求めて活動中だが失敗してばかり。ようやく対面までこぎ着けた繁子の家は、怪火が相次いでおり、さらにその場に閻魔大王の娘・夜魅姫が現れる。暁信に一目惚れしてしまった夜魅姫から逃れるために、繁子の女房・多佳子と共に、怪現象の原因を探る暁信だが…
瀬川貴次先生の平安ものと言えば、何と言っても「暗夜鬼譚」シリーズが浮かびますが、そちらがかなりシリアスな内容だったのに対し、本作は完全にコメディタッチの新シリーズであります。
主人公・暁信は絶賛婚活中の貧乏貴族の長男。
フィクションではきらびやかなイメージの平安貴族ですが、出世するためには、妻の家柄や資産が大事…というわけで、妻探しは己の人生の、いや一族の一大事というわけで、暁信も東奔西走してようやく姫と初の逢瀬、という辺りから本作は始まります。
が、ようやく二人きりになったところに乱入してきた、物の怪を連れた銀髪の童女・夜魅姫――実はリアル地獄少女で閻魔大王の娘に暁信は気にいられてしまう一方で、暁信の方も、繁子ではなく、勇敢で美しいその女房の多佳子に恋してしまって…と、三角四角いやもっと多角関係の、実に賑やかなラブコメが展開していきます。
そんな本作、人外の可愛い女の子に好かれちゃってどうしましょう、というシチュエーション自体は珍しいものではないのですが、そこに平安貴族の婚姻事情を絡めて物語として成立させているのは、やはりうまいものだな、と感心させられます。
さらに、可愛く見えても夜魅姫の本当の姿は、闇をまとった骸骨という、実に禍々しい存在として設定し、人間と妖の境界線をきっちりと描いている辺りは、妖怪好きの瀬川先生らしい拘りではないでしょうか。
さらにまた、彼女のライバル(?)多佳子の正体も、こう来たか! と思わず唸らされる設定で…いやはや、暁信君も大変です。
さて、すったもんだの騒動の挙げ句、一応事件は完結したように見えて、やっぱり…というのは、美しいお約束。
これからも暁信は夜魅姫と多佳子、聖魔二人のヒロインに挟まれて、まさに闇もあやなし(甲斐がない)な大騒動を繰り広げてくれることでしょう。
前途多難な暁信君の婚活を、生暖かく見守りたいと思います。
「闇はあやなし 地獄の花嫁がやってきた」(瀬川貴次 集英社コバルト文庫) Amazon

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