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2009.08.22

「佐和山物語 あやしの文と恋嵐」 彼女の因縁、心の傷

 迷い人という自らの立場に戸惑いつつも佐和山の直継のもとに留まったあこだが、石田三成の怨霊の不穏な動きもあって、別居することになってしまう。それでもめげずに直継の屋敷に忍び込んだあこは、直継の「帰れ」の言葉に深く傷つく。あこの幼馴染み・小一郎は、そんなあこが気になって…

 ライトノベルの体裁を取りつつ、かなり渋いキャラクター設定とユニークなドラマを見せてくれた「佐和山物語」の第二巻であります。
 目出度くシリーズ化、ということか、今回は比較的繋ぎの印象の強い内容で、あこと直継の側のドラマが大部分を占め、三成側は今後の陰謀を匂わせる程度。そういう意味では、地味なストーリー展開ではあるのですが、その分、人間ドラマの面でかなり踏み込んだ内容となっています。

 前巻冒頭で、「迷い人」として、元々自分の属していた時間から数ヶ月前の佐和山に踏み込んでしまった、鳥居家の姫君・あこ。本来いるべきでない時間にいる、存在自体がイレギュラーな彼女にとって、数少ない心の拠り所は、ぶっきらぼうながらも自分のことを理解して、そこにいることを認めてくれた井伊直継なのですが…ちょっとした行き違いから、直継に拒絶されたと思いこんだあこは、自分の心の傷を甦らせます。

 そんな彼女を見守るのは、彼女の幼馴染みであり、今は鳥居家の家老名代の小一郎。あことは子供時代からの付き合いであり、もちろん(?)イイ男、しかも直継との縁談が出る前は、あこの結婚することがほぼ決まっていたという、ある意味完璧な立ち位置の彼の登場で、ドラマは思わぬ三角関係に…

 と、恋愛ドラマに転がっていきそうでいて――少なくとも本作では――そちらにさほど転がっていかないのが本作の面白いところ。
 むしろこの一連のドラマで描かれるのは、あこ自身の出生にまつわる因縁と、それが生んだ彼女自身の心の傷であります。

 あこの祖父は、関ヶ原の戦で壮烈な死に様をみせた鳥居元忠。徳川家にあっては、一の忠臣というイメージもありますが、しかしそれなのに、いやそれだからこそ――時代の趨勢から避けられぬこととはいえ――鳥居家に与えられたある運命が、ここで初めて明かされます。

 なるほど、彼女が祖父を強く誇りに思うと同時に、どこか複雑な反応を見せるのは、そしてまた、孤独な戦いを続ける直継を支えようと強く想うのは、これがあるためであったかと納得すると同時に、思わぬところで「時代小説」としての顔を見せてくる本シリーズに、改めて感心した次第です。


 さて、主人公側のドラマが掘り下げられた一方で、着々と陰謀を進めてきた怨霊三成の傍らには、あの忠臣とあの親友が加わり、いよいよ波乱の予感。三成の陰謀に対し、あこと直継はいかに立ち向かうのか、そして本作でさらにややこしい立場にあることが示されたあこの運命は…
 なかなかもって、目の離せないシリーズであります。


 しかし、これは蛇足ですが、同じ人物を指すのに、二つの名前が並行して使われる(「直継」と「右近」、「小一郎」と「源十郎」のように)のは、やはりちょっとややこしいように感じます。この使い分けが、特に心理の綾を表す点で意味があることはわかるのですが…

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