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2009.09.20

「水滸伝」 第16回「必殺の矢」

 弓の師・李雲を梁山泊に迎えるため陳州に向かった花栄と林中。都に献上される玉を奪うために陳州を訪れていた高求は、李雲に花栄を捕らえよと命じる。李雲は拒絶するが、県城奉行の薛永に息子・李少を人質に取られてしまう。李雲の不審な態度からこれを知った林中は、偶然高求の陰謀を知った扈三娘らと合流。薛永の配下を一掃して玉を横取りした上で、李少救出に向かう。城内に閉じこめられながらも住民の助けを得た林中は、怒りに燃える高求を尻目に県城を脱出、己を恥じる李雲も花栄の説得で梁山泊入りを決意する。林中は国内を巡るため、仲間たちに一時の別れを告げるのだった。

 今回はオリジナル展開の単発回。物語の中心となるのは、久々登場の新好漢・李雲。原典では捕らわれた李逵を助けに来た弟子の笑面虎朱富に騙されて李逵を奪われ、そのまま梁山泊入り、その後は何故か土木担当というちょっと妙な扱いでしたが、本作では花栄の弓の師匠という役どころであります。
 キャラクター的には、「落ちぶれながらも誇りを捨てない武芸者」と言ったところで、息子の頭に果物を乗せて、それを射るというウィリアム・テルチックな大道芸で日銭を稼ぐ毎日でも、義を知るまさに好漢として描かれています。

 ちなみに原典で大道芸で口を糊する武芸者というと、李忠や薛永が浮かびますが、なんとその薛永が今回は似ても似つかぬ設定で悪役として登場。李雲の暮らす陳州の県城奉行で高求の配下という設定ですが、広いおでこにちょっと太り気味の顔と、見るからに中途半端な悪党オーラが漂う外見…高求が「なまじ先の見える奴は不必要」と薛永の目の前で言う場面がありましたが、つまりは先の見えない奴なのでしょう。

 さらに、薛永の腹心として童威まで登場。あまり特徴のない口ひげの男でしたが、高求の企みを知って薛永を脅した前回からのゲスト・関史文兄弟をバッサリやり、さらに李雲を脅して玉の守備隊長を射殺させようとするなど、なかなかの悪役でした。最期も、林中に何度も斬られながら前に立ち塞がるなど、なかなかのしぶとさ。刃がほとんど鉤状になった鎖鎌という得物もなかなか面白かったのですが、こちらはほとんど使わなかったのが残念でした。

 さて、今回の高求の陰謀は、帝に献上される玉を奪って私しようというもの。これはこれでとんでもない悪事ですが、その目的が、自分の私兵を手に入れるためというのはなかなかの説得力であります。
 さらにそれを見抜くのが林中というのも面白く、その前に林中が単純な待ち伏せの罠にかかるはずがないと高求が見抜くシーンも合わせると、何だかんだでお互いのことを一番理解している二人なのだなあ…と感心させられます。

 しかしもちろん相容れることなどない二人。あわや城内に閉じこめられるところを街の人々に助けられ――実に水滸伝らしく美しい展開です――脱出する林中が、悔しげに城から見下ろす高求に対して「人々は新しい世の中を望んでいる。貴様の無法強欲は必ず罰してやる!」と見事な啖呵を切るシーンは、なかなかの名場面であったと思います。

 そして名場面といえば、ラストに己の行為を悔やみ、梁山泊に加わらず旅に出ようとする李雲に対して、花栄がかつて教わった弓の心と一人だけの力の弱さを語って説得するシーンもまた見事。微妙に死亡フラグや離脱フラグが立っていた李雲を引き戻したのにはちょっと感心しました。
(花栄といえば、李雲を救うために、扈三娘と息を合わせての同時射撃のシーンが珍しくも格好良かったかな)

 さて、一度別れた扈三娘・魯達とも合流して、あっさり梁山泊に帰るかと思った林中は、再び皆と別れを連れて一人旅に…見送る扈三娘をからかう魯達がちょっと面白いのでした。

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