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2009.09.01

「もののけ草紙」第2巻 焼け野原に描く鎮魂の物語

 「夢幻紳士 逢魔篇」からのスピンオフである、不思議な力を持つ女芸人「手の目」を主人公とした短編連作シリーズの第二弾であります。今回は短編八話を収録、再び日本を舞台としての物語となりますが、その日本は…

 第一巻の終盤ですっかり美しく成長した「手の目」。今は妖しいムードの美女となった彼女が、あてどなく彷徨う先々で人外の怪異と出会って…という内容は、本当に身も蓋もない言い方をしてしまえば、「夢幻紳士」の女性版という印象はあります。
 もちろん、いつでもクールな佇まいを崩さない夢幻魔実也氏に対して、手の目の方はまだまだ娑婆っ気十分。だいぶ少女時代のがさつさは薄れたとはいえ、まだまだ感情の起伏は豊かで、怪異に対して面と向かって啖呵を切る姿は、なかなかに痛快であります。

 しかし――本書の中盤以降、舞台を日本に移してからは、物語の雰囲気は、それまでとはかなり異なったものとなります。
 なんとなれば、そこで描かれるのは、太平洋戦争終戦直後の日本。無数の人々が命を落とし、その亡骸の上に成り立つ焼け野原なのですから…
(ちなみに青年版「夢幻紳士」関連で時代背景がはっきりと描かれるのは、比較的珍しい印象があります。「帝都物語」や「黒い天使」くらいでしょうか?)

 その舞台で描かれるのは、必然的に、と言うべきか、ほぼ一貫して、手の目と死者の交流の物語となります。
 もちろん、作品のモチーフ、方向性はある程度共通していても、内容はバラエティに富んだものとなっているのはさすがの一言ですが、それ以上に感心させられたのは、上で述べたように感情豊かな手の目のキャラクターが、鎮魂の物語を描くに当たって、マッチしていることであります。

 人ならざる力を持ち、普段は皮肉な態度を見せながらも、しかし――どこまでも超然として心の底を見せない夢幻魔実也氏と異なり――やはりその根っこの部分には、人として、女としての顔を残す彼女のキャラクターは、死者の死を悼み、見送る存在として、どこかやわらかい印象を、こちらの心に残すのです。


 そんな本書で、個人的に最も印象に残ったのは、巻末に収められた「青い目をしたお人形は」。
 青い目をした少女が、焼け野原に眠る兄を起こそうとしている場面から始まるこの短編は、ネタ自体はほとんど冒頭から割れているのですが、少年の夢想と重なり合って展開する物語が、ラストの少年自らの叫びで断ち切られる結末は、まさに「悲痛」の一言であります。
(そんな中に、とんでもないゲストを出してくるのもすごい)


 この感想を書くに当たり、第一巻の感想を読み返してみると、かなり物語の趣向が変わってきた印象はありますが、作品は水物。これから手の目が歩む旅路も、きっとこちらの思いこみ通りには行きますまい。
 そんな意外な彼女の物語にこれからも出会えることを期待しつつ…

「もののけ草紙」第2巻(高橋葉介 ぶんか社コミックスホラーMシリーズ) Amazon
もののけ草紙 (弐)


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