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2009.09.04

「巷説百物語」第3巻 漫画チックさに負けない漫画版

 日高建男先生による漫画版「巷説百物語」の第三巻が発売されました。
 今回収録されているのは、「船幽霊」「塩の長司」「死神 或は七人みさき」の三話であります(「死神」は途中までの収録)。

 本作の原作は、言うまでもなく京極夏彦先生の小説で、内容の方は折り紙付き。
 しかし本作、いかにも京極作品らしく、幾重にも複雑に絡み合った物語展開と、数多く登場するキャラクターは、決して漫画化しやすいわけではありませんが、すでに三巻目ということもあって、その辺りは堂に入ったものであります。
 この巻に収録されたエピソードは、いずれもビジュアル的に印象的な場面があるのですが、それをきっちりと描いて見せてくれるのは――漫画として当然期待されているものではありますが――感心いたします。

 さて、本書に収録されたエピソードで注目すべきは、やはり「死神 或は七人みさき」でしょう。
 原作「続巷説百物語」の中心となる物語であると同時に、「巷説百物語」シリーズを通じてのクライマックスの一つであるこのエピソードは、一つの藩全体を――いや、江戸すらも――巻き込んだ巨大な祟りに、悪意の固まりとも言うべき存在に対し、又市一味が大仕掛けをもって挑む物語。
 ある意味漫画チックな物語を漫画としてどう描くか、気になっていたところではありますが、この漫画版では、漫画チックさに負けず、真っ向から「漫画」として描き上げているのに、ちょっと感心してしまいました。
(ある人物の後のエピソードに関わる設定が削られているのは気になりましたが…)

 しかし本書で残念なのは、この「死神」篇がクライマックス目前までしか収録されていないこと。
 ページ数の関係で仕方ないことではありますが、ここで放り出されるのはあまりに殺生で、思わず久し振りに原作小説を引っ張り出してしまった次第です。

 さて、原作の「巷説百物語」正続に収録されたエピソードは残すところわずかですが、その先はどうなるのか。
 この漫画版は、発表順ではなく作中の時系列順にエピソードが配列されていますが、では「後巷説百物語」中の作品が描かれることになるのか…その辺りも気になるところです。

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