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2009.09.30

「陰の剣譜 青葉城秘聞」 激突する二つの陰

 伊達藩の兵法指南役・柳生権右衛門が何者かに討たれた。その探索を命じられて白石城下に潜入した十兵衛にも、刺客の手が伸びる。一連の事件の陰に、片倉家の側室となった真田幸村の娘・阿梅とその弟・片倉沖之允の存在を感じる十兵衛だが、その裏には思わぬ秘事が隠されていた。

 真田幸村が、大坂の陣で激突した相手である伊達政宗(の重臣・片倉重綱)の下に自らの愛娘を託したというのは、武士の中の武士同士のちょっといい話であると同時に、何とも伝奇心を刺激される史実です。

 本作「陰の剣譜」は、その伝奇的史実をベースとして、仙台を舞台に柳生新陰流と真田残党が激突する長編伝奇。
 柳生十兵衛と片倉沖之允(真田大八)、相対する立場にある二人の男を主人公に、、それぞれの視点から、仙台を舞台とした意外な陰謀の全容が浮かび上がるという趣向の一編です。

 伊達政宗と伊達家と言えば、存在自体が伝奇ネタの宝庫、よくもまあこれだけ色々なことをやらかしていたものだと感心するばかりですが、本作はある意味それを集大成したような作品。
 次から次へと登場する意外な顔ぶれが、伊達家の裏の部分と結びつき、そしてやがてはある史実に結実する様は、まさに伝奇ものの醍醐味、と言えるでしょう。

 また、異形の必殺技を持つもの同士の死闘を描くのは、新宮先生の得意とするところでありますが、それは本作でも健在。
 柳生の遣い手を次々と斃す沖之允の秘剣は、アイディア(というか取り合わせ)的にはさほど珍しいものではありませんが、その描写のリアリティ、作中での使いどころのうまさの点に於いて、他の作品の追随を許さぬものがあります。


 …その一方で、作品の温度が、どうにも低いのもまた新宮作品らしいところ。

 幕府を支えるためには味方をも欺き、捨て石にすることを厭わぬ十兵衛ら柳生新陰流一門と、名将の子に生まれながらもその名を名乗れず、日陰の存在として生きざるを得ない沖之允ら真田一党と…

 いわば二つの陰の剣が激突するドラマに相応しいとも言えるその乾いた感触には、まさにその点に賛否あるかとは思いますが――特に十兵衛のキャラクターが結果的に薄くなっている点など――それでもそこが一つの味わいとして、心に残るのです。

「陰の剣譜 青葉城秘聞」(新宮正春 集英社文庫) Amazon
陰の剣譜―青葉城秘聞 (集英社文庫)

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2009.09.29

「シグルイ」第13巻 怪物の怪物たる所以

 まだまだ続く「シグルイ」、第13巻は…というかこの巻も、二龍激突の前の嵐の前の静けさと言ったところ。しかしここにきて、藤木の怪物たる所以がいよいよ見えてきた感があります。

 駿河城御前試合を控え、それぞれに暮らす藤木と伊良子。伊良子が城内でも着々と地歩を固めていく一方で、藤木は剛直すぎる言動で、月岡雪之介や笹原修三郎ら――言うまでなく原作の他の短編の主人公たちですが――から持て余し者とされる有様…

 ここで二人の生き様がくっきりと現れた感がありますが、しかしそんな中、本作の影の主人公とも言うべき駿河大納言忠長の存在が照らし出すこととなったのは、藤木の一種の異常性であります。


 武士道残酷物語として描かれる本作において、主君が――そしてそれが日本全体の主である徳川家の者であればなおさら――絶対の地位にあることは、今更言うまでもありません。

 本作で描かれた幾多の悲劇もまた、その封建社会の構造ゆえのもの。この巻でも、本作ではおそらく数少ない常識人である笹原までもが、主命の下に理不尽極まりない行いを強要される様が描かれます。

 そして伊良子もまた、得意の巧言が忠長には通じず、ほとんど僥倖に近い形で命を拾う有様…いや、あの魔人・虎眼先生ですら、権力の前にはひたすら媚びへつらうしかなかったのですから、これはむしろやむを得ないと言うべきかもしれません。

 しかし――ひたすら伊良子との再戦に向け臥薪嘗胆、心技を練る藤木の姿からは、そのような封建社会の軛を容易に超えかねないものが感じられます。
 本書の最後のエピソードに描かれた藤木の技と、それを繰り出さしめた覚悟からは、伊良子を倒し、虎眼流を再興するためには、忠長の御前であっても、異常の技を用いることをためらわぬであろう、彼の異常な精神のありようが感じられるのです。

 「生まれついての士にござる」と語った藤木が、このような境地に達してしまったのは何とも皮肉ではありますが、「城勤めは無理」などというものを遙かに超えてしまった彼が、驕児・忠長の前に出たとき、どのような態度を示すのか――これは大いに気になります。
(ニッコリへつらっちゃったりしたら、それはそれでショッキングですが)

「シグルイ」第13巻(山口貴由&南條範夫 秋田書店チャンピオンREDコミックス) Amazon
シグルイ 13 (チャンピオンREDコミックス)


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 シグルイ 第2巻
 「シグルイ」第3巻
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 「シグルイ」第5巻 その凶人の笑み
 「シグルイ」第6巻と今月の「シグルイ」 魔神遂に薨ずるも…
 「シグルイ」第七巻 在りし日の…
 「シグルイ」第八巻 剣戟の醍醐味ここにあり
 「シグルイ」第九巻 区切りの地獄絵図
 「シグルイ」第10巻 正気と狂気の行き来に
 「シグルイ」第11巻 新たなる異形の物語
 「シグルイ」第12巻 悔しいけれど面白い…

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2009.09.28

映画「カムイ外伝」 無難な忍者アクションの良し悪し

 映画「カムイ外伝」を見て参りました。言わずと知れた白土三平先生の漫画を、松山ケンイチ主演で映像化した本作、周囲の評判は芳しいものでなかったため、ある種の覚悟をして行きましたが、しかし、個人的な印象は「無難」の一言に感じました。

 本作の原作は「カムイ外伝」第二部のほぼ冒頭のエピソード、「スガルの島」。
 カムイと、天才的な能力を持つ抜け忍スガルや彼女の家族をはじめとする人々との出会いと別れを、追忍との死闘や厳しい大自然の姿を織り交ぜながら描いたエピソードであります。

 漫画版で全七話、それより先行して製作されたアニメ版で全六話と、決して短い物語ではない原作を、この映画版は手際よくまとめ、ほぼ原作に沿った内容に仕上げています。
 出演者も芸達者揃いのためか、キャラクターのイメージを大きく崩すこともなかったかと思います(個人的には、伊藤英明の不動が、原作よりも若いものの、かなりイメージ通りで驚きました)。

 もちろん(?)ツッコミ始めればきりがないわけで、例えばワイヤーアクションとCGの使い方の拙さは――これはある意味邦画の宿痾であって――予想していたとはいえどうにかならなかったものか、という印象。

 ワイヤーがかえってアクションのスピード感を殺したり、CGで描かれた風景が現実から浮き上がって見えるのであれば何の意味があるでしょう。
 個人的には、原作というと鮫の印象が大変強いだけに、その鮫がCGバリバリだったのが何とも…(あと、CG使うのであればラストの○○の腕消そうよ)

 尤も、これだけは言っておかなければならないのは、生身のアクションシーン自体はなかなかのもので、特にラスト、カムイが複数の追忍を向こうに回して文字通り体当たりの死闘を繰り広げる様は、決して綺麗な動きでないのが逆に忍びの戦いとして印象的でした。
(も一つ、これは凄すぎてCGの疑いすらあるのですが、少年時代のカムイの大立ち回りの際の動きが、尋常でなく滑らかで吃驚)

 そんな長短を総合してみると、減点法で考えれば格別、加点法で――私は基本的にこの立場なのですが――見ると、世評で言われるほどひどくないようには感じます。
 惨憺たる作品が少なくない漫画原作邦画の中では、無難な仕上がりの作品、と言うべきではないでしょうか。


 しかし――その無難というのも良し悪し。この無難さが、本作の場合には、私は残念に感じられます。
 一言で言えば、崔監督らしさが本作から伝わってこないのです。

 この「カムイ外伝」の監督が崔洋一であると知った時に感じたある種の期待感、監督がカムイを通じて描くのではないかと予感したものが、本作からは、感じられませんでした。

 あるいはその期待通りに作られた場合、無難さとは無縁の、今以上に非難囂々の作品となったかもしれませんが――さて。


関連サイト
 公式サイト

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2009.09.27

「為朝二十八騎」第1巻 原初の武士の活躍に期待

 佐野絵里子先生の新作「為朝二十八騎」の第一巻が発売されました。
 主人公は源為朝、「保元物語」等の軍記物語や、「椿説弓張月」で知られる平安時代の英雄ですが、この第一巻ではその少年時代が、瑞々しく描かれています。

 佐野絵里子先生と言えば、やはりまっさきに浮かぶのは平安ファンタジー「たまゆら童子」。
 平安時代の有名無名の人々を主人公に、様々なエピソードを描いてみせた佳品ですが、その内容もさることながら、特に印象に残ったのは、その絵巻物タッチの絵柄でした。

 本作でもその絵柄はもちろん健在。
 絵巻物の絵がそのまま動き出したような――それでいてもちろん、佐野先生ならではの優しさを感じさせる――絵の描写は、この平安時代のヒーローを描くに、これ以上のものはない、という印象であります。

 まだまだ幼さを残した為朝の様々な表情、強弓に矢をつがえて射る際の迫力、そして物語の随所に登場する馬たちの姿…いずれも、この作品世界と登場人物に全く違和感なくはまっています。

 特に、謎の敵に襲われた為朝が、これを迎え撃つ騎射シーンの迫力は見事…
 残念ながら現代での知名度はさほど高くないと言える為朝ですが、ここに最良の描き手を得た――というのも、決してオーバーではないでしょう。


 さて、題名となっている「為朝二十八騎」とは、為朝が九州から都に上った際に、彼の傍らにつき従っていた一騎当千の二十八人の武士のこと。
 まだまだ為朝と彼らの京での活躍――そして挫折――が描かれるのは先のことかとは思いますが、戦国時代とも江戸時代とも異なる、原初の武士の姿を見せてくれることを、期待しています。

 ちなみに、この第一巻では「椿説弓張月」でも活躍したあの人物(のモデル)が早くも登場するのには思わずニヤリです。

「為朝二十八騎」第1巻(佐野絵里子 エンターブレインBEAM COMIX) Amazon
為朝二十八騎 1巻 (BEAM COMIX)

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2009.09.26

「変身忍者嵐」第03話 「呪いの妖気! オニビマムシ!!」

 化身忍者・オニビマムシは、小田原城の武器弾薬を奪うため、城主の大久保能登守に催眠術で北条氏直の亡霊を見せて脅しつける。偶然オニビマムシの姿を目撃した少年・源太を助けたことで血車党の暗躍を知ったハヤテたちだが、亡霊に怯えた能登守は、武器弾薬を差し出してしまう。引き取り場所のまむし神社に駆けつけたハヤテとタツマキは、ツムジを人質に取られて苦戦しながらも、オニビマムシを倒して血車党の野望を阻むのだった。

 さて、大変な間が空きましたが「変身忍者嵐」の第03話であります。
 今回の舞台となるのは小田原城下。何だかいつもどこかの村を襲撃している印象のある血車党ですが、今回はちょっと珍しい舞台かもしれません。

 その小田原城下で繰り広げられるのは、小田原城に蓄えられた武器弾薬を巡る攻防戦。何でまた血車党が小田原城に目を付けたのかわかりませんが、その任を任せられたのは、蛇の能力を持つ化身忍者・オニビマムシ。僧衣をまとったヘビ頭の男、というデザインはシンプルといえばシンプルですが、頭部の造形の出来がなかなか良いため、僧衣とのミスマッチに強烈な異形感があって実にいい感じです。

 …もっとも、こいつの化身忍者としての実力はちょっと疑問符で、城から武器弾薬を奪うのに、わざわざ北条氏直の亡霊(と名乗る人体標本のガイコツ)を繰り出して騒ぎを大きくするのは忍者としていかがなものかと。城から抜け出すところを源太や見回りの侍に発見されまくっていましたし。

 ただ、使う術のバリエーションはかなり豊富で、忍者ヒーローものの悪役としては合格点。特に、蛇の脱皮能力を元にした空蝉の術&分身の術とも言うべき血車忍法「蛇ぬけがら」は、理屈的にはどうかと思いますが、かなり強力な技だったと思います。
 それに抗する嵐の技は、いつもの秘剣影うつしですが、刀身に反射させた光で相手の目を眩ますという卑怯くさい技の本体はさておき、その刀身にオニビマムシを映して本体を見破るという使用法には、それなりに説得力があったかと思います。

 ちなみに、今回登場してみっともなくガイコツに震え上がっていた大久保能登守ですが、小田原大久保家に能登守は存在しないため、時期的に考えれば出羽守・加賀守だった大久保忠朝がモデルなのでしょう。
 にしても、乱戦の中のの不可抗力とはいえ、台車一台分火薬を吹っ飛ばしているのですが、おとがめないのかしら…


 なお、タツマキは今回初めて嵐の正体がハヤテと知ったわけですが、むしろ「今まで知らなかったの?」感の方が大きいのがなんとも。しかし、オニビマムシに臆せず真っ正面から勝負を挑んだ姿は格好良かったのです(オニビマムシとの綱引きに負けて自分の撒いたマキビシ踏みそうになったり、骸骨丸の血車忍法「車縛り」で、だっせえミニチュアになって荷車もろとも捕られたりしましたが…)。


<今回の化身忍者>
オニビマムシ

 蛇の能力を持つ化身忍者。反対側に火を吐く蛇の頭がついた槍(配下も同じ槍を使用)を武器とする蛇面僧形の男。小田原城の武器弾薬を奪おうとしたが、嵐の秘剣影うつしで本体を見破られ、倒された。
 口から火を吐くほか、相手に悪夢を見せて従わせる「催眠夢あやつり」、自在に相手の攻撃を分身してかわし、さらにその分身を操る「蛇ぬけがら」、嗅いだものを眠らせる煙を流す「毒流し」、布状のものを上に敷いて相手のマキビシを無効化する「マキビシ渡り」、意識を失った相手を自在に操る「鬼火操り」など、多彩な血車忍法を操る。

「変身忍者嵐」第1巻(東映ビデオ DVDソフト) Amazon
変身忍者 嵐 VOL.1 [DVD]


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 「変身忍者嵐」 放映リストほか

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2009.09.25

「豪談 左甚五郎」 これぞ大工の戦い方!?

 その腕を買われて江戸城の大改修に加わった京の大工・甚五郎。そこで、秘密の部屋の担当となった甚五郎は、口封じに殺されるところを、偶然知り合った作事奉行の娘・志保に救われる。志保を連れて逃避行を続ける甚五郎の前に立ち塞がる、柳生連也斎率いる暗殺団。二刀流の浪人・タケゾウに救われた甚五郎たちだが、悲劇は間近に迫っていた…

 十年ほど前に書き下ろし刊行された、永井豪とダイナミックプロによる「豪談」シリーズの一編、左甚五郎の巻であります。
 左甚五郎と言えば、いうまでもなく伝説の名工。あまりにも伝説すぎて、その作品のみならず本人までもがファンタジーの住人のようになってしまった感のある人物で、時代ものの世界では、根来忍者の頭領だったり半分異界の者になっていたりしますが、本作の甚五郎も、これまでに書かれた作品に負けず劣らずのとんでもないキャラクターであります。

 本作の甚五郎は、少年時代に親を無礼討ちで殺され、侍嫌いとなった大工。そのため侍の権威に媚びず、ただ自分の腕をのみ頼むという、ある意味職人気質の権化のような人物。
 それが、江戸城の大改修で政敵暗殺のための落とし穴部屋(床全体が一瞬で引っ込んで落とし穴になるという…この時点で既に何かおかしいのですが)を作りあげ、口封じのために殺されかけながらも、愛する志保と共に必死の逃避行を続ける…というのが物語中盤過ぎまでのあらすじですが…

 旅の途中で、柳生嫌いの二刀遣い・タケゾウ(もちろん正体はあの人)に救われ、三人で旅を続けながらも、柳生一門の卑劣な罠の前に志保を、そして自分の片腕を喪い、絶望の淵に沈んだ甚五郎。その彼が、タケゾウの叱咤激励の下に辿り着いた、大工ならではの戦い方とは――仕掛けだらけの怪建築に敵を誘い込んで皆殺しにすることだった!(本当)

 というわけで、クライマックスは、九州の山中に築かれた甚五郎の砦を舞台にしての、柳生一門との攻防戦…というより殲滅戦。全体これカラクリという怪建築は、ちょっと国枝史郎チックですが、カラクリ仕掛けのロボット竜で暴れながら「大工の戦い方はこれや!」と叫ぶ甚五郎の姿には、嗚呼ダイナミック…と感じさせられます。


 さらにラストには既に大工の域を超越したようなピグマリオンぶりを発揮して何処かへ去っていく甚五郎――元々が半ば伝説中の人物であるのを逆手にとって、豪快に風呂敷を広げた豪先生の発想には脱帽です。


 ちなみに本作の柳生連也斎はもの凄くぞんざいな面の悪人で、本当に主人公の敵、という存在でしかないのですが、作中では明示されないものの、最後の最後にあの謎の遺言に繋がる展開があり、ちょっと目を引くところです。

「豪談 左甚五郎」(永井豪とダイナミックプロ 中央公論社) Amazon
豪談左甚五郎 (永井豪のサムライワールド (9))

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2009.09.24

「風狂活法杖」 虚無の向こうの風狂

 若き日の悲劇から刀を捨て、今は俳諧師として気儘に暮らす風来老人。弁天詣で大奥女中の行列が何者かに襲撃される場に行き合い、風狂の血を騒がせてこれを救った老人は、日本に阿片を持ち込もうとする陰謀に巻き込まれる。襲い来る強敵たちに、風来老人の無明一眼杖が唸る!

 佐江衆一先生と言えば、純文学でスタートしつつも、近年は時代小説の分野でも活躍している方ですが、その最初期の作品が本作であります。

 重い過去を背負いつつも今は俳諧師として風狂に生きる老人が、最強の無明一眼杖で、阿片党の陰謀に立ち向かう連作スタイルの本作。
 春の江ノ島から始まり、水戸や潮来、江戸の裏長屋、さらには江戸城大奥まで舞台を広げ、登場人物も清の拳法家に英国の怪軍人、風魔忍者に幻術師、千葉周作や水野忠邦までと、実に賑やかな時代エンターテイメントであります。

 正直なところ、舞台や題材、キャラクター配置的には、柴田錬三郎の影響を強く感じますし、その点では新鮮味に欠けるかもしれませんが、しかし、決定的に異なるのは、主人公のキャラクター像でしょう。

 風来老人は、元々は寺社奉行の家臣の家に生まれた武士。
 延命院事件(延命院の寺僧が大奥女中等と密通したという史実上の事件)摘発のために大奥に送り込まれた姉を、口封じのため父の命で斬らされ、直後切腹した父の介錯を務めたという凄惨な過去を背負い、紆余曲折を経て、今は裏長屋の気楽な暮らしにたどり着いたという人物であります。

 柴錬作品の主人公が重い過去や宿業を背負い、虚無の中にあって刀を振るう一方で、風来老人は同じく重い過去を、そしておそらくは虚無を経験しつつも、作中で見せるのは、風狂に遊び、活人の技として杖を操る姿のみ――

 それが年の功…というものかもしれませんが、しかし、虚無を乗り越えた先の境地として作者が風狂を想定しているのであれば、それは何とも興味深いことであります。


 エンターテイメント性が強すぎて――それはそれで私にとっては大いに歓迎すべき点ですが――深みという点では…という本作ですが、風狂という概念で柴錬的ニヒリズムの相克を描いてみせた(と感じられる)点は、注目すべきことではないかと感じます。

「風狂活法杖」(佐江衆一 徳間文庫) Amazon

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2009.09.23

10月の時代伝奇アイテム発売スケジュール

 蝉の鳴き声も去り、夜になれば耳に届くのは秋の虫の音…秋の夜長は言うまでもなく読書芸術その他諸々、というわけで、十月の時代伝奇アイテム発売スケジュールです。

 文庫時代小説としては、何よりも気になるのは、快調・上田秀人先生の新シリーズ(であろう)「斬馬衆お止め記 御盾」タイトルだけでは内容がさっぱりわかりませんが、作家買いをしても問題のない方だけに、大いに期待です。

 そしていきなりジャンルは飛びますが、少女向け小説の中で異彩を放つ「佐和山物語」の第三弾、「結びの水と誓いの儀式」は要チェック。
 も一つ少女小説では、内容同様、テンポよく刊行中の「地獄の花嫁がやってきた」シリーズの最新巻「月の船 星の林」も当然買い、です。

 そしても一つ、伝奇ものとは少しずれますが、鈴木英治先生の「手習重兵衛」の新シリーズが始まるというのは、これはニュースでしょう。


 さて、漫画の方もかなり充実。既刊シリーズでは、「義風堂々!! 直江兼続」第4巻、「大江戸ロケット」第3巻、「BRAVE10」第6巻、「カミヨミ」第11巻が気になります。

 そして復刊ものでは、白土三平の「忍者旋風」が登場。知名度はちょっと低いですが、個人的には一番好きなシリーズの開幕篇です。
 さらに断続的に刊行が進んでいる水木しげる先生の貸本漫画からは、ついにあの「妖棋死人帳」が登場! これは実にありがたいお話です。

 また、武侠ものでは、実に全19巻の漫画版「射雕英雄伝」が完結。もう一つの「射雕」、「EAGLET」も第2巻が発売されます。
 しかし水滸伝ブログ(いつの間に)的には、人気があるのかないのかわからない「AKABOSHI 異聞水滸伝」第1巻だけは、絶対に見逃せないのです。

 映像作品でも水滸伝ものの「水滸伝 英雄譜」が登場。
 水滸伝の豪傑たちの銘々伝とのことですが、そのチョイスがかなり謎…Amazonを見ると今後の予定も載っているのですが、小生以外誰が喜ぶのかわからないラインナップです。

 また、ゲームでは海外でも高い評価を得た和風ファンタジー「大神」のWii版が登場。先に海外で発売され、日本では発売されないのかとやきもきしていましたが、まずはめでたいことです。


 最後に全く関係ないお話ですが、10月だというのに目に付くのが実話怪談もの。
 加藤一の「「超」怖い話クラシック ベストセレクション 殯」 、平谷美樹(!)の「怪談倶楽部(仮)」といったところも嬉しいのですが、驚くのは平山蘆江の「蘆江怪談集」の刊行。文庫で読めるなんて…

 ちなみに「「超」怖い話」はニンテンドーDSソフトとしても登場。こちらは平山夢明作品の収録のようです。


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2009.09.22

「天変斯止嵐后晴」 あらし、室町に吹く

 激しい嵐によって難破した筑紫大領秋実の船は、とある孤島に流れ着く。その島こそは、かつて大領とその腹心の刑部景隆に国を奪われ娘と共に追放された、阿蘇左衛門藤則の島だった。習い修めた方術で嵐を起こし、大領らを島に呼び寄せた阿蘇左衛門の復讐とは…

 国立劇場小劇場で上演された文楽「天変斯止嵐后晴」(てんぺすとあらしのちはれ)を見てきました。
 題名に表れているように、シェークスピアの「テンペスト」(あらし)を原作にした、ユニークな作品であります。

 原作は、魔法修行者にして前ミラノ大公プロスペローが、空気の精霊エリアルを使役して魔法の嵐を起こし、自分の地位を追った弟とナポリ王に復讐せんとする様を描いた物語。
 本作は、その原作の物語と人物配置をほとんど残しつつも、舞台を室町時代の九州に移し替え、一種の室町伝奇として翻案しています。

 原作ならではの要素である魔法や妖精エリアルも、方術や妖精英理彦(えりひこ)として翻案され、らしく扱われているのが楽しいところ(「妖精」は、何か別の語に置き換えられなかったのかとは思いますが…)。
 英理彦の姿そのものも、天部とも童子神ともつかぬ姿でデザイン、人形ならではの身軽さで宙を舞うのは、ユニークな来歴ならではの規格外の存在感です。

 また冒頭の嵐の場面などでは、珍しい十七弦の琴を用いるなど、題材が題材だけに、思い切った演出が随所に見られ賑やかで楽しい舞台でありました。


 さて、本作で特に印象に残ったのは、復讐の鬼とも全能の支配者とも機械仕掛けの神とも見えながらも、過去の怨讐を乗り越え、未来を祝福する立場となっていた阿蘇左衛門の存在。

 それまでに見せた復讐の修法に燃える姿の凄まじさからすれば、一見ずいぶんとあっさりと気持ちを入れ替えたやに見えもしますが、
「目前に在りと思う物も、例えば砂上の高楼にて、一切空と悟るべし。人間本来無一物、眠りに始まり眠りに終わる」
という台詞を見るに、彼は一種仏教的な無常感の境地に達していたと考えるべきであって、そこはむしろ翻案で生じた面白さと感じます。


 シェークスピアということを意識しすぎて、それがこちらの期待する文楽らしさを損ねている部分も、正直なところあった舞台ですが、しかし、翻案としての、翻案ならではの味わいもあり――何よりも、あのテンペストを室町の日本に移し換えてみせたというのが嬉しく、私は私なりに楽しむことができました。

 室町シェークスピア、難しいものではあると思いますが、この一作のみで終わるのは惜しいと感じた次第です。

 しかしあのラストは、やはり生身の人間が演じてこそ意味のある演出だとは感じますが…

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2009.09.21

「猫絵十兵衛 御伽草紙」第2巻 健在、江戸のちょっと不思議でイイ話

 いま私が一押しの時代漫画の一つ、「猫絵十兵衛 御伽草紙」の、待ちに待った第二巻が発売されました。
 鼠除けの猫絵師・十兵衛と、その相棒で元猫仙人のニタが出会う江戸のちょっと不思議でイイ話は、今回も健在です。

 今日も飄々と江戸の町を行く十兵衛とニタが出会うのは、人間と猫の交流が生む様々な人間模様…いや人猫模様。
 この巻に収録された六つのエピソードは、 淡い恋模様あり、江戸の職人の心意気あり、ちょっと怖い怪談あり、けなげな子供たちの姿あり――実にバラエティに富んでいますが、共通するのは、どれも猫が絡んでいることであります。

 もちろん、掲載誌が猫漫画専門誌(あるのですよそんな素敵な雑誌が)だけに、それは当たり前といえばその通りですが、しかしそこに描かれる猫の存在が物語の中で必然性を持って、そして時代劇という特殊な舞台上で違和感なく描かれているのが、本作の魅力であり、私が本作を愛する由縁です。

 この第二巻に収められたどのエピソードも、そんな魅力あふれる作品ですが、個人的に特に気に入っているのは「観月猫」と「縹色の猫」の二篇です。

 前者は、彫り師修行中の少女が彫った欄間の猫が、月夜に抜け出して宙を舞うという、一ひねりした職人譚+幻想譚。
 騒動を収める十兵衛の計らいが何とも粋で良いのですが、「猫が飛んでるぞ」「たまにゃあ猫も空ぐれぇ飛ぶさね」という十兵衛とニタのやりとりが、ある意味本作を象徴するようでイイのです。

 そして後者は、老僧と縹色の瞳の猫の愛情溢れる交流から、十兵衛とニタ(と猫嫌いの浪人・西浦さん)を巻き込んだ一大血戦にまで展開していく、五十ページにも及ぶ大作。
 老僧を守るため、あえて猫又の本性を明かし妖に挑む縹(ちょっとツンデレ気味)と、その心意気に応え助っ人として立ち上がる十兵衛とニタの姿が――本作で出会えるとはちょっと意外なほど――男泣き度が高く、たまりません。


 愛すべきキャラクターたちに、どこか懐かしくも新鮮な物語、それを包む江戸の風物…そしてもちろん、魅力的な猫たち。
 私の大好きな作品です。

「猫絵十兵衛 御伽草紙」第2巻(永尾まる 少年画報社ねこぱんちコミックス) Amazon
猫絵十兵衛御伽草子 2巻 (ねこぱんちコミックス)


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 「猫絵十兵衛 御伽草紙」第1巻 猫と人の優しい距離感

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2009.09.20

「水滸伝」 第16回「必殺の矢」

 弓の師・李雲を梁山泊に迎えるため陳州に向かった花栄と林中。都に献上される玉を奪うために陳州を訪れていた高求は、李雲に花栄を捕らえよと命じる。李雲は拒絶するが、県城奉行の薛永に息子・李少を人質に取られてしまう。李雲の不審な態度からこれを知った林中は、偶然高求の陰謀を知った扈三娘らと合流。薛永の配下を一掃して玉を横取りした上で、李少救出に向かう。城内に閉じこめられながらも住民の助けを得た林中は、怒りに燃える高求を尻目に県城を脱出、己を恥じる李雲も花栄の説得で梁山泊入りを決意する。林中は国内を巡るため、仲間たちに一時の別れを告げるのだった。

 今回はオリジナル展開の単発回。物語の中心となるのは、久々登場の新好漢・李雲。原典では捕らわれた李逵を助けに来た弟子の笑面虎朱富に騙されて李逵を奪われ、そのまま梁山泊入り、その後は何故か土木担当というちょっと妙な扱いでしたが、本作では花栄の弓の師匠という役どころであります。
 キャラクター的には、「落ちぶれながらも誇りを捨てない武芸者」と言ったところで、息子の頭に果物を乗せて、それを射るというウィリアム・テルチックな大道芸で日銭を稼ぐ毎日でも、義を知るまさに好漢として描かれています。

 ちなみに原典で大道芸で口を糊する武芸者というと、李忠や薛永が浮かびますが、なんとその薛永が今回は似ても似つかぬ設定で悪役として登場。李雲の暮らす陳州の県城奉行で高求の配下という設定ですが、広いおでこにちょっと太り気味の顔と、見るからに中途半端な悪党オーラが漂う外見…高求が「なまじ先の見える奴は不必要」と薛永の目の前で言う場面がありましたが、つまりは先の見えない奴なのでしょう。

 さらに、薛永の腹心として童威まで登場。あまり特徴のない口ひげの男でしたが、高求の企みを知って薛永を脅した前回からのゲスト・関史文兄弟をバッサリやり、さらに李雲を脅して玉の守備隊長を射殺させようとするなど、なかなかの悪役でした。最期も、林中に何度も斬られながら前に立ち塞がるなど、なかなかのしぶとさ。刃がほとんど鉤状になった鎖鎌という得物もなかなか面白かったのですが、こちらはほとんど使わなかったのが残念でした。

 さて、今回の高求の陰謀は、帝に献上される玉を奪って私しようというもの。これはこれでとんでもない悪事ですが、その目的が、自分の私兵を手に入れるためというのはなかなかの説得力であります。
 さらにそれを見抜くのが林中というのも面白く、その前に林中が単純な待ち伏せの罠にかかるはずがないと高求が見抜くシーンも合わせると、何だかんだでお互いのことを一番理解している二人なのだなあ…と感心させられます。

 しかしもちろん相容れることなどない二人。あわや城内に閉じこめられるところを街の人々に助けられ――実に水滸伝らしく美しい展開です――脱出する林中が、悔しげに城から見下ろす高求に対して「人々は新しい世の中を望んでいる。貴様の無法強欲は必ず罰してやる!」と見事な啖呵を切るシーンは、なかなかの名場面であったと思います。

 そして名場面といえば、ラストに己の行為を悔やみ、梁山泊に加わらず旅に出ようとする李雲に対して、花栄がかつて教わった弓の心と一人だけの力の弱さを語って説得するシーンもまた見事。微妙に死亡フラグや離脱フラグが立っていた李雲を引き戻したのにはちょっと感心しました。
(花栄といえば、李雲を救うために、扈三娘と息を合わせての同時射撃のシーンが珍しくも格好良かったかな)

 さて、一度別れた扈三娘・魯達とも合流して、あっさり梁山泊に帰るかと思った林中は、再び皆と別れを連れて一人旅に…見送る扈三娘をからかう魯達がちょっと面白いのでした。

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2009.09.19

「豪談 荒木又右衛門」 隠れた剣豪ものの佳品

 約十年ほど前に、単行本書き下ろしで連続刊行された「豪談」シリーズの一冊であります。
 この豪談シリーズ、講談名作を永井豪とダイナミックプロが自由な発想で漫画化(だから「豪談」)というコンセプトで、自由過ぎて大変な内容になっている作品も多いのですが、この「荒木又右衛門」は、その中でもかなり原典に忠実な内容となっています。

 荒木又右衛門の鍵屋の辻の仇討ちは、講談のみならず歌舞伎や文楽、また様々な小説やドラマの題材となっているのでご存じな方は多いと思います。
 備前岡山藩主池田忠雄の寵童・渡辺源太夫に横恋慕した河合又五郎が、思いあまってこれを殺害し逃亡、これに激怒した池田公が、源太夫の兄・数馬に上意討ちを命じ、数馬の義兄であり柳生新陰流の達人・又右衛門がその助太刀をすることになる…というのが、おおまかなあらすじ。

 最初に述べたとおり、本作も大筋はほとんどこれに沿った流れになっており、せいぜい又五郎側の助っ人として拳銃や鎖鎌で武装した「旗本十鬼衆」なる連中が登場するくらいで、魔界も忍法も登場しない(偏見…と言えないのがこのシリーズ)のですが、しかしそれでも…いやそれだからこそ、本作は剣豪もの・仇討ちものとして大いに楽しめるのです。

 まず注目すべきは、ドラマ面で、又右衛門と並ぶもう一人の主人公として、又五郎側の助太刀となった河合甚左衛門の存在をクローズアップしている点でしょう。
 実は又右衛門と甚左衛門は剣士として互いを認め合う仲であり、莫逆の友。それが、又右衛門が数馬の義兄であり、甚左衛門が又五郎の叔父であったことから、不倶戴天の敵として殺し合わねばならないという悲劇が本作では描かれることになります。

 仇持ちとして、いつ見つかり、襲われるやもしれぬ恐怖感を抱いたまま、旅を続けねばならぬ身――それも、又五郎の側に明らかに非のあるにもかかわらず、「武士道」という金科玉条のため彼を守らなくてはならない。
 しかし生き延びるためには、その武士道から外れた十鬼衆のような者の手まで借りなくてはならない矛盾…(おお、彼らの存在にそんな意味があったとは!) そんな甚左衛門の悲しみが溢れ出すクライマックスの決闘は、胸に迫るものがあります。

 もっとも、甚左衛門側に注目したドラマというのは、本作のみの専売特許ではありません。そこで本作のみ、と言い切れるのは…石川賢先生による、まさにダイナミックなアクション描写の数々であります。

 実は本作、クレジットは「永井豪とダイナミックプロ」となっていますが、巻末のスタッフを見ると、「構成・演出」「下描き」を、永井豪先生と担当しているのが石川賢先生。この辺りはうかつなことが言えませんが、少なくとも、絵的には、荒木又右衛門回り以外はほとんどを石川先生が担当しているのではないかと思います。

 それが最もよく窺われるのは、本作に何度か登場する、又右衛門が群れなす敵の中に飛び込んで、死闘を繰り広げるシーン。あの、颶風と表すべきか、水車と表すべきか…唸りをあげるように凄まじい勢いで描き込まれた剣の軌跡は、まさしく石川賢印の剣戟ならではのもの。
 石川賢先生先生描く剣豪アクションが――伝奇的・SF的要素がほとんど全く含まれないだけに――純粋に、思う存分楽しめるという点は、これは決して見逃してはならない点であります。


 何度か述べたように、いかにもダイナミックプロらしい、石川賢らしい(一般的なイメージとしてね)要素を削ぎ落としている故に、豪談シリーズの中では地味な印象はあるのですが、しかしそれで見逃すのはあまりに惜しい剣豪ものの佳品であります。


 あと、こういうネタ的なことはあまり書きたくないのですが、長時間の格闘の末にヨレヨレになりながらも又五郎を追い詰めた数馬が「源太夫~の仇……!! ヒイイ…」と言いつつそして又五郎の口の中に刃を押し込んじゃう辺りはやっぱり賢先生。

「豪談 荒木又右衛門」(永井豪とダイナミックプロ 中央公論新社ほか) Amazon
豪談荒木又右衛門 (永井豪のサムライワールド (6))

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2009.09.18

「変身忍者嵐」 放映リストほか

 誰得な特撮時代劇ヒーロー各話レビュー、第三弾は「変身忍者嵐」。その放映リストとキャラクター紹介であります。
 放映リストから、各話レビューに飛べます。

<放映リスト>

話数 放送日 サブタイトル 登場怪人 監督 脚本
01 1972/4/7 猛襲!! 怪魚忍者毒うつぼ 毒うつぼ 内田一作 伊上勝
02 1972/4/14 怪猿忍者! マシラ現る!! マシラ 折田至 伊上勝
03 1972/4/21 呪いの妖気! オニビマムシ!! オニビマムシ 内田一作 伊上勝
04 1972/4/28 怪人! 卍カマイタチ!! 卍カマイタチ 内田一作 大川タケシ
05 1972/5/3 恐怖! ネコマンダラ!! ネコマンダラ 折田至 浪江志摩
06 1972/5/5 怪奇! 死人ふくろう!! 死人ふくろう 内田一作 伊上勝
07 1972/5/12 妖怪! トゲナマズ!! トゲナマズ 内田一作 浪江志摩
08 1972/5/19 怪人! 狂い毒蛾!! 毒蛾くノ一 山田稔 伊上勝
09 1972/6/2 まぼろし怪人! カマキリガラン!! カマキリガラン 山田稔 滝沢真里
10 1972/6/9 死をよぶ! 吸血ムカデ!! 吸血ムカデ 山田稔 伊上勝
11 1972/6/16 血どくろ谷のドクモリバチ!! ドクモリバチ 内田一作 大川タケシ
12 1972/6/23 地獄の怪人! ゲジゲジ魔!! ゲジゲジ魔 内田一作 浪江志摩
13 1972/6/30 オバケクラゲだ! 血車潜水艦だ!! オバケクラゲ 折田至 吉岡正三
14 1972/7/7 血ぐるま怪人集団! 総攻撃!! 人喰いカラス、再生化身忍者軍団 折田至 伊上勝
15 1972/7/14 血どくろ舟! ザリガニ鬼!! ザリガニ鬼 内田一作 浪江志摩
16 1972/7/21 ロボット! 飛行ダコ! 大作戦 ノミドクロ 内田一作 大川タケシ
17 1972/7/28 忍者屋敷! 怪人ドクダヌキ!! ドクダヌキ 折田至 伊上勝
18 1972/8/4 イノシシ大砲! 百万発!! イノシシブライ 折田至 浪江志摩
19 1972/8/11 恐怖の人食い! 分身怪人!! キバギツネ 内田一作 大川タケシ
20 1972/8/18 みな殺し! 忍者大決戦 カワウソ 内田一作 大川タケシ
21 1972/8/25 恐怖怪談! 吸血鬼! ドラキュラ日本上陸!! ドラキュラ、ミイラ男 折田至 伊上勝
22 1972/9/1 恐怖怪談! 透明人間対ナゾの剣士 ミイラ男 折田至 伊上勝
23 1972/9/8 恐怖怪談! 呪いの狼男は誰だ!! 狼男 内田一作 伊上勝
24 1972/9/15 恐怖怪談! フランケンの首が笑う フランケン 内田一作 伊上勝
25 1972/9/22 恐怖怪談! 魔女ゴルゴン呪いの城!! ゴルゴン 折田至 伊上勝
26 1972/9/29 死ぬか嵐! 恐怖のスフィンクス!! スフィンクス、タランチュラ 折田至 伊上勝
27 1972/10/6 妖怪! 毒ぐもタランチュラ!! スフィンクス、タランチュラ 内田一作
28 1972/10/13 殺しにやって来る! 魔女メドーサ!! メドーサ 折田至 伊上勝
29 1972/10/20 死のけむり妖怪! マーダラの恐怖!! マーダラ 折田至 浪江志摩
30 1972/10/27 魔女ザルバー! 恐怖第三の眼!! ザルバー 内田一作 伊上勝
31 1972/11/3 妖怪人形! ドーテムの呪い!! ドーテム 折田至 吉岡正三
32 1972/11/10 妖怪三十一面相!! モズマ 折田至 伊上勝
33 1972/11/17 ヒマラヤの死神!! ワーラス 折田至 高久進
34 1972/11/24 謎のにせ嵐出現!! ゴーレム、ニセ嵐、再生西洋妖怪軍団 内田一作 伊上勝
35 1972/12/1 消えた嵐? 妖怪集団が狙う!! グレムリン、ゴーレム、再生西洋妖怪軍団 内田一作 伊上勝
36 1972/12/8 耳をふさげ! 地獄の呼び声だ!! サイレン 折田至 伊上勝
37 1972/12/15 バラバラ妖怪! 死の舟がよぶ!! バラーラ 折田至 滝沢真里
38 1972/12/22 謎の剣士月ノ輪の正体!! 内田一作 伊上勝
39 1972/12/29 あゝ嵐! 死す!! 内田一作 伊上勝
40 1973/1/5 空を飛ぶ妖怪城!! インデゴ 折田至 鈴木生朗
41 1973/1/12 母のない子と嵐の母!! ジャワラ 内田一作 島田真之
42 1973/1/19 暗黒星雲を呼ぶ悪魔!! バックベアード 内田一作 高久進
43 1973/1/26 100万年妖怪のミラー地獄!! グール 内田一作 島田真之
44 1973/2/2 ゴースト・ファーザー! 宇宙大作戦!! ゴーストファーザー 折田至 滝沢真里
45 1973/2/9 白髪鬼! 恐怖のバリヤー攻撃!! 白髪鬼 折田至 島田真之
46 1973/2/16 見よ! 妖怪城の扉が開く!! クンバーナ 内田一作 高久進
47 1973/2/23 さらば嵐! 妖怪城に死す!! 内田一作 伊上勝


<登場キャラクター>(カッコ内はキャスト)
 情報は徐々に追加していきます。

ハヤテ(南城竜也)
 本作の主人公。父・谷の鬼十が編み出した秘法を悪用して日本征服を企む魔神斎と血車党の野望を阻むため、自ら志願して、父により変身忍者嵐に変身する力を得た。派手な水色の忍び装束に長髪というおよそ忍者らしからぬ姿だったが、西洋妖怪編から地味な忍者装束に変わる。大魔王サタン編では、刀に代わりサイを使用。

変身忍者嵐
 ハヤテが変身する鷹の化身忍者。「吹けよ嵐、嵐、嵐」の言葉と共に背中の刀の鍔を鳴らし、その特殊な振動によりハヤテの脳神経が異常活動を始め、体の細胞配列を変えて変身する。数々の忍術を得意とし、愛刀・速風に相手の姿を映し、光を反射させ相手のタイミングを狂わせて斬る秘剣影写しが必殺技。月の輪と合体して新生・嵐となった後は、刀をバトンに代え、ガンビームを必殺技にする。

名張のタツマキ(牧冬吉)
 公儀隠密の伊賀忍者。娘のカスミ、息子のツムジと共に血車党の動きを探っていたところにハヤテと出会い、共に血車党に立ち向かう。嵐ほどではないが様々な忍術を使いこなす優しいおじさん。西洋妖怪編の後、一旦伊賀の里に帰る。

カスミ(林寛子)
 タツマキの娘。明るくてお転婆な性格。ハヤテからもらった横笛・涼風は、吹くとハヤテの刀と共鳴して、ハヤテに急を告げることができる。西洋妖怪編に入ってからものすごい勢いでフェードアウトして消息不明に。

ツムジ(松葉寛祐)
 タツマキの息子でカスミの弟。明るく元気な子供だが人質に取られたり結構邪魔。派手な緑色の忍び装束を着ているが、やはり西洋妖怪編から地味な格好に。演技がいかにも当時の特撮番組の子役。

ハヤブサオー
 ハヤテの愛馬。ハヤテが嵐に変身すると、競走馬のような仮面姿に変身する。人間の言葉を理解し、馬並み外れた能力を発揮する。西洋妖怪編から姿を消す。

月の輪(声:市川治)
 西洋妖怪と戦う嵐の前に現れた謎の仮面の剣士。「クラーム!」の呪文とともに、様々な超能力を発揮する。西洋妖怪の弱点に詳しく、嵐に助言を与える。その正体はハヤテの双子の兄・フユテだった。

シノブ(工藤房子)
 ハヤテの生き別れの母。大魔王サタンにさらわれ、ハヤテが変身するたびに地獄の苦しみを味わう呪いをかけられた末、目を潰されて放浪する。

カゲリとツユハ(菊容子、佐伯美奈子)
 血車党の抜け忍・鬼目の源十郎の娘のくノ一姉妹。血車党の人質にされたところをハヤテに救われ、源十郎が魔神斎に殺されたこともあってか陰に陽にハヤテを助ける。

イタチ小僧(潮健児)
 街道筋を荒らすこそ泥。強欲だがお人好し。カゲリに一目惚れして、ハヤテの後を追って旅する。

血車魔神斎(声:納谷悟朗)
 血車党の首領。鉄仮面に黒い鎧、黒マントに身を包み、金属の槍と様々な忍術・妖術を武器とする。自分の片腕だった谷の鬼十が編み出した秘法を奪い取り、化身忍者軍団を生み出して日本征服に乗り出す。

骸骨丸(曽根晴美)
 血車党の上忍で魔神斎の片腕。頭蓋骨が割れて中身が飛び出したような不気味な顔の男で、不死身の体を持ち、様々な忍術を操る。化身忍者を率いて、作戦の指揮に当たる。悪魔道人来日によりリストラされ、大魔神像の足下に閉じこめられる。

悪魔道人(沼田曜一)
 西洋妖怪軍団の首領。黒いローブを身にまとった怪しい老人で、大魔神像を根城とする。魔神斎に招かれ、日本の半分をもらう約束で血車党に助力する。百地大仙人の持つ忍者大秘巻天地二巻を狙う。

大魔王サタン(天本英世)
 血車魔神斎や悪魔道人を陰で操っていた大魔王。とある山中に隠された妖怪城に潜み、城の上部から分離した空飛ぶ円盤で世界中を飛び回る。妖原子球の力で世界各地に眠る悪魔を復活させ、日本征服と嵐抹殺を目論む。

血車党下忍(大野剣友会)
 血車党の下忍。網目の覆面を被っており、覆面の下の額には血車党の印が押されている。要するに戦闘員。西洋妖怪編でも西洋妖怪の配下として登場。



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2009.09.17

「若さま同心徳川竜之助 幽霊剣士」 時代の闇に飲まれた幽霊

 ほとんど月刊で作品が刊行されている風野真知雄先生の今月の新刊は、今や代表作の一つである「若さま同心徳川竜之助」シリーズの第八巻。
 前の巻からさほど間を空かずに刊行されたのは、それだけノっているということなのでしょう。

 タイトルの「幽霊剣士」とは、江戸市中に出没し、刀も持たずに相手を斬り捨てるという謎の剣士のこと。

 人間技と思えぬその手口から、「幽霊剣士」と呼ばれるようになった怪人の狙いは葵新陰流――すわなち竜之助。
 すでに竜之助は剣を捨てているにもかかわらず、次から次へと狙われるのは理不尽というほかありませんが、その背景にあるのは、幕末という混沌の時代であります。

 竜之助が、それなりに楽しく暮らしている江戸が、表面上平和を保っている一方で、まさに修羅の巷と化していたのが当時の京都。
 その京都で一旗揚げることを夢見て、無惨に挫折した者の影、それが幽霊剣士の「正体」であります。

 日陰者とはいえ田安家の子という身分を捨て、江戸の平和を守ろうとする竜之助と、成り上がることを夢見て挫折し、京都の地獄に狂った幽霊剣士――
 これまで個人対個人の剣の決闘を中心に描かれてきた本シリーズですが、その背後には、その個人の想いを圧して蠢く時代の巨大なうねりというものが常に存在していました。
 時代の闇に飲まれた幽霊剣士との対決を描いた本作では、そのうねりが、ことに強く感じられるように思います。


 さて、その戦いが終わったかに見えたその時、現れた真の幽霊剣士。
 個人的には、「幽霊剣士」と聞いたとき、真っ先に浮かんだのはこちらの方でしたが、それはさておき、まさに幽霊としかいいようのないこの相手に、いかに竜之助は挑むのか…竜之助の悩みはまだ尽きないようです。

「若さま同心徳川竜之助 幽霊剣士」(風野真知雄 双葉文庫) Amazon
幽霊剣士 (双葉文庫 か 29-8 若さま同心徳川竜之助)


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2009.09.16

「武闘占術伝ヒイロとナナシ」 エンジンがかかる前に…

 タムラサカウエ将軍の屋敷が謎の一団に襲われ、将軍の息子チハヤのみが、親友ヒイロの犠牲で一人生き延びた。それから五年、ヒイロを名乗り、復讐のため父から伝承された奥義を磨いていた彼は、ある日、都を荒らし回る盗賊団と出会う。その中に、占術を操る不思議な少年ナナシがいた…

 「週刊少年チャンピオン」誌で短期連載された永久保貴一原作、とうじたつや画の和風ファンタジーアクションです。

 平安(といいつつ登場する都が奈良京=平城京なのはさておき)を舞台とした本作。原作がオカルト・ホラーを得意とする永久保貴一先生だけあって、武術合戦の中に占術(というか陰陽道)の理論を持ち込んだり――それゆえ副題は「武闘占術伝」――暴走した山の神を反閉で封じるシーンがあったりと、諸処に「らしい」場面があるのが目を引きます。

 また、主人公ヒイロが操る家伝の武術・アイキの描写も、己と相手の気を同調させることで、相手の体を操るというアイディアがユニークです。

 このように、色々と目を引く点はあるのですが、しかしエンジンがかかるのが間に合わなかった、というのが正直な印象。
 キャラクターが出揃い、物語の全体像が見える前に、連載が終了してしまった、という形です。
(これは元々短期連載だったのかもしれませんが、内容がそれを延長させる力に繋げられなかったのでしょう)

 ヒイロが、もう一人の主人公である占術使い・ナナシと力を合わせ、占術ロジックで父の仇を討つラストバトルは、「武闘占術伝」の名にふさわしく盛り上がったのですが…

 絵もなかなか達者だっただけに、せめて単行本もう一巻分続いて欲しかった…と、勿体なく感じた次第です。
(短期連載に冷たいチャンピオンにしては、ちゃんと単行本が出ただけでも御の字かもしれませんが…)

「武闘占術伝ヒイロとナナシ」(とうじたつや&永久保貴一 秋田書店少年チャンピオンコミックス) Amazon
武闘占術伝ヒイロとナナシ (少年チャンピオン・コミックス)

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2009.09.15

「風が如く」第4巻 クセ球のようで剛球一直線!

 石川五右衛門と仲間たちの大冒険奇譚「風が如く」も、ついに本編に入って第四巻目。かぐや姫の五つの宝物を巡る争奪戦の第一番は、仏の御石の鉢を巡っての柴田勝家との対決ですが…

 もちろんただの勝負になるわけがない本作、舞台となるのは何と鬼ヶ島! もちろん鬼が群れなして棲む鬼ヶ島に五右衛門と共に向かう新たな仲間は、桃太郎の子孫の女の子・桃太子さん…と、一歩間違えたらギャグになりそうなところを、強引豪快なパワーできっちりと魅せてくれるのは、これは米原作品ならではの楽しさでしょう。

 しかも、柴田勝家は実は鬼だった! という驚天動地の設定まで飛び出してくるからたまらない。勝家の異名が鬼柴田、というのはよく知られた話ですが、本当に勝家を鬼にしてしまったというのは、これはコロンブスの卵というか何というか…いやはや、脱帽です。

 物語の方は、仏の御石の鉢の魔力に憑かれて暴走した勝家により凶暴さを取り戻した鬼たちが人々を襲う中――ちなみにこの混乱の中で絶望した村人たちの姿が実に厭な描き方で印象に残ります――五右衛門一派が鬼ヶ島に殴り込み、仏の御石の鉢を賭けての勝家との一騎打ちという展開。

 思わぬアクシデント(というかヘタレの文字通りの転落)で奈落に落ちた宝物を、信じる仲間たちに任せ、自分は囚われの人々を救うため怪物と化した勝家に一人挑む五右衛門の姿など、実に少年漫画の王道展開ではあるのですが、そういう熱さとは無縁に見えたあの五右衛門が…! というのが何ともグッと来るのであります。

 クセ球のようでいて、剛球一直線――本作の魅力は、この巻でも健在ですし、そしてそれはこれからも変わるまいと、信じることができます。

「風が如く」第4巻(米原秀幸 秋田書店少年チャンピオンコミックス) Amazon


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2009.09.14

「鳥にしあらねば 地獄の花嫁がやってきた」 ライバル(?)登場 だけど…

 今日も今日とて暁信を地獄に連れて行こうと画策する夜魅姫。斎院の多佳子に招かれて花見をしていた暁信の元に押し掛ける夜魅姫だが、その彼女を迦楼羅王なる翼を持つ美青年が攫っていってしまう。夜魅姫を取り返すべく、迦楼羅王の居城を目指す暁信たちを待つものは?

 順調に刊行されている「地獄の花嫁がやってきた」シリーズの三巻目は、山上憶良「世間を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」の歌からサブタイトルを取った「鳥にしあらねば」。
 と言っても、世の中のままならぬことへの嘆きを詠んだ元の歌とは異なり、自在に空を舞う翼を持った迦楼羅王を相手にすることになった、(たぶん)フツーの人間の貧乏貴族である暁信の嘆きが籠もったタイトルであります。

 いつもは暁信に攻勢の一方の夜魅姫(ヤミー)ですが、今回はそのヤミーに積極攻勢をかけるライバル(?)が迦楼羅王、という展開。
 もっとも、このシリーズに登場するだけあって、迦楼羅王もまあ一種の変態。自分大好きのナルシーであると同時に、女性は誰でも美人に見えるという究極のフェミニストという難儀な人物であります。

 そんな男にヤミーをさらわれて、しかし、厄介払いが出来たなどと喜ばないのが暁信の人の良いところであり、また好もしいところ。
 (頭の中身はともかく)幼い子供であるヤミーを力づくでさらっていった迦楼羅王に対し、及ばずながら真っ向から立ち向かおうというその意気やよしで、そりゃあ多佳子姫も微デレを見せるわけです。

 しかし本作で最大のツンデレっぷりを見せるのは、今までヤミーに横恋慕しては執拗に暁信を狙っていた地獄のマッスル番長・夜叉王。テンプレ通りの台詞と共に仲間になって、斜め上の方向で大暴れしてくれたのには、大いに頭と腹を抱えさせていただきました。

 そのほかにも、魔法の呪文「帝倶摩句摩耶坤」だの大小のネタを織り交ぜて、今回も実に馬鹿馬鹿しくも気持ちの良いドタバタコメディぶりで、最後の最後まで肩の力を抜いて楽しむことができました。

 楽しい以外、特に何が残るわけではないのですが、しかしエンターテイメントにとって他に何が必要でしょうか。
 この楽しさを私は支持するところであります。

「鳥にしあらねば 地獄の花嫁がやってきた」(瀬川貴次 集英社コバルト文庫) Amazon
鳥にしあらねば―地獄の花嫁がやってきた (コバルト文庫)


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2009.09.13

「幻想綺帖」第1巻 贅沢な幻想譚・怪奇譚集

 波津彬子先生の新刊「幻想綺帖」が発売されました。波津彬子先生が、日本・中国・欧米の幻想譚・怪奇譚を漫画化するという実に贅沢な企画の一冊であります。

 収録されているのは、「ネムキ」誌と「幽」誌に掲載された以下の作品。

「山月記」(中島敦)
「嵐の夜に」(L.M.モンゴメリ「スモーキー島のハウス・パーティー」)
「藤森のおぢい」(「耳袋」より)
「雪訪い」(泉鏡花原作「第二蒟蒻本」)
「中国奇談」(「酉陽雑俎」「聊斎志異」より)
「夜半の膳」 (芥川龍之介「椒図志異」)
「開いた窓」(サキ)
「幽霊、恩を謝する事」(「耳袋」より)
「化鳥」(泉鏡花)

 ご覧の通り、和洋中取り混ぜて実に豪華なラインナップ。文豪の作品あり、実話奇譚あり、古典あり…怪談・奇談を愛する方であれば、思わず舌なめずりしたくなってしまうようなチョイスであります。

 原作が良ければ漫画も良い…と言えない場合もありますが、本書においては心配無用。波津先生一流の美麗な筆で描かれる作品の数々は――鏡花の作品など、かなり漫画化は大変だったのではないかと思いますが――原作読者でも納得できるのではないかと思います。

 しかも大いに驚かされるのは、どの作品も違和感なく原作の持ち味を活かしつつ、それでいて波津作品として自家薬籠中のものとしていることであります。
 作者の出身地も、舞台となる時代・場所も、バラエティに富んだ作品群でありながら、何故どの作品も、波津先生の絵柄が、描写がこれほどしっくりくるのか――

 波津先生のこれまでの作品が、古今東西様々な舞台で描かれてきたことを考えれば、これはある意味不思議ではないのかも知れませんが、しかしこうして一冊に集められて見ると、その凄さ素晴らしさが、今更ながらに感じられます。


 この第一巻は短編集でしたが、近日刊行の第二巻は、岡本綺堂の「玉藻の前」が収録されるとのこと――あの恐ろしくも切ない物語を波津先生がどのように漫画化してみせるのか、こちらも今から胸躍ります。

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2009.09.12

「Dの魔王」第1巻 漫画ならではの個性、もう一枚のジョーカー

 つい先日、続編「ダブル・ジョーカー」が刊行され、書店でも正続併せて平積みされている柳広司「ジョーカー・ゲーム」。
 その霜月かよ子による漫画版「Dの魔王」の第一巻も、ほぼ同時期に刊行されました。

 原作「ジョーカー・ゲーム」は、日中戦争開戦前後の時期を舞台に、伝説的なスパイであり、「魔王」の異名を持つ結城中佐によって設立されたスパイ養成学校「D機関」のスパイたちの活動を描いた短編集。
 「D機関」のモデルである陸軍中野学校は、これまでも――フィクションを含めて――様々な場で描かれていますが、本作は結城中佐という特異な人物を背景設定の中心に置くことにより、これまでの作品とは一風変わった味わいを生み出しています。

 さて、この漫画版第一巻に収録されているのは、「ジョーカー・ゲーム」と「幽霊」の二篇。
 参謀部の青年将校の視点から、D機関と「魔王」の特異な姿と、誰が味方かもわからぬ過酷なスパイの活動のあり方が描かれるシリーズ第一作「ジョーカー・ゲーム」。
 テロの首謀者を疑われる英国総領事の懐に潜り込んだD機関の青年の活動を描く「幽霊」。
 どちらも、原作の面白さは忠実に再現しつつも、漫画としての個性も示した、なかなかよくできたコミカライズと感じます。

 特に「ジョーカー・ゲーム」は、原作では錯綜していた時系列を整理して描くことにより、本編の主人公・佐久間の心情の変化を――連載漫画として――より明確にと描き出すことに成功していると感じます。
 また、佐久間の熱血ぶりの強調は、漫画的ではあるのですが、D機関の面々との温度差を際だたせるとともに、その相克を越えた結末に、一種の爽快さを与えていると言って良いのではないでしょうか。
(もっとも、この辺りはいささかドラマチックすぎる、センチメンタルすぎると感じる原作ファンの方もいるかと思いますが…)

 もう一編の「幽霊」の方は、原作のほぼ忠実な漫画化ではありますが、ラスト数ページの描写は、漫画ならではの、漫画でなくてはできないものであり、気に入っています。

 原作が、心理戦の要素も強いミステリだけに(上で書きそびれましたが、「ジョーカー・ゲーム」のトリックは、あの時代でならではの、あの時代でなければ成立しない、まさに「時代ミステリ」であります)、連載漫画化というのはなかなか難しいのではないかとも感じますが、本書はその点をクリアしつつも、漫画版ならではの個性を見せたもう一枚のジョーカーと読んで差し支えない佳品かと思います。

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2009.09.11

「室町少年草子 獅子と暗躍の皇子」 少年たちは時代を切り開く

 南北朝の動乱静まらぬ頃、能楽師・観阿弥の子・鬼夜叉は、若き足利義満の御前での舞台を成功させ、賛辞を得る。が、その後町に出かけた鬼夜叉は、館を抜け出してきた義満と出会い、彼が刺客に狙われていることを知る。刺客の一味に囚われた鬼夜叉は、その中に意外な人物を見る…

 知ってみれば面白いのに、江戸時代に比べればなかなか興味を持たれにくい室町時代。そんなわけで時代エンターテイメント、それもティーンズ向けの作品で室町時代が扱われることは非常に珍しいのですが、それだけにそうした作品には普通のもの以上に気合いが入っていると感じます。

 本作もそんな作品一つ。少年時代の足利義満と鬼夜叉(世阿弥)の二人を出会いを幕開けに、南北朝の動乱収まらぬ室町初期の人間群像を描きあげた佳品です。

 本作のタイトルは「室町少年草子」ですが、まさにその通り、物語の中心となるのは、室町に生きる少年たち。
 生まれながらの将軍として国を背負うこととなった義満。幼いながら芸の神に愛された天才・鬼夜叉。さらに、南朝方に親を殺され、佐々木道誉に育てられた義満の影武者・柊。そしてもう一人…

 彼らはいずれも、室町初期、南北朝という時代に生まれ、その時代の枠の中で生きる者たち。
 そんな、自分が生まれる前からの因縁に縛られ、苦しめられながらも、しかし自分の力で何とかそれを切り開いていこうとする――その試みは、時として自分自身を苦しめはするのですが、しかし、それでも彼らの意志は、何とも言えぬ美しいものとして、感じられるのです。

 しかし、その意志を持つのは、少年たちのみではありません。
 彼らの父の世代の人々もまた――自分たちの代で争いを終えることができなかった、という悔恨の念を背負いながら、自分たちに続く者たちへ新たな世を残すために、己の力を尽くすのです。
(ちなみに、その中に楠木正儀が含まれているのが何とも「わかっている」印象)

 本作は、そんな時代を切り開こうとする人々の悲しみと喜び、絶望と希望を瑞々しく描き出した作品。
 ライトノベルの文法を借りて描きつつも、その時代でなければ描けない――それでいて現代にも通じる――人々の想いを描き出した本作は、まさに時代小説と呼んで良いと思います。
(主人公たちの喋りがあまりにも現代っ子なのは、ライトノベル語と言うべきものでしょう)

 この国が栄えるために生を受けた義満と、民の救いのために生まれた鬼夜叉と――二人を中心とした人々の物語を、これからも読んでみたいと、心から思います。

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室町少年草子―獅子と暗躍の皇子 (コバルト文庫)

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2009.09.10

「水滸伝」 第15回「二人の魯達」

 梁山泊で疫病が流行し、王倫の祟りとの噂が出る。魯達は、町で出会った僧・如海に法要を行わせるが、如海が魯達の母の命が危ないと言い出し、二人は故郷の光州に向かう。が、実は如海は高求と結んだ光州の大庄屋・関史文の回し者だった。光州で魯達は自分の偽者と出会いその家に行くが、そこには魯達の母が人質にされていた。駆けつけた林中らの助けで偽者を討ち、その場を逃げ延びた魯達と母だが、母は病で息を引き取ってしまうのだった。魯達は悲しみを堪えて旅立ち、林中は諸国を巡る旅に出る。

 祝家荘編が一段落して、今回は魯達を主人公とした単発回。原典の李逵(鉄牛)の里帰りエピソードをベースに、幾つかの要素を付け加えて高求対梁山泊のストーリーにアレンジしています(原典通り鉄牛を主役にしなかったのは、以前の回で鉄牛の母が柴進の屋敷で暮らしていると描いてしまったからでしょうか)。

 このドラマ版では、ある意味原典以上に稚気溢れる暴れん坊として描かれている感のある魯達ですが、今回もそれは健在。酒を飲んで暴れたり、自分の噂話に喜んだり(光州の居酒屋で、森の石松の「寿司食いねえ」の水滸伝版をやってくれるのが愉快)、偽者の言葉にころっと騙されたり…冷静に見ると失敗ばかりなのですが、それでも何となく許せてしまうのは、演じる長門勇のとぼけたキャラクターによるところが大きいでしょう。

 しかしそれが一転、悲劇になってしまうのが終盤の展開。偽魯達に人質にされて刃を突きつけられても、魯達を逃すためあえて彼が本物の魯達でないと言い張る母と、その真意がわからずオロオロとするばかりの魯達の姿が、何とも切ないのです。
 偽者の登場や母親の死は、上で述べた原典の鉄牛の里帰りにもあったイベントですが、そちらがかなり殺伐としたものであったのに比べ(横光版では母親の死に悲しむ鉄牛の姿が非常に印象的だったのですが)、なかなか良いアレンジだな、と感じます。

 そして今回の裏の主役が、政商・関史文(カク史文のもじりかしら?)の回し者として暗躍し、魯達を罠にはめた如海でしょう。原典で楊雄の妻と密通した裴如海のアレンジだと思いますが(属する寺の名前も同じ報恩寺)、親切ごかして魯達を窮地に陥れたり、密かに梁山泊の絵図面を作ったりと、原典とはまた別の意味でのイヤらしい振る舞いが印象に残りました。
 演じるは小林昭二ですが、前二回の黒部進といい、ちょっと複雑…
(ちなみに偽魯達の妻は金連という名前でしたが、これは潘金蓮というより原典で魯達に助けられた歌唄いの娘の金翠蓮から取ったような気がします)(訂正)

 さて、一件落着したと思ったら、突然ラストで、陽のあたらぬ所に光をあてるため、と称して林中は花栄と共に大宋国を巡る旅に出ることに。
 かなりいきなりな気もしますが、林中が梁山泊にずっといると話に膨らみを持たせにくいから…ということかもしれません。


 ちなみに今回、梁山泊で新たに病にかかった者のトウ飛の名が(字も同じ)。名前だけの登場でしたが、いつの間にか仲間入りしていたんですねえ…他にもこういう連中いそうですね。

「水滸伝」DVD-BOX(VAP DVDソフト) Amazon
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2009.09.09

「蛇衆」 一気呵成の戦国アクション、だけれども…

 金で雇われればどこの家にも付き、戦場で鬼神の如き活躍を見せる六人の男女「蛇衆」。宿敵・我妻家との決戦に備える鷲尾家に雇われた蛇衆だが、そのリーダー・朽縄が、鷲尾家当主・嶬嶄の嫡子であるという噂が流れる。噂に翻弄される蛇衆たちは、鷲尾家の内紛に巻き込まれるが…

 小説すばる新人賞というと、なかなかイキのいいエンターテイメント小説を送り出している印象がありますが、本作はその受賞作。
 戦国時代の九州を舞台に、己の腕に命を賭ける荒喰(傭兵)集団の死闘を描くアクション時代小説であります。

 本作のタイトルとして冠され、そして物語の主人公である蛇衆は、どの家にも属さず、戦場での働きを稼業とする荒喰。
 無手の格闘術の達人・朽縄、全身に仕込んだ無数の刃を飛ばす抜忍・無明次、巨大な六角金棒を獲物とする巨漢の鬼戒坊、人の背丈ほどの長大な太刀を操る紅一点・夕鈴、短弓での遠距離狙撃を得意とする孫兵衛、そして両端に刃を持つ槍を旋風の振り回す十郎太…
 全員がワンマンアーミーとも言うべき戦闘力の持ち主でありながらも、それぞれに過去を背負い、戦う他に生きる術が、行くべき場所がない男女の集まり、それが蛇衆であります。

 が、その一騎当千の蛇衆のリーダー格である朽縄が、戦国大名・鷲尾家の嫡子であるという噂が流れ、その噂を裏付けるように朽縄は蛇衆を抜け、侍として鷲尾家に仕官したことから、彼らの運命は、物語は、大きく動き始めることになります。
 そして鷲尾家の後継争いに巻き込まれた朽縄は、最も信頼できる手勢として、蛇衆を雇うのですが…

 ここからの展開は、まさに一気呵成、の一言。こちらの予想を一気にひっくり返すような後半の衝撃から、ラストに至るまでの死闘に次ぐ死闘の連続は、一読巻を置く能わず、の語がまさにぴったりとくる内容で、大いに楽しませていただきました。


 ――が、ストーリー面では、意外などんでん返しもあり、確かに楽しめたのですが、キャラクター面ではまだまだ…という感があります。
 あえて厳しい言い方をさせていただければ、キャラクターが、個性的でいるようでいて類型的と言いましょうか…記号としてはしっかりと描かれているのですが、一人の人間としては薄い、という印象が強い。

 終盤の蛇衆の死闘も、このキャラクターであればこう動くだろう、こう死ぬだろうというのがほとんど容易に予想できる(朽縄はちょっと予想できませんでしたが…)という、ある意味予定調和的部分が強く感じられるため、彼らの壮烈な暴れぶりに心動かされつつも、どこか冷めた目で見てしまったことは否めません。
 せめて、蛇衆の面々の、朽縄に寄せる想いがもう少し濃く描かれていれば…とは思うのですが、これはプロットの関係で難しいのかな。

 また、プロとしてのドライさが――プロとしての仲間意識の在り方が――もっと描き込まれていれば、終盤の死地に向かう際の悲壮感、男泣き度も上がったと思うのですが…と、このくらいにしておきましょう。
 日頃、あまりマイナス面は見ない私も気になるくらいですから、本作に対する賛否がかなり分かれているのも、確かに納得がいきます。


 しかし――物語展開の面白さと、そして新人とは到底思えないほどしっかりしたアクション描写は、確かに作者の優れた実力の表れと、これははっきりと言うことができます。
(尤も、アクションシーンのモチーフが元ネタ知っている人間には一目瞭然なのは、これはいかがなものかと思いますが…)

 珍しく厳しい感想も書きましたが、これは本作に優れた面も多かったゆえのこと。次回作でどれだけ成長した姿を見せてくれるか…作者の今後を楽しみにします。

「蛇衆」(矢野隆 集英社) Amazon
蛇衆

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2009.09.08

「白獅子仮面」 第13話「輝け! 白獅子の星」

 火焔大魔王は、これまで倒された妖怪たちを復活させ、江戸中で暴れ回らせる。大岡邸を襲撃した妖怪軍団を迎え撃つ兵馬だが、深手を負い、越前を連れ去られてしまう。兵馬は最後の力で白獅子仮面に変身、火焔大魔王の本拠地に乗り込み、越前を救出する。一騎打ちの果てに白獅子仮面と火焔大魔王は相討ちとなり、皆は夜空を見上げて白獅子仮面と兵馬を想うのだった。

 ついに最終回の「白獅子仮面」。昔の特撮とはいえ、ずいぶん急展開ではあります。
 もっとも内容的には、最終回らしくというべきか、狼仮面・カラカサ小僧・一ツ目・コウモリ男・河童の五大妖怪が、再生妖怪軍団として登場。
 冒頭の江戸襲撃シーンは過去回のバンクなのですが、編集がなかなかうまいため、かなりの迫力があります。

 さらに、これは新撮の兵馬らとの対決シーンでは、カラカサが地面を転がって兵馬の足を掬ったり、河童が舟で逃げた田所たちを水中から襲撃したりと、なかなからしい活躍があったのが嬉しいところです(特に河童は、主役回の時よりも河童らしい活躍だったのでは…)

 まあ結局お話的にはいつもの大岡越前抹殺計画になるのですが、越前も覚悟の白装束で妖怪軍団を迎え撃つ!…と思わせておいて、仕掛けた火薬に火を付けて一網打尽…と思わせておいて、一度死んで甦ったので二度とは死なないというヒドイ理由で妖怪軍団は健在、という二転三転する展開。
 さらにそこからの兵馬・越前・縫vs妖怪軍団の戦いは、ある意味今回のハイライトで、複数対複数で入り乱れての決戦は、なかなかの見応えであります。

 しかし健闘空しく兵馬は敗れ、越前はとらわれの身に…しかし、わざわざ本拠地に連行したおかげで、白獅子仮面に突撃されるという不始末。
 もっとも、これは、本拠地知らないはずなのにいきなり突っ込んでくる白獅子仮面が反則なのでしょう(越前の存在を察知してきたのかな)。

 そして白獅子仮面は、まさにちぎっては投げという感じで次々と妖怪軍団を本拠地の血の池地獄に叩き込んで、あっと言う間に粉砕。。
(この時、コウモリ男の剣を素手で受け止めてギリギリと押し返す描写が格好良いのです。無表情な白獅子仮面ならではの名シーン?)
 残るは火焔大魔王のみ、最後の一騎打ちは、岩をも砕く怪光線を食らいはしたものの、しっかり一太刀浴びせて白獅子仮面の完勝! と思いきや、二人揃って地の底に落ち、そこで爆発…えええっ!?

 普通だったら、大魔王を封じるために己の身を挺して、というところですが、映像を見るとどう考えても大魔王に巻き添えを食らわされたという印象で――かなりしょんぼりな結末です。

 さらにラストシーンでは、夜空を見上げて兵馬を偲ぶ縫・田所&一平に対し、越前が「兵馬はお前たちの心の中に生きている」などと言い出して――バカバカ、越前のバカ、完全に死亡フラグを立てるな!
 そして夜空に兵馬の顔(…の前に白獅子仮面の不機嫌なツラ)というベタ過ぎる演出で、ああ、本当に死んじゃったんだなあ…と空しい想いを抱えつつ、白獅子仮面完結であります。


<今回の妖怪>
火焔大魔王

 江戸を悪の世界にするため、闇に隠れて暗躍する怪人。数々の神通力を持ち、白獅子仮面との対決では風を起こした。武器は切っ先から岩をも砕く光線を出す(というより先についた鏡で反射した光を破壊光線に変えている?)剣
 大岡越前を追ってきた白獅子仮面と本拠地で対決して敗北、白獅子仮面と共に爆発に消える。

再生妖怪軍団
 火焔大魔王が再生させた狼仮面・カラカサ小僧・一ツ目・コウモリ男・河童。大魔王の命により江戸中を襲撃し、大岡越前を本拠地に攫った。
 一度死んだ身のため二度と死なないと自称するが、白獅子仮面に本拠地の血の池地獄に叩き込まれた(カラカサ小僧のみ、ミサイルとなったのをかわされて自爆)。


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2009.09.07

「八百万」 駆け出し神様の捕物帖

 神田の町角の稲荷社の神様として、お供の夏葉・秋色・お咲と共にやってきた春門は、人間の姿で町に顔を出して早々、商家の次男坊殺し騒動に巻き込まれてしまう。なりゆきから首を突っ込んだ春門は、事件の真相を探り始めるが…

 webコミック「FlexComix フレア」に隔月連載中の本作「八百万」。「しゃばけ」の畠中恵先生が、以前「ミステリーズ!」誌に二篇発表した未単行本化作品を漫画化したものです。

 スタイル的には時代推理ものではありますが、やはり畠中作品だけあって、主人公とその周辺は常人ではなく、主人公の豊川春門は新米のお稲荷様(豊川、ですものね)、お供の三人は遣わしめのお狐さんというのが最大の特徴。
 しかも春門は新米だけあって人間界のしきたりになれておらず、神様としての自覚もいまいち。そのたびに夏葉の鉄拳制裁を食らうのですが、いずれにせよ、ちょっと抜けた主人公としっかり者のお供、というスタイルはある意味パターンですが、しかしやはりうまい組み合わせと感じます。

 さて、事件の方は、さほど複雑な内容ではないのですが、証言者が現れるたびに二転三転する状況の中で、次々と人の心の中の黒々とした部分が露わになっていくというのは、なかなか巧みな構成。
 ユーモラスなムードの一方で、人の世の苦い部分もきっちりと描かれているのは、やはり畠中作品と感じます。

 しかし、本作ならではの味が出ているのは、事件の最後の証言者の、その悪意が露呈した後の、春門の言葉でしょう。
 ある意味反則ではありますが、彼ならではの、彼にしか言えない言葉は、強く印象に残ります。


 さて、最初の事件で春門がみたものは、人間の弱さ、醜さでありました。駆け出しの神様である彼にとって、それは楽しからざる人間との出会いだったわけですが、その印象がこれから変わっていくのか…

 現在展開中の第二の事件では、人間に恋して出奔した保食神(ちなみに作中でこれに思い切り「ほしょくしん」とルビを振っているのはいかがなものか…)を探すこととなった春門。
 この事件の中で、春門の人間観が変わることになるのか、ちょっと気になるところではあります。


「八百万」(みもり&畠中恵 「FlexComix フレア」掲載)

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2009.09.06

「まんがで読破 水滸伝」 怪作・問題作水滸伝!?

 イースト・プレスから刊行されている文庫サイズの「まんがで読破」シリーズの一冊。果たしてあの長大な原作を一冊にまとめられるのか? と思いきや、これがまた色々な意味で水滸伝ファンにはたまらん一冊となっています。

 当然一冊で原作を語ろうとしている以上、かなりのアレンジはされているのですが、本書は主人公を林冲として、全体を林冲受難、晁蓋の生辰綱強奪、宋江受難、そして決戦と、大きく四つに分けて構成しています。

 うち、前半は比較的原典に近い形ですが、
宋江の受難は、原典で宋江が梁山泊入りするまでに味わった苦難を全てひとまとめにしたようなアレンジ展開(宋江と花栄と戴宗と李逵が全て同じ土地の人間であるとか)で、なかなかユニークなアレンジがなされています。

 もっとも、ビジュアル的には
・日焼けサロンに通っていそうなダンディ宋江
・昔のインディアンのようなカタコト李逵(常に白目)
・ちょっと有り得ないくらいのドジッ子花栄(一人称僕)
・割と忍者っぽい戴宗
などなど、なかなかどころではなくユニークなのですが――

 しかし、真に驚くべきは決戦の内容。○○が武力クーデターで皇帝や高キュウを牢に入れて宋国を掌握、梁山泊を配下に引き入れて遼国と対決しようという陰謀を巡らせるのですから…しかも何故か道術を操って林冲をも打ち破る無敵っぷり。
 この○○の中に入る人名は敢えて伏せますが、水滸伝ファンであれば誰もがひっくり返るキャラクター。
 私もこれまでずいぶん色々な「水滸伝」を読んできましたが、○○がラスボスというのはちょっと記憶にありません…(強いて言えば「水滸伝 男たちの挽歌」がありますが、あれば一挿話の映画化だからなあ)

 いや、これ、水滸伝ファンであればあるほど、予想できない展開かと思います。(もしかして本書の原作は水滸伝は水滸伝でも「幻想水滸伝II」なのでは…)


 と、ネタっぽく書いてしまいましたが、悪役が完全に少年漫画的頭の悪い喋りなのを除けば、なかなかストーリーやキャラクターのアレンジ、まとめ方は面白く、良くできている部分もあるのは間違いのない話(「水滸伝」リライトでは無視されがちな関勝を出してくるだけでも偉い)。
 色々なバージョンの水滸伝を並べてニヤニヤしているような水滸伝ファンにとっては猛烈に面白い一冊です。


 ただ、最大の問題は、これが入門者向けと思われるシリーズの一冊であるということ。初めて触れた「水滸伝」がこれになる方がいたら、それはそれでまずいというか楽しいというか…
 このシリーズ、惹句を見ると「本シリーズでは、近代文学の名作・怪作・問題作を中心にその作品の真髄を捉え、徹底的に漫画化していきます。」とあるのですが本作自体が怪作・問題作になってしまった…というのはさすがに失礼かしら。


 ちなみにこのシリーズ、「ドグラ・マグラ」や「葉隠」もあるようで…うう、怖いもの見たさで気になります。

「まんがで読破 水滸伝」(バラエティ・アートワークス イーストプレス) Amazon
水滸伝 (まんがで読破)

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2009.09.05

「柳生烈堂 無刀取り」 神の剣対人間の剣

 鬼才と呼ばれながらも柳生家から放逐された石舟斎の孫・源之丞を訪ねて遠州に向かった烈堂の元にもたらされた急報。各地で柳生新陰流の高弟が謎の白衣の剣士に襲撃され、一刀の下に斬られる事件が続発しているというのだ。剣士は大胆にも江戸の柳生屋敷を襲撃、烈堂はこれに挑むが、「神の剣」の前に敗れ去ってしまう…

 まただいぶ間が空いてしまいましたが、久々の火坂先生の過去作品紹介。今回は、これまでシリーズ四作を紹介してきた柳生烈堂シリーズの最終巻「柳生烈堂 無刀取り」(旧題「柳生烈堂 開祖・石舟斎を凌いだ無刀の剣」)であります。

 これまで幾多の戦いを繰り返し、名実ともに柳生最強、いや日本最強の剣士となったかと思われた烈堂…その前に現れたのは、「神の剣」を操る白衣の剣士・大中臣真人。
 柳生新陰流の剣士ばかりを狙い、その死体の上に、死体の上には赤錆色の砂を盛るという謎めいた行動を取る真人の正体は、というのが、本作の趣向の一つであります。

 そしてさらなる趣向は、その「神の剣」の前に一敗地に塗れた烈堂の復活劇です。
 これまでどのような強敵と対峙しても恐れることなかった烈堂の心の中に初めて生まれた恐怖…現実の敵と、己の心中の敵に、いかに烈堂が立ち向かうか――ある意味剣豪小説としては普遍的なテーマではありますが、本作で描かれるのは、これまで本シリーズで描かれてきた烈堂の生き様を知っていれば、なるほどとうなづけるもの。
 超俗の精神から生まれた神の剣と、俗塵にまみれて磨かれた人間の剣――その対決の結末は、そのまま、烈堂の烈堂である由縁として印象に残ります。

 また、本作では烈堂と同じ「はぐれ柳生」として、柳生家の家系から抹消されたという柳生源之丞(柳生五郎右衛門の子という設定にニヤリ)が登場。彼との対比もまた、興味深い点ではあります。


 とはいえ、基本的には良くできたエンターテイメント以上でも以下でもないレベル。タイトルとなっている「無刀の剣」も、ちょっと驚くくらいベタではあります。

 それでもやっぱり読み始めたら最後まで一気に読まされてしまう内容ではありますし、シリーズ読者にとっては、それまでシリーズに登場したキャラクターも顔を見せてくれるのも嬉しいところ。
 時代小説に高尚なものを求める向きにはあまり進めませんが、まずはシリーズ完結編として、最後まで楽しめる内容であったことは間違いありません。

「柳生烈堂 無刀取り」(火坂雅志 祥伝社文庫) Amazon
柳生烈堂 無刀取り (祥伝社文庫)


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2009.09.04

「巷説百物語」第3巻 漫画チックさに負けない漫画版

 日高建男先生による漫画版「巷説百物語」の第三巻が発売されました。
 今回収録されているのは、「船幽霊」「塩の長司」「死神 或は七人みさき」の三話であります(「死神」は途中までの収録)。

 本作の原作は、言うまでもなく京極夏彦先生の小説で、内容の方は折り紙付き。
 しかし本作、いかにも京極作品らしく、幾重にも複雑に絡み合った物語展開と、数多く登場するキャラクターは、決して漫画化しやすいわけではありませんが、すでに三巻目ということもあって、その辺りは堂に入ったものであります。
 この巻に収録されたエピソードは、いずれもビジュアル的に印象的な場面があるのですが、それをきっちりと描いて見せてくれるのは――漫画として当然期待されているものではありますが――感心いたします。

 さて、本書に収録されたエピソードで注目すべきは、やはり「死神 或は七人みさき」でしょう。
 原作「続巷説百物語」の中心となる物語であると同時に、「巷説百物語」シリーズを通じてのクライマックスの一つであるこのエピソードは、一つの藩全体を――いや、江戸すらも――巻き込んだ巨大な祟りに、悪意の固まりとも言うべき存在に対し、又市一味が大仕掛けをもって挑む物語。
 ある意味漫画チックな物語を漫画としてどう描くか、気になっていたところではありますが、この漫画版では、漫画チックさに負けず、真っ向から「漫画」として描き上げているのに、ちょっと感心してしまいました。
(ある人物の後のエピソードに関わる設定が削られているのは気になりましたが…)

 しかし本書で残念なのは、この「死神」篇がクライマックス目前までしか収録されていないこと。
 ページ数の関係で仕方ないことではありますが、ここで放り出されるのはあまりに殺生で、思わず久し振りに原作小説を引っ張り出してしまった次第です。

 さて、原作の「巷説百物語」正続に収録されたエピソードは残すところわずかですが、その先はどうなるのか。
 この漫画版は、発表順ではなく作中の時系列順にエピソードが配列されていますが、では「後巷説百物語」中の作品が描かれることになるのか…その辺りも気になるところです。

「巷説百物語」第3巻(日高建男&京極夏彦 リイド社SPコミックス) Amazon


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2009.09.03

「鏡花百物語集 文豪怪談傑作選特別編」 古き良き大正の怪談会

 非常にユニークな試みであるちくま文庫の「文豪怪談傑作選」の中でもさらにユニークなのが、このブログでも以前に紹介した「百物語怪談会」でした。
 文豪たちが寄り集って実話怪談に興じる様を描いたその好著の続編・姉妹編と言うべきが、この「鏡花百物語集」です。

 本書の中心となっているのは、泉鏡花を中心として開催された以下の怪談会であります(カッコ内は怪談会の模様を描いたドキュメント等の題名)。
・大正三年にごく内輪で行われた怪談会(「怪談精霊祭」)
・大正八年に向島百花園で開催された百数十人規模の怪談会(「向島の怪談会」)
・大正十二年に井の頭でやはりかなりの規模で行われた怪談会(「怪談聞書」)
・大正十三年に名だたる文豪たちが集まった怪談会(「怪談会」)
・昭和三年に行われたやはり文豪・文化人による怪談会(「幽霊と怪談の座談会」)

 ごらんの通り、本書は大正から昭和初期にかけて開催された怪談会に関連するドキュメント・小説等を収録したものであり、明治の怪談会を題材とした「百物語怪談会」にまさに次ぐものと言えるでしょう。

 個人的にまず嬉しかったのは、これらの会で語られる怪談の質が、総じて高めであることであります。
 「百物語怪談会」の感想に書きましたが――もちろんこれは甚だしく野暮な感想ですが――あちらの怪談会では類話が多く、内容という点ではそれほど楽しめるものではなかった一方で、本書に収録された怪談は、現代の怪談ファンにとっても珍しいもの、初見のものも多く、ストレートに怪談集として楽しむことができました。
(ちなみに、偶然か意図してのものか、同じ内容の怪談が、別の怪談会で、別の人間が語ったものとして取り上げられているのが、実話怪談ファンとしてはなかなか興味深く感じた次第です)

 と、頭の悪い感想だけでは何なのでもう少し気取ったことを書けば、何よりも興味深いのは、実話怪談から怪異小説へ、物語が昇華されていく様が、本書に収録されていることです。
 「怪談精霊祭」、そしてそれとは別の場で行われた恋愛座談会(?)の「恋物語」にて語られた物語――同じ内容が、片や怪談(奇談)、片や恋愛懺悔として語られるのもユニークですが、そのエピソードが、鏡花の手により「浮舟」という小説に結実していくというのが、怪談を超えて物語全般の伝播・誕生過程として実に興味深いとともに、鏡花の創作の何たるかにも触れることができた思いであります。
 これはまさに、編集の妙というべきでありましょう。
(ちなみに鏡花の小説としては、他に「露萩」を収録。こちらは井の頭の怪談会をモデルとした作品ですが、全編にそこはかとない艶めかしさと忌まわしさが流れているのが面白い)


 それにしても――「百物語怪談会」の際にも感じましたが、同好の士の集まりとはいえ、怪談会がこれだけのメンバー、これだけの人数で開催されるというのは、怪談というものが当時の社会で一定の地位を持っていたということであり、まことにうらやましい限り。
 現代と当時とで何が異なるのか…怪談を楽しみつつ、古き良き時代に想いを馳せるのも一興かと思います。


 ちなみに…本書で一番驚かされたのは、芥川龍之介がドッペルゲンガー奇譚にコメントしている箇所であります。事実は小説より奇なりと言うべきか――

「鏡花百物語集 文豪怪談傑作選特別編」(東雅夫 編 ちくま文庫) Amazon
鏡花百物語集 (ちくま文庫 ふ 36-11 文豪怪談傑作選 特別篇)


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2009.09.02

「水滸伝」放映リストほか

 丁度切りのいいところですので、テレビドラマ版「水滸伝」の放映リストとキャラクター紹介をここで。
 放映リストから、各話レビューに飛べます。

<放映リスト>

各回 放映日 サブタイトル  監督  脚本 
0173/10/02大宋国の流星舛田利雄高岩肇・舛田利雄
0273/10/09 蒼州の熱風 舛田利雄 高岩肇・舛田利雄・宮川一郎
03 73/10/16 熱砂の決斗 高橋繁男 宮川一郎
04 73/10/23 九紋竜の激怒 高橋繁男 宮川一郎
05 73/10/30 野盗の叫び 舛田利雄 池上金男・舛田利雄
06 73/11/06 梁山泊の夜明け 舛田利雄 池上金男・舛田利雄
07 73/11/13 小旋風と黒旋風 中川信夫 宮川一郎・中川信夫
08 73/11/20 青州の妖精 中川信夫 宮川一郎・中川信夫
09 73/11/27 宋江、危機一髪 小澤啓一 池上金男
10 73/12/04 梁山泊軍、江州に躍る 小澤啓一 池上金男
11 73/12/11 さすらいの勇者 西河克己 宮川一郎
12 73/12/18 二竜山の対決 西河克己 宮川一郎
13 73/12/25 荒野の三兄弟 降旗康男 池上金男
14 74/01/01 決戦! 祝家荘 降旗康男 池上金男
15 74/01/08 二人の魯達 富本壮吉 宮川一郎
16 74/01/15 必殺の矢 富本壮吉 宮川一郎
17 74/01/22 林中、宿敵に挑む 降旗康男 池上金男
18 74/01/29 風雲・高唐州! 降旗康男 池上金男
19 74/02/05 帰らざる将軍 村野鐵太郎 宮川一郎・村野鐵太郎
20 74/02/12 親子砲の最後 村野鐵太郎 宮川一郎・村野鐵太郎
21 74/02/19 巨星、荒野に墜つ 小沢啓一 舛田利雄
22 74/02/26 壮絶! 救出大作戦 小沢啓一 舛田利雄
23 74/03/05 策略に散る歌姫の恋 西河克己 宮川一郎
24 74/03/12 北京の麒麟児 小俣堯 池上金男
25 74/03/19 山東に立つ最後の猛将 山崎大助 池上金男
26 74/03/26 野望、砂漠に果つ 山崎大助 池上金男


<登場キャラクター>(カッコ内はキャスト)

林中(中村敦夫)
 本作の主人公。武勇に優れ、義を重んじ正義漢の強い好漢。元・近衛軍の将校だった、因縁のある高求が近衛軍総司令官となったことから無実の罪を着せられ、妻の死など幾多の苦難を経て梁山泊にたどり着く。そこで幾多の仲間を得て、大宋国に平和を取り戻すため、「梁山泊の背骨」として高求の陰謀に敢然と立ち向かう。

扈三娘(土田早苗)
 本作のヒロイン。見目麗しい姿ながら、二刀を自在に操る女丈夫。高求への人身御供として献上されてきたところを林冲に救われて以来、彼を慕って追いかけ、紆余曲折を経て梁山泊に入る。扈家荘の主の娘であり、燕麗という妹がいる。

武松(ハナ肇)
 虎柄の衣装を身につけた暴れ者で林冲の弟分。林冲を慕って梁山泊に押しかける。原典での魯智深や李逵の役回りを演じるが、原典の描写からからたぶん一番かけ離れたキャラクター。

宋江(大林丈史)
 元・都の刑部の頭。公明正大で人情に厚い人物で、その才は高求にも評価されるほどだった。林中たちを幾度となく救うが、高求の罠に嵌ってお尋ね者となり、放浪の末に梁山泊に加わる。たぶん原典から一番美化されたキャラクター。

魯智深(魯達)(長門勇)
 酒と喧嘩をこよなく愛する破戒僧。元は蒼州の牢役人だったが、悪党を殺してしまい、僧になって諸国を放浪する。十万貫強奪に手を貸すなどした後、梁山泊に入る。

史進(あおい輝彦)
 背中に竜の入れ墨をいれた血気盛んな青年。流刑途中の林中から武術を伝授される。お尋ね者の魯智深を匿ったのが元で自分もお尋ね者になり、放浪の末に梁山泊に入る。

楊志(佐藤允)
 半面青痣の不敵な男。反骨心が強く、その腕を高く評価されながら、高求に睨まれて地方に飛ばされていた。林中捕縛の命を受けて四日四晩に渡る死闘を繰り広げた。扈三娘に想いを寄せている。

戴宋(黒沢年男)
 一日五百里を走る技を持つ、人呼んで「韋駄天の戴宋」。初めから梁山泊に所属しており、林中を梁山泊に引き入れるため登場した。その後もその技を活かして活躍する。後に燕麗と恋仲になるが…

晁蓋(山形勲)
 元・東渓村の名主。七人の仲間を集めて不義の財十万貫を強奪し、事が露見した後は梁山泊に逃れる。そこで二代目の首領に推され、以後、梁山泊を支える。東渓村を占拠した曽家との戦いで久々に登場するも、毒矢を受けて死亡。

公孫勝(寺田農)
 元・寺子屋の師匠で、軍学と道術に優れる。晁蓋の十万貫強奪に手を貸し、共に梁山泊に入って軍師となる。原典の呉学人の役割も兼ねた人物。。

阮小二(品川隆二)/阮小五(常田富士男)/阮小七(渡辺篤史)
 公孫勝から誘われて十万貫強奪に加わった漁師の三兄弟。常に陽気で騒々しいが腕は立ち、水の上だけでなく陸の上でも大活躍する。

花栄(原田大二郎)
 弓を得意とする好漢で、宋江の旧友。清風鎮の長官だったが、宋江を匿ったことが元でお尋ね者となり、旅芸人の一座と放浪した末に梁山泊に入る。妹は黄信の妻となっている。

高求(佐藤慶)
 大宋国を私せんと企む大悪人。元々はごろつきだったが、トントン拍子に出世して近衛軍総司令に就く。が、その地位に飽きたらず、さらに上の地位を狙う。恨みのある林中を陥れて追放するが、彼が梁山泊の中心人物となったことから、己の宿敵と見なして幾度となく陰謀を仕掛ける。物語冒頭で百八星を野に放った。

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2009.09.01

「もののけ草紙」第2巻 焼け野原に描く鎮魂の物語

 「夢幻紳士 逢魔篇」からのスピンオフである、不思議な力を持つ女芸人「手の目」を主人公とした短編連作シリーズの第二弾であります。今回は短編八話を収録、再び日本を舞台としての物語となりますが、その日本は…

 第一巻の終盤ですっかり美しく成長した「手の目」。今は妖しいムードの美女となった彼女が、あてどなく彷徨う先々で人外の怪異と出会って…という内容は、本当に身も蓋もない言い方をしてしまえば、「夢幻紳士」の女性版という印象はあります。
 もちろん、いつでもクールな佇まいを崩さない夢幻魔実也氏に対して、手の目の方はまだまだ娑婆っ気十分。だいぶ少女時代のがさつさは薄れたとはいえ、まだまだ感情の起伏は豊かで、怪異に対して面と向かって啖呵を切る姿は、なかなかに痛快であります。

 しかし――本書の中盤以降、舞台を日本に移してからは、物語の雰囲気は、それまでとはかなり異なったものとなります。
 なんとなれば、そこで描かれるのは、太平洋戦争終戦直後の日本。無数の人々が命を落とし、その亡骸の上に成り立つ焼け野原なのですから…
(ちなみに青年版「夢幻紳士」関連で時代背景がはっきりと描かれるのは、比較的珍しい印象があります。「帝都物語」や「黒い天使」くらいでしょうか?)

 その舞台で描かれるのは、必然的に、と言うべきか、ほぼ一貫して、手の目と死者の交流の物語となります。
 もちろん、作品のモチーフ、方向性はある程度共通していても、内容はバラエティに富んだものとなっているのはさすがの一言ですが、それ以上に感心させられたのは、上で述べたように感情豊かな手の目のキャラクターが、鎮魂の物語を描くに当たって、マッチしていることであります。

 人ならざる力を持ち、普段は皮肉な態度を見せながらも、しかし――どこまでも超然として心の底を見せない夢幻魔実也氏と異なり――やはりその根っこの部分には、人として、女としての顔を残す彼女のキャラクターは、死者の死を悼み、見送る存在として、どこかやわらかい印象を、こちらの心に残すのです。


 そんな本書で、個人的に最も印象に残ったのは、巻末に収められた「青い目をしたお人形は」。
 青い目をした少女が、焼け野原に眠る兄を起こそうとしている場面から始まるこの短編は、ネタ自体はほとんど冒頭から割れているのですが、少年の夢想と重なり合って展開する物語が、ラストの少年自らの叫びで断ち切られる結末は、まさに「悲痛」の一言であります。
(そんな中に、とんでもないゲストを出してくるのもすごい)


 この感想を書くに当たり、第一巻の感想を読み返してみると、かなり物語の趣向が変わってきた印象はありますが、作品は水物。これから手の目が歩む旅路も、きっとこちらの思いこみ通りには行きますまい。
 そんな意外な彼女の物語にこれからも出会えることを期待しつつ…

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もののけ草紙 (弐)


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