「まんがで読破 水滸伝」 怪作・問題作水滸伝!?
イースト・プレスから刊行されている文庫サイズの「まんがで読破」シリーズの一冊。果たしてあの長大な原作を一冊にまとめられるのか? と思いきや、これがまた色々な意味で水滸伝ファンにはたまらん一冊となっています。
当然一冊で原作を語ろうとしている以上、かなりのアレンジはされているのですが、本書は主人公を林冲として、全体を林冲受難、晁蓋の生辰綱強奪、宋江受難、そして決戦と、大きく四つに分けて構成しています。
うち、前半は比較的原典に近い形ですが、
宋江の受難は、原典で宋江が梁山泊入りするまでに味わった苦難を全てひとまとめにしたようなアレンジ展開(宋江と花栄と戴宗と李逵が全て同じ土地の人間であるとか)で、なかなかユニークなアレンジがなされています。
もっとも、ビジュアル的には
・日焼けサロンに通っていそうなダンディ宋江
・昔のインディアンのようなカタコト李逵(常に白目)
・ちょっと有り得ないくらいのドジッ子花栄(一人称僕)
・割と忍者っぽい戴宗
などなど、なかなかどころではなくユニークなのですが――
しかし、真に驚くべきは決戦の内容。○○が武力クーデターで皇帝や高キュウを牢に入れて宋国を掌握、梁山泊を配下に引き入れて遼国と対決しようという陰謀を巡らせるのですから…しかも何故か道術を操って林冲をも打ち破る無敵っぷり。
この○○の中に入る人名は敢えて伏せますが、水滸伝ファンであれば誰もがひっくり返るキャラクター。
私もこれまでずいぶん色々な「水滸伝」を読んできましたが、○○がラスボスというのはちょっと記憶にありません…(強いて言えば「水滸伝 男たちの挽歌」がありますが、あれば一挿話の映画化だからなあ)
いや、これ、水滸伝ファンであればあるほど、予想できない展開かと思います。(もしかして本書の原作は水滸伝は水滸伝でも「幻想水滸伝II」なのでは…)
と、ネタっぽく書いてしまいましたが、悪役が完全に少年漫画的頭の悪い喋りなのを除けば、なかなかストーリーやキャラクターのアレンジ、まとめ方は面白く、良くできている部分もあるのは間違いのない話(「水滸伝」リライトでは無視されがちな関勝を出してくるだけでも偉い)。
色々なバージョンの水滸伝を並べてニヤニヤしているような水滸伝ファンにとっては猛烈に面白い一冊です。
ただ、最大の問題は、これが入門者向けと思われるシリーズの一冊であるということ。初めて触れた「水滸伝」がこれになる方がいたら、それはそれでまずいというか楽しいというか…
このシリーズ、惹句を見ると「本シリーズでは、近代文学の名作・怪作・問題作を中心にその作品の真髄を捉え、徹底的に漫画化していきます。」とあるのですが本作自体が怪作・問題作になってしまった…というのはさすがに失礼かしら。
ちなみにこのシリーズ、「ドグラ・マグラ」や「葉隠」もあるようで…うう、怖いもの見たさで気になります。
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