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2009.09.05

「柳生烈堂 無刀取り」 神の剣対人間の剣

 鬼才と呼ばれながらも柳生家から放逐された石舟斎の孫・源之丞を訪ねて遠州に向かった烈堂の元にもたらされた急報。各地で柳生新陰流の高弟が謎の白衣の剣士に襲撃され、一刀の下に斬られる事件が続発しているというのだ。剣士は大胆にも江戸の柳生屋敷を襲撃、烈堂はこれに挑むが、「神の剣」の前に敗れ去ってしまう…

 まただいぶ間が空いてしまいましたが、久々の火坂先生の過去作品紹介。今回は、これまでシリーズ四作を紹介してきた柳生烈堂シリーズの最終巻「柳生烈堂 無刀取り」(旧題「柳生烈堂 開祖・石舟斎を凌いだ無刀の剣」)であります。

 これまで幾多の戦いを繰り返し、名実ともに柳生最強、いや日本最強の剣士となったかと思われた烈堂…その前に現れたのは、「神の剣」を操る白衣の剣士・大中臣真人。
 柳生新陰流の剣士ばかりを狙い、その死体の上に、死体の上には赤錆色の砂を盛るという謎めいた行動を取る真人の正体は、というのが、本作の趣向の一つであります。

 そしてさらなる趣向は、その「神の剣」の前に一敗地に塗れた烈堂の復活劇です。
 これまでどのような強敵と対峙しても恐れることなかった烈堂の心の中に初めて生まれた恐怖…現実の敵と、己の心中の敵に、いかに烈堂が立ち向かうか――ある意味剣豪小説としては普遍的なテーマではありますが、本作で描かれるのは、これまで本シリーズで描かれてきた烈堂の生き様を知っていれば、なるほどとうなづけるもの。
 超俗の精神から生まれた神の剣と、俗塵にまみれて磨かれた人間の剣――その対決の結末は、そのまま、烈堂の烈堂である由縁として印象に残ります。

 また、本作では烈堂と同じ「はぐれ柳生」として、柳生家の家系から抹消されたという柳生源之丞(柳生五郎右衛門の子という設定にニヤリ)が登場。彼との対比もまた、興味深い点ではあります。


 とはいえ、基本的には良くできたエンターテイメント以上でも以下でもないレベル。タイトルとなっている「無刀の剣」も、ちょっと驚くくらいベタではあります。

 それでもやっぱり読み始めたら最後まで一気に読まされてしまう内容ではありますし、シリーズ読者にとっては、それまでシリーズに登場したキャラクターも顔を見せてくれるのも嬉しいところ。
 時代小説に高尚なものを求める向きにはあまり進めませんが、まずはシリーズ完結編として、最後まで楽しめる内容であったことは間違いありません。

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