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2009.10.26

「アイゼンファウスト 天保忍者伝」第3巻 暴走の中の再構築

 確かに面白いんだけど素直に面白いというのはちょっとためらわれる、というか何か妙に評判になってしまっていいのかしら…な「アイゼンファウスト 天保忍者伝」の第三巻が発売されました。

 第三巻に収録されているのは、江戸の裏社会を支配する死之介・お志摩夫婦編の後半と、鳥居様の前任・矢部駿河守編の導入部。
 江戸南町奉行・鳥居耀蔵の命を受け「正義」の遂行者として暗躍する箒天四郎と、鳥居に反発し「悪」の守護者を自認する塵ノ辻空也が、江戸の闇で激突する…という基本骨格は原作通りですが、どうしてこうなった、と踊り出したくなるようなアレンジぶりは相変わらずであります。

 主にエロ方面での暴走は、作者と編集の悪ノリもあって、もはや何の漫画を読んでいるのかわからない状態に。あまりに暴走し過ぎて、読んでいるこちらが本筋のことを忘れそうになるのは全く困ったものです(っていうかそれはこっちが悪い)。

 しかし本当に困ってしまうのは、そこまで滅茶苦茶をやりつつも――第二巻までと同様――原作、というより山風作品的テイストを描くときはきっちり描き出していることであります。

 原作の主題ともいえる、男女の間の関係をもって人間の持つ「正義」と「悪」を皮肉たっぷりに炙り出すという視点は、健在であり――それどころか、その男女の描写が、より狂騒的に描かれるからこそ一層、際だって感じられるのです。

 また、死之介のエピソードの結末は、実は原作とは全く異なるものなのですが、しかしこれはこれで山風的にもアリかな、と感じさせる上に、漫画としてみれば絶対こちらの方が面白い(天四郎に怒りを爆発させる死之介の哀しい侠っぷりたるや…!)

 耀蔵の娘・お兆の描写についても、こういう描写もあるか、と感心した次第です。


 単なる原作無視の暴走でなく、暴走の中で押さえるべきところは押さえて、忍法帖の中でも屈指の地味な作品だった原作を再構築してみせた、ある意味非常にタチの悪い本作。
 エロ方面の暴走は個人的には全く評価できない、したくないのですが、作品全体で見ると、くやしい…! でも…評価しちゃう(ry な本作の行方が、やっぱり今後も気になってしまうのでありました。


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