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2009.10.11

「週刊マンガ日本史」創刊号「卑弥呼」 日本人物史のグランドプロローグ

 第一報をネットで見て以来、注目していた朝日新聞出版の「週刊マンガ日本史」の刊行が開始されました。日本の歴史を50人の人物から、46人の漫画家の手で描こうという、子供向けの学習書ながら、大いに気になるシリーズであります。

 その創刊号は、藤原カムイによる「卑弥呼」。藤原カムイで卑弥呼というか邪馬台国といったら、これァもう古代史アクション漫画の大作「雷火」が思い浮かぶわけですが、そんな本当にダメな時代漫画オタ的な視点は抜きにして、一体どのように卑弥呼を漫画化するかは、大いに気になっていました。

 というのもこの「週刊マンガ日本史」のメインとなる漫画パートは、オールカラー28ページ(ちなみに第2号以降は24ページ)。その限られた紙幅でどれだけのことを描けるのか? というのが一つ。
 そしてもう一つ、そもそもさしたる記録が残っていない卑弥呼を、如何に漫画にするのか? というのがあったのですが、これがなるほど、と言いたくなるような構成でした。

 確かに本筋自体はさしたることはない――卑弥呼とその弟が、予言の力と武の力で古代日本を治めていく様が描かれていくのですが、その背景で幾度となくリフレインされていくのは、卑弥呼が悠久の時間の流れを、この先も続く未来の歴史を感じ取る、という描写。
 それは漫画のラスト、卑弥呼の弟が、彼女の力で未来を垣間見る場面でビジュアライズされるのですが――その未来(言うまでもなく読者にとっては過去であり現在ですが)とそこに生きる人々こそは、これからこのシリーズで描かれていくものであります。

 つまり、この創刊号の漫画で描かれたのは、卑弥呼の姿であるとともに、これから描かれていく「歴史」の存在の宣言。いわば、このシリーズのグランドプロローグなのです。

 卑弥呼が備えていたという鬼道の力の存在、彼女自身のエピソードの少なさ、そして創刊号という位置づけ…これを巧みに結びつけたところに、大いに感心した次第です。

 と、ある意味脇道ばかり見てしまいましたが、歴史の入門書――歴史への興味を喚起する意味でも――としても、オールカラーで掲載された史料・資料や解説記事も豊富でなかなか面白い。
 三十年近く前、「まんが日本の歴史」で日本史に興味を抱いて以来こんなになっちゃった身の気持ちとして、これを機に日本史に興味を持つ方が一人でも増えてくれれば…と心から思います。


 と、最後にまた脇道にそれますが、このシリーズでは全号9名ずつ、全部で450枚の藤原カムイ画の日本史人物カードが付くのもちょっと気になるところ。
 特に今回はほとんど全く肖像画も残っていない人物たちを如何にビジュアライズするのか、というか、そもそもどのようなチョイスになるのか? という楽しみもあったのですが…止利仏師がイラスト化されたのって初めてじゃないかしらん。

 あ、壱与がカードになってた!


関連サイト
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結局まぼろし?の邪馬台国はどこだったのですか? [続きを読む]

受信: 2009.10.19 18:53

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