「夕ばえ作戦」第2巻 原作精神健在なり
名作ジュヴナイル「夕ばえ作戦」の漫画版第二巻が発売されました。原作に多くのアレンジを加えた漫画版ですが、いよいよ物語が盛り上がってきたこの巻を見ると、原作の精神は健在のように感じられます。
突然慶長八年にタイムスリップしてしまった高校生・茂と明夫。風魔忍者が幕府の代官所を襲撃するのに巻き込まれた二人は、成り行きから幕府側の忍者の味方をすることになったものの、同じくタイムスリップしてしまった担任の高尾先生が風魔に捕らわれて…というところまでが第一巻。
続く本書では、前半で高尾先生奪還作戦が、後半では、思わぬ展開から現代に戻ってきた茂と風魔の少女忍者・風祭陽子の姿が描かれれます。
原作の魅力は読者と変わらぬ現代の学生が、未来(現代)のテクノロジーと知恵と勇気で、戦国時代の忍者と渡り合うところにまずあるかと思いますが、第一巻でもいくらか描かれたその要素は、この巻でよりはっきりと描かれます。
数の上では絶対的に勝る相手に茂たちが挑む際に助けになるのが、我々の身近にある、しかし慶長年間にあっては脅威のテクノロジーであろうアイテムの数々。
携帯電話のライトを合図の狼煙代わりに、防犯ブザーを音爆弾(?)代わりに、風魔忍者たちを攪乱して突入する茂たちの姿は、そのアイテムの存在が我々には当たり前であればあるほど、実に痛快です。
もちろん、小手先のアイテムに頼るだけでなく、力と力のぶつかり合いでも、現代っ子は負けていません。茂が習い覚えた古武道の棒術で、風魔でも腕利きであろう風祭陽子と互角に渡り合うアクションシーンの迫力は、この巻のクライマックスの一つでしょう。
原作で個人的に最高の説得力を持っていた、「戦国時代より栄養のあるものを食っている分、現代っ子の方が忍者より身体能力が高い」ロジックが(まだ)登場しないのは残念ですが…
(ちなみに明夫の方は、ミリオタ(戦術マニア)として設定されているのが、面白くもバランスが取れていてなかなかよろしい)
…と、真面目に(?)書いてきて何ですが、本書の最大の魅力、原作ファンであれば必ず読むべきであるのは、後半の展開であります。
激しく争う中、偶然、タイムスリップ・スポットに飛び込んでしまった茂と陽子。二人が飛び出した先は――現代の横田基地! というのには原案者の影を感じて爆笑しましたが、それはさておき、思わぬ成り行きから陽子を自分の家に連れて行った茂は、妹と共に彼女の世話をすることになるのですが――ここから先はある意味陽子無双。
・風呂上がりに妹の洋服来て頬を赤らめる陽子
・中辛カレーを必死に頬張る陽子
・寝惚けてクマさんのぬいぐるみを抱っこしてる陽子
・街で飛行船を見上げて目をキラキラさせる陽子
何という俺得!(と、原作ファンは皆思っているのではあるまいか)。
などと思わず取り乱してしまいましたが、真面目な話、この辺りは、原作でも大きな意味を持っていたエピソード。生まれた時から使命の中に身を置き、戦いしか知らなかった少女が、自分の全く知らない平和な、自由な世界に触れた時何を感じ、どのように変化していくか…
現代人が過去に行って活躍する姿を描くだけでなく、過去の人間が現代に来て、良き方向に変わっていく姿を描くというのは(現代がそんなに良い時代か、という問いかけはさておき)原作の魅力の一つであり、工夫であったと感じますが、その点は、この漫画版でも全く変わらず、いや魅力的な画が付いた分、より印象的になっているのではないでしょうか。
そして、陽子が現代にやって来たことは、原作にはなかったまた別の意味を持つであろうことが、ラストに描かれるのですが…さらに、つかの間の現代で装備を整えた茂が、現代のグッズで大反撃に移るのかな、という楽しみもあり、連載当初に感じた不安はどこへやら、第三巻の発売が今から楽しみで仕方ないのです。
「夕ばえ作戦」第2巻(大野ツトム&光瀬龍&押井守 徳間書店リュウコミックス) Amazon

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