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2009.11.07

「大江戸ロケット」(漫画版)第3巻 もう一つの大江戸ロケット、ここに完結

 第二巻発売からもだいぶ間が空いたように感じますが、ついにと言うべきかようやくと言うべきか、漫画版の「大江戸ロケット」最終巻である第三巻が発売されました。
 孤立無援の清吉とソラは果たしてロケットを造り月に行くことができるのか、そして江戸に現れた謎の女・ヨミの真意は…

 と、原作舞台及びアニメの展開を敷衍しつつも、本作独自の要素を入れて盛り上がっていった本作ですが、しかし、結論から言ってしまえば本作は中途での打ち切り。そのためもあってか、第三巻の、特に後半に入ってからの展開は、これまでのペースに比べてかなり駆け足という印象があります。
 また、特に幕府回りの動きなども、これまで意味ありげに描かれていた部分がほとんど省かれてしまった感があり――特に水野忠邦の動きが漫画版独自のものであったこともあり――この辺りも実に勿体ない、と言わざるを得ません。

 しかし、それであっても個人的にはあまり違和感や物足りなさを感じないで済んだのは、清吉の成長物語として、本作が一つの答えを提示できているからではないか、と感じます。
 他のメディアの「大江戸ロケット」以上に、孤軍奮闘を強いられた本作の清吉。生まれ故郷からは背を向けられ、江戸の仲間たちは貧苦にあえぎ…と、逆境に立たされた清吉が、そんな中でも、いやそんな中だからこそ清吉が見て、感じたものを糧にロケット造りのために立ち上がる様が、この第三巻でのクライマックスであると言ってよいでしょう(それまで周囲に自分が玉屋であることを隠していたことが、ここで活きる!)。

 さらに、ヨミの狙いとご隠居の正体が結びつけられるという漫画版独自の展開が、清吉の絶望と復活に繋がるという漫画版オリジナルの終盤の展開も、ロケットの開発・打上げに託して描かれてきた清吉の成長を、より鮮明に印象づけてくれます。
 そしてそこからの展開が、ロケットをこう使うか! という実に意外であると同時にどこか納得できる、そしてシチュエーション的に実に盛り上がるものであったこともあり、最後まで面白く読むことができました。


 確かに長編漫画として読んだ場合、色々といびつな部分はあったかもしれませんが(その意味では本作を構成する要素の取捨選択がうまくいっていなかったかな…とは感じます。ロケット開発の科学的・技術的裏付けなど)、それでももう一つの「大江戸ロケット」として、本作は描くべきものは描いていたのではないかと感じる次第です。

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