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2009.11.17

「やわら侍・竜巻誠十郎 秋疾風の悲槍」 コロンブスの卵はあったけれども

 不景気のあおりで武士・町人ともに不満が高まる江戸。そんな中、当代一の蒔絵師と、悪名高い検校がそれぞれ殺害される。目安箱改め方として事件の探索に当たる竜巻誠十郎は、事件の背後に、謎の武士たちの不穏な動きを察知する。二つの殺人事件と武士たちの動きの繋がりは果たして。

 一度は却下された目安箱への訴えの真偽を探る影の役「目安箱改め方」として活躍する主人公の活躍を描く「やわら侍・竜巻誠十郎」シリーズの第三弾は「秋疾風の悲愴」。
 「五月雨」「夏至闇」ときて、秋風吹く江戸を舞台に誠十郎が挑むのは、不景気に苦しむ江戸で起こった二つの殺人事件であります。

 まず一つ、目安箱改め方として依頼されたのは、高利貸しで周囲から恨みを買っていた検校とその用心棒が、夜道で姿なき相手に殺害された事件。そしてもう一つ、彼が奇妙な因縁から巻き込まれたのは、高名な蒔絵師が殺され、その犯人として浪人の妻が捕らえられた事件。

 一見全く関係ないように見えた二つの事件は、しかし思わぬところで結びつき、しかもそれは、誠十郎自身の運命にも関わっていくことに…というのが今回の趣向です。

 ミステリ作家としての側面が強い作者だけに、事件のトリック崩しが魅力の本シリーズですが、今回はその辺りはちょっと弱め。
 検校殺しのトリックは、ある意味描写の勝利ともいえる内容ながら、「言われてみればそうか!」という一種のコロンブスの卵で楽しめましたが――そしてそれがラストの対決に繋がっていくのがうまい――蒔絵師殺しの方はちょっと残念な内容でした。

 しかしそれ以上に残念だったのは、前作で強く印象に残った、やむにやまれず犯罪に手を染めた人に対する誠十郎の鮮やかな裁きが、今回は見られなかったことで――もちろん、これは今回はそういう趣向だったと言えばそれまでですが、他の作品と一線を画し得る部分だけに、個人的には残念です。
(さらに言えば、時事ネタの色彩が強すぎるのも個人的には感情移入できませんでした)


 何だかネガティブな感想ばかりになってしまい恐縮ですが、それも本シリーズに対する期待の現れとして、ご寛恕を乞う次第。

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やわら侍・竜巻誠十郎 秋疾風の悲愴 (小学館文庫)


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