「とんち探偵・一休さん 謎解き道中」 史実とのリンクに不満が…
「金閣寺に密室」でデビュー(?)したとんち探偵一休さんが帰ってきました。前作でも活躍した茜、そして新右衛門さんと旅立った一休が、旅先で次々と出くわす事件に挑む連作短編集です。
前作で見事足利義満の死の謎を暴いた後、茜の生き別れの両親を捜すため、新右衛門と共に旅に出た一休。
難波・大和・伊勢・終わり・駿河・伊豆・相模そして武蔵…両親と思われる男女の跡を追う中、各地で三人が出くわした八つの事件の謎を、一休が解き明かすというのが本書のスタイルであります。
前作でも密室トリックに挑んだ一休ですが、本書では密室トリックの他、人間のすり替わり、建物の消失、被害者捜し等々、本書で取り上げられる八つの事件(正確にはラストを除く七つの事件)も、いずれもミステリの見本市的なバラエティに富んだもの。
さらにそこに毎回毎回、事件捜査の前に吹っ掛けられる何台を、一休がとんちで解決する場面があるのもユニークです。
個人的に印象に残ったのは、一夜にして現れ、鬼の棲み家として恐れられていた黒い家が、再び一夜にして消失した謎を解き明かす第四話「尾張・鬼の棲み家」。豪快なトリックではありますが、何故家が現れ、そして消えなければならなかったか、という点の理屈付けが楽しいのです。
さて、このようにミステリとして見た場合なかなか楽しめる本書なのですが、個人的には大きな不満があります――それは歴史、史実とのリンクがかなり乏しいこと。
前作は、足利義満の密室での死という衝撃的な事件の謎解き…すなわちミステリであると同時に、その中で、義満を取り巻く人と社会の状況を浮かび上がらせるという時代ものとしての側面を合わせ持つことが、大きな特長としてありました。
つまり前作はミステリ+時代ものであったのですが、しかし、本作はその時代ものの要素が、一話を除いて背景事情としてしか機能していない――一休が主人公であることを除けば、別に室町を舞台とする必然性がないのです。
その一話であるラストのエピソードは、物語の締めくくりであるだけに、なるほど! と感心させられるような時代ものとしての仕掛けが施されており、その点は大いに評価できるのですが、その仕掛けも、正直なところかなり唐突な印象があるのが残念なところです。
一定のルール・パターンを設定した短編連作に、あまり大仕掛けなものを求めるのは酷かもしれませんが、しかし、前作が見事だっただけに、その点が何とも残念に感じられた次第です。
「とんち探偵・一休さん 謎解き道中」(鯨統一郎 祥伝社文庫) Amazon

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