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2009.12.18

「風の七人」 はぐれ者たちの死闘

 優れた忍びの技を持ちながらも気儘に暮らすきりの才蔵は、かつての同僚・ましらの佐助からカンボジア行きを誘われる。現地で猛威を振るう天竜・水竜・地竜の日本人武将三兄弟を倒し、シャム王家に恩を売ろうというのだ。その挙に加わるのは妖術使いの七宝、古強者の裏切り陣内、豪剣を操る双子の群青・緑青、混血の美女さらの合わせて七人。果たして五十対七の死闘の行方は…

 名作再紹介シリーズ(正確にはこれまで紹介しそびれていた名作を発掘シリーズ)。今回は、戦国時代末期のカンボジアを舞台に、七人のはぐれ者が強大な戦闘集団を向こうに回して死闘を繰り広げる戦国アクションの名品「風の七人」であります。

 タイトルから察せられるように、本作は一種の特殊チームもの、不可能ミッションものの味わいを持つ作品。カンボジアで猛威を振るう日本人武士たちの堅固な要塞を壊滅させるため、いずれも一癖も二癖もある七人が集い、戦い、散っていく物語であります。

 主人公であり、七人の一つとなるのは、人並み優れた技を持ちつつも、人間観察が趣味というおかしな忍び・きりの才蔵。その彼と並ぶのは、才蔵の旧知であり、彼が致仕した後も真田幸村に仕える人間凶器とも言える忍び・ましらの佐助。名前と設定を見ればわかるとおり、霧隠才蔵と猿飛佐助をモデルにした二人であります。

 そして彼らの仲間となるのは、齢幾年とも知れぬ怪老人・七宝(その正体は、伝奇ものではお馴染みのあの人物!)、極め付きのへそ曲がりが災いして次々と主を替える歴戦の士・裏切り左近、宮本武蔵をも刮目させた二人で一人の豪剣の遣い手・群青と緑青、そして異国生まれの決して男に心を許さぬ美女・さら――

 この、設定を見るだけで胸躍るような七人が活躍をするわけですが、しかし本作に痛快なだけでなく、一種哀切な味わいを与えているのは、彼らが――そして彼らと対峙する天竜らもまた!――いずれも世間からはぐれ、行き場を無くし、あるいは求める者たちである点によります。

 秀吉の、そして家康の天下統一は、確かに日本から戦を無くし平和な世界を築きましたが、しかし同時に、それまで日本に存在したある種の自由な世界を、安定した社会の名の下に消滅させました。
 本作で敵味方に分かれるのは、いずれもかつての世界でなければ生きれなかった者たち、新しい世界では生きてはいけぬ者たち。その、本来であれば同胞であり、あるいは手を携えていけたかも知れぬはぐれ者たちが、潰し合い、消えていく様は、去りゆく時代の挽歌というにはあまりに切ないものがあり――その切なさがまた、本作を一層忘れ得ぬ作品としているのです。
(ちなみにこの色調は、新宮正春の「ゼーランジャ城の侍」等、同時期の異国を舞台とした他の時代小説でも共通のものであります)


 しかし、本作の最大の欠点に敢えて触れれば、それはこのキャラクターたちを、物語を描くのに、ボリュームが足りないことでしょう。
 これは初読の際に感じたことであり、今回もやはり再確認させられましたが、特に個々のキャラクターをもう少し掘り下げられていれば、感動が一層深まったと感じられるだけに、残念でなりません。
 厳しいことを言えば、キャラ描写不足のため、どのキャラがどんな行動を取るか、ある程度予測できてしまうのが何とも…

 が――それであってもなお、本作のラストの感動は、それを補ってあまりあるものがあると、私は感じます。例えお約束と言われようと、ラストの佐助の言葉に涙せぬ者があろうか!
 と、些か冷静さを失ってしまいましたが、何度読んでも、本作がそれだけのものを胸に残す作品なのは間違いないのであります。

「風の七人」(山田正紀 講談社文庫) Amazon

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