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2009.12.11

「親鸞の不在証明」 ラスト数ページの大逆転

 一休、空海にまつわる謎を解き明かした六郎太と静は、親鸞ゆかりの寺で、親鸞にまつわる謎を解き明かそうとする。その前に現れた蓮如は、六郎太に自分が出会った、因習に縛られた村での陰惨な連続殺人事件の様を語る。蓮如が解き明かした事件の謎とは、そして親鸞の恐るべき秘密とは…

 「金閣寺に密室」「いろは歌に暗号」と刊行されてきた、歴史推理シリーズの第三弾の題材は、親鸞。「密室」「暗号」ときて、次は「不在証明(アリバイ)」と来たか…と思うと意外な背負い投げを食らう、一筋縄ではいかない作品であります。

 前二作同様、今回も狂言回しの六郎太・静コンビが、題材となる名僧ゆかりの寺を訪れて、そこで意外な歴史の秘話を聞く…というスタイルかと思えば、本作はいささか趣を変えて、物語られるのは親鸞ではなく蓮如の、それも蓮如自身が体験したある事件の物語。

 とある村の豪農の未亡人に見初められ、婿入りした男・寛八郎が巻き込まれることになったのは、奇怪な鎧武者による連続殺人事件。使用人たちが次々と不可解な死を遂げ、謎の前夫の影に怯える寛八郎は、偶然村に立ち寄った蓮如に、真犯人捜しを依頼することとなります。

 因習に縛られた村に訳ありの名家、何かを隠しているかのような使用人たちに札付きの親族(さらに言えば犯人は○○)と、今日日珍しいほどまでに横溝正史テイスト溢れる本作ですが、この設定に一目瞭然な通り、史実に隠された謎を名僧が解き明かすという前二作とは異なり、本作では、史実とは無関係の事件を、名僧――といってもタイトルに冠されているのとは別の名僧が――解決するというスタイルとなっています。

 個人的には、ミステリの形を借りて、前二作のアクロバチックに史実の裏側を探り、描いていくという手法が好きだっただけに、本作でそれが無くなってしまったのは、大いに不満ではありますし、最大の欠点(と敢えて言わせていただきますが)だと感じます。

 しかしながら、ラスト直前まで、全く無縁に思われる事件の顛末が綴られた上で、ラスト数ページで一気に親鸞に秘められた巨大な秘密とそれが結びつけられるという趣向は、これはこれで面白い。
 結末まで来て、初めてタイトルの本当の意味がわかるというのは、実に好みであります。


 シリーズとしては相当苦しいところまで来てしまったな、という印象は正直なところありますが、さて六郎太と静が出会う第四の事件は誰にまつわるものなのか…その点だけでも大いに興味が湧くところであります。


 ちなみに、作中に登場するある身体的特徴を持つ人物のその後が、結末でしれっと描かれているのが実に面白い。
 あまりにもさり気なさ過ぎるのと、何よりも年代的に矛盾があるため(親の世代と脳内補完)、ネット上の感想を見てみても、ほとんど気づかれていないようですが…

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