「退屈姫君伝」 めだか姫、初の御目見得
陸奥磐内藩五十万石から、讃岐風見藩二万五千石に嫁いだめだか姫。夫がお国入りして暇を持て余す姫は、退屈しのぎに屋敷を抜けて町をぶらついたり、上屋敷の六不思議の謎解きに挑む毎日。そんな中、磐内藩と風見藩の密約を田沼意次が狙っていると知った姫は、俄然張り切るのですが…
まだこの作品を紹介していなかったか、と我ながら驚きましたが、米村圭伍先生の初期三部作の二作目にして、「退屈姫君」シリーズの第一作目、「退屈姫君伝」であります。
三部作の第一作目にして作者のデビュー作である「風流冷飯伝」に続く本作は、前作の舞台である風見藩の江戸屋敷にお輿入れしたやんちゃな姫君・めだか姫が、前作にも登場したへっぽこ隠密の倉地政之助や、その後のシリーズでも重要な役割を果たす山猿娘のくノ一とともに、これまた前作にも登場した田沼意次の巡らす陰謀に立ち向かうという痛快活劇。
作者お得意の、ですます調で繰り広げられる物語は、時にシリアスな面もありますが、圧倒的にどこか暢気ですっとぼけたムードが横溢しており、最初から最後まで、安心して読むことができます。
本作の中心になるのは、風見藩の上屋敷に伝わる七不思議ならぬ六不思議。タイトルどおり退屈な毎日を送っていためだか姫は、この謎解きに俄然張り切るのですが、その謎の一つ一つは、貧乏藩ながら人情味溢れる風見藩に相応しいものばかり。
そんな良くも悪くも卑近な真実に、こちらも思わず吹き出したり呆れたりしてしまうのですが、しかし、あれよあれよという間に内容がスケールアップしていき、ついには藩の存亡に関わるお話になってしまう米村マジックはここでも健在であります。
しょうもない不思議の数々が、いつしかめだか姫の異例の輿入れの理由や、田沼意次の陰謀に繋がっていく終盤の展開には驚かされましたが、その末の絶体絶命の窮地を、人々の絆と、そして何よりも悪戯心で乗り越えてしまうのにはさらにビックリ&ニッコリ。
個人的な趣味を言えば、いちいち下にまつわるネタを入れてくる米村作品のオヤジ臭い目線はどうにも感心できないのですが、しかし、キャラクターとストーリー展開の妙でもって、そんなこだわりを小さい小さいと笑い飛ばすような本作の――そして米村作品共通の――楽しさには、悔しいけれども脱帽です。
冒頭に述べた通り、本作は初期三部作の一つであると同時に、そこからスピンオフしてめだか姫を主役としてシリーズ化されることになったわけですが、それも納得の楽しさ。このブログでも、今更で恐縮ですが、今後一作一作取り上げていく所存です。
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