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2009.12.23

「水滸伝」を見終えて

 さて、約半年に渡り続けてきた日本テレビ版「水滸伝」も、ようやく最終回を迎えることができました。
 私以外ごくごく一部にしか需要のなかったであろう記事ですが、もう一回失礼して、全編を通しての感想を書きたいと思います。

 最初、テレビドラマとして「水滸伝」を作ったと聞いた時は、果たしてどの程度のものなのか、まあ水滸伝マニアとしては見ないわけにはいかないだろうけれども…
 と、半分おっかなびっくりで見始めましたが、しかしそんな気分はすぐに吹っ飛び、すっかりはまってしまったのはこれまでの感想の通りですが、さてその最大の理由は、やはりキャスティングの妙にあると感じます。

 寡黙な中に熱い反骨の意志を秘めた中村敦夫の林中、華麗な中にも芯の通った勁さを感じさせる土田早苗の扈三娘、そして陰険で奸悪な大悪党を見事に体現してみせた佐藤慶の高求…
 この三人のメインキャラは言うまでもなく、梁山泊の名のある豪傑たちが、ほとんど皆、原典のイメージと違和感なく、それでいてドラマ版ならではの存在感を発揮していたのには、改めて感心します。
(メイン級のキャラで、原典とはっきり異なっていたのは武松と関勝ですが、関勝は第25回の感想で絶賛した通り、本作ならではの見事なキャラ造形だったと思います。武松は…擁護できないなこりゃ)

 ストーリーの方も、基本一話完結、長くて前後編という構成が大半の中で、長大な原典のエッセンスをうまく抽出して、再構成できていたと感じます。

 もちろん、メインキャラが下手をすると二十名近く、しかもキャストに結構な大物が含まれることもあり、毎回全員が揃うことは不可能でしたが、一人一人のキャラが強烈だったこともあり、さほど違和感を感じなかったのが正直なところ。
 ああ、今回のスタメン入りはこの豪傑なのね…という感じで受け止めることができました。
(途中で不自然にパッタリ出番がなくなるキャラもありましたが、そこは脳内でカバー! 戴宋は燕麗を失った心の傷を癒すため、積極的に地方を走ってるんだよ、とか)


 もちろん、ヒーロー活劇として作られている以上、原典の犯罪者スレスレ――というより時々猟奇犯罪者そのもの――な梁山泊のカラーはかなり薄まっていて、その辺り、原典の真面目なファンから不評なのも事実でしょう。

 しかし、勧善懲悪しながらも、豪傑たちそれぞれをきちんと血の通った存在――特に魯智深、阮三兄弟の野放図なバカ騒ぎっぷりなど実に愉快――として描くことにより、単なる四角四面の正義の味方でも、深刻ぶった革命の徒でもなく描いてみせた点は、大いに評価すべきでしょう。

 それにしても、今振り返ってみれば、質量ともに規格外れの本作が成立したのは、日本テレビ開局二十周年番組という条件もさることながら、娯楽の王様が映画からTVへとシフトしていく時期に当たっていた点も大きかったように感じます。

 その意味では、おそらくはもう二度と同じ企画はできない、一種時代の徒花的作品であったとも感じるのですが、それはそれで実に「水滸伝」らしい。
 放映当時に見ることはできませんでしたが、本作をいま見ることができた幸せを、水滸伝ファンとして強く感じた次第です。


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コメント

毎回楽しく読ませていただいておりました。
「ごく一部の需要」の一人ですw

僕はこのシリーズは数年前にCSで放送された際に見たのですが、残念ながら全部は見れてません。このブログで全話のレビューを読んで、ますます見たくなってしまいました。

日本のテレビでこの作品が作られたのは、今のテレビを見てると奇跡としか思えない出来事ですね。それだけにこの作品は貴重です。

個人的にはハナ肇の武松はアレはアレで原典とは違うキャラとしてアリかなとも思います。まあ、武松でなくてもハナ肇に合った好漢はいるでしょうけども。

ともあれ、全話レビュー楽しませていただきました。
ありがとうございます。

投稿: Zhi-Ze | 2009.12.23 18:40

おお、こちらにも僕以外に喜んでくれる人が! 

色々と突っ込み所はありますが、本当に桁外れのスケールの番組で、これをリアルタイムで見たかった…とつくづく思います。

ハナ肇は、武松以外の好漢だとすごい似合いそうだなあと見ながら思っていました。たとえば周通とか(それはそれで失礼だ)

こちらこそ、最後までご覧いただきありがとうございました。

投稿: 三田主水 | 2009.12.24 23:24

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