「機巧奇傳ヒヲウ戦記」 第04話「勝つか負けるか! アラシ対ヒヲウ」
からくも風陣の襲撃から逃れたヒヲウだが、シシは敵討ちのため原田と共に出て行く。後を追うヒヲウだが、その前に現れたアラシは機巧勝負を挑んでくる。何とか切り抜けたヒヲウは、今度はシシと機巧勝負するが、負けたシシは槍で機巧を壊してしまう。それでもシシを待つヒヲウの前に、シシも機巧を直して帰ってきた、再び現れた風陣の屋形狼も、ヒヲウの策により撃退されるのだった。
シシの仇討ち話後編の第四話であります。
アバンタイトルはペリー来航シーンから。黒船を見に来た才谷さんが、木製潜水艦で黒船に接近して蒸気機関を見ようとするマスラヲと出会う姿が描かれます。
うーん漫画版第一巻(超名作!)とは平仄が合わないですが、まあ別メディアということで。
さて、前回ラストでマユ姉ちゃんが人質に取られ、風陣の巨大機巧・屋形狼も登場して大ピンチ…というところで終わりましたが、その辺りは冒頭で何とか突破。
しかし、逃れることが出来ても、シシの仇討ちという問題は全く解決していません。シシは、原田の言葉に乗って、ヒヲウたちから離れてしまうのですが…
古今東西、仇討ちを題材にした物語は無数にありますが、単純に仇討ちを賛美するだけでなく、その意味に疑問を持つ作品も、また多数あります。
本作も、もちろん後者の立場に立つ作品ですが、しかし、復讐者を年端もいかぬ子供とすることで、ある種の生々しさを出しつつ、しかし良い意味で単純化しているのがユニークなところです。
その象徴的シーンが、ヒヲウとシシの機巧勝負の顛末でしょう。シシの仇討ちを止めるため機巧勝負を挑むヒヲウと、それを受けて思わず熱中してしまうシシ…これだけであれば、劇中の原田と同じく子供だなぁと呆れつつも微笑ましく感じるのですが、しかしそれだけでは終わりません。
ヒヲウに負けて腹を立てたシシは、原田の槍でヒヲウの機巧を直接攻撃! 槍を突き刺され、「命」を喪ったヒヲウの機巧の姿が、何とも生々しく目に映ります。
命の重みを、まだ年端のいかぬ子供が実感を持って理解できるかはわかりませんが、しかし、友達が大事にしていた機巧を、自分自身の手で壊してしまった後味の悪さは、その命の重みに似たものを、シシに感じさせてくれたことは想像に難くありません。
これでシシが原田と別れ、ヒヲウたちの元に戻るという展開は、一歩間違えると道徳の教科書的なものになってしまいますが、しかしこの辺り、絵と声と演出と――要するにアニメーションを構成する要素がうまく噛み合って、ああ、子供ならばきっとこういう考え方もするよね、と笑顔で頷くことができるのです。
と、忘れちゃいけない、ロボットものとしての本作。
ゼンマイ動力で動く炎に対し、風陣が繰り出してきた屋形狼は、なんと最先端のスチームインジン搭載。
パワーだけでなく、活動時間の点においても、炎は圧倒的に不利で…と、幕末にロボット! と大きな嘘をついておきながら、小さな嘘でもっともらしく――そしてロボットものとしてより燃える方向に――固めてみせるところが何とも楽しいのです。
そして、ヒヲウがスチームインジンの弱点を見出すのが、途中のアラシとの機巧勝負で、というのも定番ながらうまい(このシーン、何だかとってもコロコロチックなんですが、それがまた微笑ましくてよろしい)。
さらにその展開の中で、機巧を武器としてしか見ないアラシにも、もしかしたら自分の機巧を大事にする心が…とさりげなく見せるのも、また気持ち良いのでした。
さて、原田はともかく(?)、才谷もあっさり一時退場して再び旅は子供たちだけに…飛騨高山への旅路やいかに?
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