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2010.01.31

「機巧奇傳ヒヲウ戦記」 第05話「さいなら? テツとこけし」

 旅の途中、山でキノコを食べたヒヲウたちだが、テツが毒キノコに当たってしまう。勘兵衛とふくの夫婦に助けられたテツは、ふくに甘えてその場に残りたがり、サイたちもその身を案じてテツとジョウブを残して旅立つ。しかし思い返したテツとジョウブは炎を追いかける。ふくは涙ながらに二人を見送るのだった。

 飛騨高山へ向かう道中編その一といった今回は、前後の物語から独立したエピソード。
 ヒヲウの小さな弟。テツをメインとした、ちょっと切ないお話です。

 子供たちばかりで旅を続けるヒヲウ一行。それがやむを得ないことだと理解し、一種覚悟を決めているヒヲウたちはともかく、テツにとっては、何もわからぬまま兄たちについてきただけ。
 それが楽しいことばかりであれば良いのですが、何か辛いこと、そして逆に安らぎや暖かみを感じさせることがあれば…
 年齢の割には健気に頑張るヒヲウたちですが、しかしその子供としての弱さの部分を、今回のテツは代表しているのでしょう。

 しかし何とも切ないのは、テツたちを助け、そして引き取ろうとした女性・ふく。
 「お母さん」を絵に描いたような彼女は、テツとジョウブにひたすら愛を注ぎ、可愛がるのですが…

 そのふくの家にあるのが、今回のサブタイトルともなっているこけしである時点で、何となく背景事情はわかるかと思いますが…予想通り、彼女は自分の子供をコロリで亡くしたばかり。そんな彼女にとって、テツとジョウブは、まさに天からの授かりものだったのですが…それを知ったテツが、結局ジョウブを連れて飛び出して言ってしまうのが何とも切ない。
(この辺り、何故テツが飛び出したかという点には色々解釈があるかと思いますが、パッと見あまりハッキリしないのが、かえって面白いと思います)

 個人的には、こけしを映すだけでも十分背景事情はわかるので、あえて触れなくてもいいかな…とも思いましたが、そうするとテツの飛び出すきっかけもさることながら、今回、時代背景との繋がりが全く無くなってしまうので、それはやっぱりダメなのでしょうね。


 …色々書きましたが、今回は正直に言って実に感想の書きにくい回。
 しかし、毎回子供たちの描写が、不自然さなく良く描けているなあと感心するのですが、今回もその点からすると、子供の無邪気な可愛らしさのみならず、ある種の残酷さもきちんと描けていたかな、とは思います。


 と、二つほど補足を。
 今回のアバンタイトルは、何と平賀源内の死のくだり。エレキテルで賊を退けるも、賊が感電死してしまい、それが元であらぬ疑いをかけられた末に獄死する…というのがここでの解釈ですが、さて、エレキテルが今後どう絡んでくるか? それは今のところは闇の中であります。

 もう一つは、今回顔見せ程度の登場だったアラシ。単身ヒヲウたちを追ってくるも、機巧が故障して狼にやられ、ヒヲウたち同様勘兵衛に拾われるという、ちょっとカッコ悪い役回りでしたが、意識を取り戻すとすぐに飛び出してしまうのがらしいといえばらしいかなあ。


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2010.01.30

「朧村正 鳥籠姫と指切りノ太刀」 原作に忠実に、原作を超えて

 村正に魅入られ忍びを抜けた鬼助は、強力な結界の中に迷い込む。お静という少女の導きで隠れ里にたどり着いた鬼助だが、里は十年に一度、妖怪・蛟姫に生け贄を捧げていた。一方、同じく村正を持つ少女・百姫は、蛟姫の賓客として招かれていた…

 昨年発売され、ゲーマーに好評をもって迎えられた――ちょうど先日、任天堂の「みんなのおすすめセレクション」にも選ばれたばかりです――Wii用ソフト「朧村正」。
 時代ゲーマー(?)として、私ももちろん大好きな一本ですが、その「朧村正」が小説化が登場しました。

 内容的には、ゲームのストーリーの小説化ではなく、ゲームの設定を用いての外伝ストーリー。ゲームからのキャラクターも、鬼助・百姫(飯綱陣九朗)・柳生雪之丞の三人のみとなっています(ゲームの重要キャラ・虎姫は登場しませんが、それは本作の内容的に仕方はないところでしょう)。

 しかし、一読してみれば、本作は紛れもなく「朧村正」。妖しく殺伐とした、しかしどこかコミカルな世界に、鬼助たちゲームのキャラも本作オリジナルのキャラも、違和感なく混じり合って存在しています。
 また、温泉での回復や刀同士の激突、巨大キャラとのバトルなど、ゲームをプレイしたことのある方であればニヤリとできるような要素を、違和感なく小説の中に盛り込んでいるのにも感心させられます。

 しかし――本作の最大の魅力は、ゲームの世界を小説の中に再構築しつつも、ゲームでは(アクションゲームという性質上)決して描けない部分を中心に据えて、一個の小説として成立させている点でしょう。
 そう、本作では主人公たる鬼助の心情、心の動きを、克明に描き出しているのです。

 鬼助というキャラクターは、そもそも幼い頃から忍びとして育てられ、それ以外の世界を知らぬ少年。それが、任務で村正を手にしたことから妖刀に憑かれ、忍びの世界を抜けることとなるのですが――
 本作では、そのある意味狭い世界を飛び出した鬼助のとまどいが、そして、自分が自分として生きることの意味と喜びが、妖怪との戦いの中で描かれていくこととなります。

 鬼助が初めて知った、隠れ里での穏やかな暮らし(これもまた、ゲーム中では表現できない部分であります)。子を産み、育て、次の代へ繋げていく人々の生と、それを守ることの意味…ただひたすらに切れ味のみを求め他者の生を奪うために作られた村正を手にした鬼助が、そのためにそんな人の生を知ることになるという皮肉な構成も面白く、この「朧村正」の世界でこのようなアプローチもできたかと大いに感心した次第です。

 そして、そんな自由を手に入れた鬼助と対比されるように描かれるサブタイトルの「鳥籠姫」の存在も実に切なく、この辺りはベタではあるのですが、しかしそれが、ラストで鬼助が初めて××というシーンに繋がってくると――そして鬼助の太刀の名を重ね合わせれば――素直にグッとくるのであります。


 原作ゲームを知らない方が読んでどう思うかは、私にはわかりませんが、少なくとも原作ファンであれば読んで絶対損はしない、原作に忠実に、それでいてある部分では原作を超えた作品だと、私は感じます。

 ただ一点、挿絵が原作ゲームのイラストを担当した神谷盛治氏であればベストだったのですが…しかし話の内容的に、氏だと艶やかすぎたかな?

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2010.01.29

二月の時代伝奇アイテム発売スケジュール

 車内広告がクリスマスからお正月に変わったと思ったら、もう次はバレンタインデー。あっと言う間にもう二月は目の前です。
 二月は短いですが、しかし発売されるアイテムはなかなかのもの。というわけで二月の時代伝奇アイテム発売スケジュールです。(敬称略)

 まず文庫小説ですが、こちらは一月に比べてかなりの豊作。
 注目の新作としては、上田秀人の新シリーズ「目付鷹垣隼人正裏録」の第二弾「錯綜の系譜」が真っ先に目に付きますが、 米村圭伍が徳間文庫に初登場しての「ひやめし冬馬四季綴 桜小町」も冷飯と聞いては見逃すわけにはいきません。
 さらに翔田寛「やわら侍・竜巻誠十郎」の第四弾、そして残念ながら発売が一月延びてしまった 朝松健「真田幸村家康狩り」も、当然要チェックです。

 また、気になるのが第16回電撃大賞を受賞した「幕末魔法士 Mage Revolution」。果たして時代伝奇か完全なパラレルワールドかはわかりませんが、幕末に魔法と来ては無視できません。

 その他、文庫化としては夢枕獏の大長編「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」が刊行開始です。


 さて、漫画の方も注目作が目白押し。「風が如く」第六巻、「アイゼンファウスト 天保忍者伝」第四巻、「戦国ゾンビ百鬼の乱」第四巻、「危機之介御免 ギヤマンの書」第二巻と、待望の続刊ラッシュ。
 その他、畠中恵の未単行本化作品が原作の「八百万」や、可愛く見えても本格派? の「信長の忍び」第二巻も注目です。

 また、水滸伝ファン的には、当然「AKABOHI」第三巻と「月の蛇」第二巻の、二つの異聞な水滸伝も当然読むべし。


 映像ソフトでは、昨年公開された「カムイ外伝」がソフト化…はいいのですが、それに合わせてアニメ「忍風カムイ外伝」がBlu-Ray BOX化。
 「バジリスク 甲賀忍法帖」もBlu-Ray BOX化されるなど、そろそろBlu-Rayも無視できなくなってきた…のかなあ。
(しかし40年前のアニメをBlu-Rayにしていかほどの効果があるのかしらん)

 なお、押井守脚本の「宮本武蔵 双剣に馳せる夢」もソフト化されますが…さて。


 最後に個人的に非常に楽しみな非時代ものの伝奇作品が、巻来功士の「ミキストリII」。同意してくれる方が一体何人いるかわかりませんが、マッキーはゴッサイより「ミキストリ」が代表作だろ! と昔から思ってきただけに、復活は素直に嬉しいです。
(復活しても本当に作品のノリが変わっていないのが、本作に限っては嬉しい。)




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2010.01.28

「徳利長屋の怪 名探偵夢水清志郎事件ノート外伝」 時代に挑む大仕掛け

 今日も徳利長屋で暢気に暮らす清志郎左右衛門。しかし時代の流れは、彼らの周囲にも押し寄せていた。かつて旅を共にした友の死に、これ以上時代の犠牲を出さないことを誓った清志郎左右衛門は、江戸を戦火から救うため、仲間たちとともに「江戸城を消す」仕掛けに挑む。

 「名探偵夢水清志郎事件ノート」外伝・大江戸編の下巻、「徳利長屋の怪」であります。
 上巻では鮮やかな活躍(?)を見せてくれつつも、さほど幕末という時代には絡んでこなかった清志郎左右衛門ですが、この下巻では仲間たちと共に、真っ向から時代の流れに挑むことになります。

 一大変革の時代であったとはいえ、あまりに多くの血が流れた幕末。侍同士の、主義主張のための争いのみならず、単にそこにいたというだけで庶民も巻き込まれ、犠牲となっていった時代…というのは一面的な見方かもしれませんが、しかし、時代を超えるための不幸がそこにあったことは間違いありません。

 そんな世相を、自らを名探偵――事件を、みんなが幸せになるように解決する職業と以て任ずる清志郎左右衛門は見過ごしにすることはできません。
 江戸に出てくる途中、暢気に楽しい旅を繰り広げた友・才谷梅太郎――その正体をここで述べるまでもないでしょう――の死の知らせに、清志郎左右衛門が涙を流すという本作随一に印象的な場面を経て、彼はついに自ら時代の流れを変えるべく、立ち上がることになります。

 時あたかも、新政府軍が江戸目指して進軍中。対する幕府軍は、江戸を戦場としても徹底抗戦の構え。江戸が炎に包まれ、多くの無辜の民が犠牲となりかねぬ事態を前に、清志郎左右衛門たちの選んだ手段――それが、徳川幕府の象徴であり、新政府軍最大の標的である江戸城の消失というのは、ある意味実に本作らしい、実に人を食った仕掛けですが、しかし、そこに込められているのは、時代とは、歴史とは何なのか、誰のためのものかという真摯な問いかけであります。

 確かに、トリック的には時代を考えても豪快に過ぎるかもしれませんし、その下敷きとなる清志郎左右衛門の主張及び民衆の声も、いささかお説教じみて聞こえるかもしれません。
 しかし私は、ミステリを手段として、ある時代に対する視点を提供してみせる本作のスタンスを大いに評価したいと思います。これを時代ミステリと呼ばず、何と呼ぶべきでしょうか?


 などと大上段に振りかぶったお話をしましたが、本作の基本は、あくまでも楽しいエンターテイメント。
 清志郎左右衛門をはじめとする長屋の面々の明るいキャラクターの楽しさはもちろんのこと、長屋の隣人にして幻の秘剣・天真流の使い手である巧之介と江戸城を守る御庭番の対決など、アクションの見せ場もきっちり用意しているのは心憎いところです。

 シリーズファンのみならず、本作で初めてシリーズに触れるという方にもおすすめしたい、児童文学と甘く見ていると大損をする快作であります。

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徳利長屋の怪<名探偵夢水清志郎事件ノート外伝> (講談社文庫)


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 「ギヤマン壺の謎 名探偵夢水清志郎事件ノート外伝」 名探偵幕末にあらわる

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2010.01.27

「ギヤマン壺の謎 名探偵夢水清志郎事件ノート外伝」 名探偵幕末にあらわる

 時は幕末、長崎の出島の蔵から、高価なギヤマンの壺が消えた。密室事件の謎を解いたのは、黒眼鏡に黒ずくめの着物の自称「名探偵」夢水清志郎左右衛門だった。ぶらりと旅に出た清志郎左右衛門は、江戸で三つ子の姉妹が大家の長屋に住みついて探偵稼業を始めるが…

 児童向けとして執筆されながらも、大人の間にも多くのファンを持つ「名探偵夢水清志郎事件ノート」シリーズの外伝である大江戸編の上巻が、本作「ギヤマン壺の謎」であります。
 現代などを舞台としたある物語の番外編として時代劇編が描かれるのは、特に漫画などでは珍しくないこと。まさにコスチューム・プレイというわけで、非日常たる時代劇の世界で物語が展開されるというのは、それだけ刺激的ということなのでしょう。

 しかし本作と下巻「徳利長屋の怪」においては、単に舞台を変えた目新しさだけでなく、時代ものとして描かれることにもある種の自覚をもって描かれていると感じられます。

 本作の舞台となるのは幕末。新しい時代は目前とした混乱の中にあって、しかし古い時代の体制・社会秩序も厳然として存在していた時代であります。
 人情があったとか、志があったとか、しばしば現代に比して理想的に取り上げられるこの時代――もちろんそれはこの時代に限ったことではありませんが――ではありますが、しかし、身分差別をはじめとして、現代の我々では想像もつかないような不自由・不幸があったことは、言うまでもないことであります。

 これはむしろ下巻で一層はっきりと描かれる点ではありますが、清志郎左右衛門が挑む事件の背後にあるのは、この一種時代性とも言えるもの。
 人が幸せになれない、人を幸せにしない時代に対して、「事件を、みんなが幸せになるように解決する」名探偵・清志郎左右衛門が挑む――本作は、そんな構図の下に成り立つ作品であります。


 時代によって変わらないもの、変わるもの、変わらなければいけないもの、変わってはいけないもの――舞台を江戸時代とすることにより、その点を(元シリーズと無意識に比較させることで)浮かび上がらせてみせた本作。
 考証の点で突っ込みどころは山ほどありますが、しかしそれでもなお、本作の視点はしっかりと時代小説なのであります。

 さて、下巻では清志郎左右衛門と仲間たちが、皆を幸せにするために驚天動地の大徳利…いやトリックを仕掛けるのですが、それはまた稿を改めて。

「ギヤマン壺の謎 名探偵夢水清志郎事件ノート外伝」(はやみねかおる 講談社文庫) Amazon
ギヤマン壺の謎<名探偵夢水清志郎事件ノート外伝> (講談社文庫)

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2010.01.26

「新撰組 PEACE MAKER」 第01話「不穏」

 もうTBSでは第2話が放送される(MBSでは放送済み)というのに今頃で恐縮ですが、この1月中旬から放送が開始された「新撰組 PEACE MAKER」の第1話をようやく見ました。
 須賀健太君の原作そのままの髪型には色々と複雑なものも感じつつ見たのですが、第1話の時点では、そこそこの出来映え、という印象です。

 本作の原作は、約十年前(!)に連載されていた黒乃奈々絵の漫画「新撰組異聞 PEACE MAKER」。史実では土方歳三の遺品を日野に届けた新撰組隊士・市村鉄之助を主人公に、池田屋前後の新撰組の姿を描いた漫画であります。
 七年前には「PEACE MAKER鐵」のタイトルでアニメ化されましたが、この度なぜか実写ドラマ化ということで、原作読者としては期待半ば、心配半ばだったのですが…
(ちなみに「PEACE MAKER鐵」は原作漫画の第二シリーズのタイトルですが、同タイトルのアニメの内容は第一シリーズの「新撰組異聞 PEACE MAKER」。そして今回のドラマ化のタイトルは「新撰組 PEACE MAKER」…微妙にややこしい)

 さて、この第1話は、レギュラーキャラの顔見せという印象。
 主人公・鉄之助にその兄・辰之助、近藤・土方・沖田・山南・原田・永倉・藤堂といった新撰組の面々、そして鉄之助の宿敵である吉田稔麿など歴史上の人物に加え、北村鈴や山崎歩(原幹恵さん痩せたなあ)などの本作オリジナルの顔ぶれまで、相当の人数を並べて見せたのは、それなりに評価できます。

 ストーリー的には、本作の中心となる鉄のトラウマ、やがて池田屋事件に繋がる長州の暗躍などが描かれましたが、むしろ顔見せのバックグラウンドという印象。
 今回の実質上のクライマックスは、アバンタイトルで描かれた池田屋事件であります。
 この池田屋事件は、原作でのクライマックスだったのですが、それを冒頭に持ってくるのは、なかなかうまい掴みであると思います(この時点では、誰が誰やらほとんどわからないのが困ったものですが…ここでキャプションを出しても良かったのでは?)。

 ここでは、新撰組の池田屋突入からの大乱戦の模様が結構長く流されるのですが、ちょっと面白い(色々な意味で)のはその殺陣。
 とにかく多用されるのですね、蹴り技が。ほとんど剣2足1くらいの割合で蹴りが飛ぶ殺陣は、かなり珍しいように思います。

 真剣勝負の最中に蹴りを出すのは、冷静に考えるとバランスを簡単に崩しそうで危険ですし、蹴り足を斬られたらおしまいと思えますし、原作でも要所要所で使っていたとはいえ、そこまで連発していなかったように思うのですが…
 まあ、見栄えがするのは確かですし、綺麗なチャンバラではない、乱戦の中でのぶちかまし合い、という描写には似合っているとは思います。

 もっとも、このシーン全体を通して見れば、あまり基本がなってなさそうな剣戟が、かえって修羅場感が出ていて面白かったとは思いますし、何よりも、深夜ドラマとしては(あくまでも「としては」ですが)想像以上に気合いの入った映像であったのはちょっと嬉しい驚き。とりあえずこの先も見てみようと思える内容であったと思います。
(全話紹介するかはわかりませんが…)


 …あ、サイゾーがいない。


関連サイト
 ドラマ公式サイト
 MBS番組宣伝サイト

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2010.01.25

「変身忍者嵐」 第28話「殺しにやって来る! 魔女メドーサ!!」

 魔女メドーサは、忍者大秘巻地の巻を奪い姉ゴルゴンの仇を取るため、曲芸師姉妹を操ってハヤテたちを狙う。催眠術で操られるツムジに奪われた地の巻を奪還した嵐だが、ツムジは石に変えられてしまう。メドーサを追い南蛮寺の女占い師(実はメドーサ)を訪ねたタツマキが催眠術にかけられかけた時、嵐が登場。月の輪の助言で、唯一の弱点である鎌を使いメドーサを倒すのだった。

 さて今回の変身忍者嵐は、一部で有名な西洋妖怪メドーサ登場の巻です。
 このメドーサ、以前登場した魔女ゴルゴンの妹という設定で、(当然?)ビジュアル的にも姉と一緒。つまりはレオタードにマントというかなり危険球なコスチュームであります。
(ちなみに頭の蛇のプロップは、ゴルゴンの時よりもかなり出来が良いように感じます)

 しかも今回は体のラインがはっきりわかる白のレオタード、演じるのは真理アンヌというわけで、これは確かにインパクトがあります(後半、メドーサが南蛮寺なのに何故かインドチックな服装で女占い師に化けて現れるのは、やはり真理アンヌさんがインド系だからなのでしょう)。

 さらにこのメドーサ、旅の曲芸師姉妹を術にかけて赤レオタード姿で操るのですが、三人揃って夜の街をマントをバサバサさせながら走る姿は何というか…あと、攻撃の時に下忍がマントの中から転がり出てくるのも、普段どういうことになっているのかちょっとドキドキ。
 …ただ、メドーサ最大の武器である石化(姉は凍結だったのに…)は、史上最低にもっさいビジュアルで――簡単にいえば灰色の雪だるまのかぶりもの――逆方向のインパクトです。

 さて、お話の方は、ハヤテが持つ(ことになったらしい)忍者大秘巻地の巻を巡る争奪戦。前回、メドーサの手に天の巻が渡ったのでそちらの争奪戦かと思ったらちょっと意外ではあります。
 というか今回、筋立ては非常にシンプルな割に、どこかもっさりとしているというか…個々の要素はなかなか面白いのですが、それぞれがうまく結びついていないのかな、という印象でした。

 ちなみに今まであまりはっきりと語られてこなかった大秘巻の秘密ですが、何百人もの伊賀忍者が調べた日本中の城の抜け道・攻撃方法や金山銀山の在処が描かれていたとのこと。
 確かに大変な内容ではありますが、もう少し血車党攻略に役立つ秘密だと盛り上がるのに…と思います。

 さて、メドーサ戦との決着は、メドーサ唯一の弱点である鎌での一撃。
 何故鎌…と思いきや、ギリシャ神話のメドゥーサは、ペルセウスに鎌で首を刈られているのですね。月の輪は本当に何でも知っているなあ(メドーサの化石の術も、月の光に包まれた俺の体は石にならないと断言しちゃうし)。

 も一つ個人的に面白かったのは、今回、舞台となった堺の町を南蛮人が歩き、南蛮寺もあったこと。
 天領に禁教令が発布されたのは1612年ですから、本作は少なくともその前が舞台ということなのでしょう。
(堺にはあまり外国船は来ていなかったとか言わない)

今回の西洋妖怪
魔女メドーサ
 ハヤテの忍者大秘巻地の巻を狙う西洋妖怪で魔女ゴルゴンの妹。水晶玉を用いた催眠術で、曲芸師姉妹やツムジなどを操った。水晶球は破壊光線も出す。目に見えない悪魔の馬車に乗って移動し、メドーサ化石の術で相手を石像に変える。
 不死身の体を持ち、嵐の刃を真っ向から受け止めるが、唯一の弱点である鎌を刺され、三千年の命を絶たれた。


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2010.01.24

「機巧奇傳ヒヲウ戦記」 第04話「勝つか負けるか! アラシ対ヒヲウ」

 からくも風陣の襲撃から逃れたヒヲウだが、シシは敵討ちのため原田と共に出て行く。後を追うヒヲウだが、その前に現れたアラシは機巧勝負を挑んでくる。何とか切り抜けたヒヲウは、今度はシシと機巧勝負するが、負けたシシは槍で機巧を壊してしまう。それでもシシを待つヒヲウの前に、シシも機巧を直して帰ってきた、再び現れた風陣の屋形狼も、ヒヲウの策により撃退されるのだった。

 シシの仇討ち話後編の第四話であります。
 アバンタイトルはペリー来航シーンから。黒船を見に来た才谷さんが、木製潜水艦で黒船に接近して蒸気機関を見ようとするマスラヲと出会う姿が描かれます。
 うーん漫画版第一巻(超名作!)とは平仄が合わないですが、まあ別メディアということで。

 さて、前回ラストでマユ姉ちゃんが人質に取られ、風陣の巨大機巧・屋形狼も登場して大ピンチ…というところで終わりましたが、その辺りは冒頭で何とか突破。
 しかし、逃れることが出来ても、シシの仇討ちという問題は全く解決していません。シシは、原田の言葉に乗って、ヒヲウたちから離れてしまうのですが…

 古今東西、仇討ちを題材にした物語は無数にありますが、単純に仇討ちを賛美するだけでなく、その意味に疑問を持つ作品も、また多数あります。
 本作も、もちろん後者の立場に立つ作品ですが、しかし、復讐者を年端もいかぬ子供とすることで、ある種の生々しさを出しつつ、しかし良い意味で単純化しているのがユニークなところです。

 その象徴的シーンが、ヒヲウとシシの機巧勝負の顛末でしょう。シシの仇討ちを止めるため機巧勝負を挑むヒヲウと、それを受けて思わず熱中してしまうシシ…これだけであれば、劇中の原田と同じく子供だなぁと呆れつつも微笑ましく感じるのですが、しかしそれだけでは終わりません。
 ヒヲウに負けて腹を立てたシシは、原田の槍でヒヲウの機巧を直接攻撃! 槍を突き刺され、「命」を喪ったヒヲウの機巧の姿が、何とも生々しく目に映ります。

 命の重みを、まだ年端のいかぬ子供が実感を持って理解できるかはわかりませんが、しかし、友達が大事にしていた機巧を、自分自身の手で壊してしまった後味の悪さは、その命の重みに似たものを、シシに感じさせてくれたことは想像に難くありません。

 これでシシが原田と別れ、ヒヲウたちの元に戻るという展開は、一歩間違えると道徳の教科書的なものになってしまいますが、しかしこの辺り、絵と声と演出と――要するにアニメーションを構成する要素がうまく噛み合って、ああ、子供ならばきっとこういう考え方もするよね、と笑顔で頷くことができるのです。


 と、忘れちゃいけない、ロボットものとしての本作。
 ゼンマイ動力で動く炎に対し、風陣が繰り出してきた屋形狼は、なんと最先端のスチームインジン搭載。
 パワーだけでなく、活動時間の点においても、炎は圧倒的に不利で…と、幕末にロボット! と大きな嘘をついておきながら、小さな嘘でもっともらしく――そしてロボットものとしてより燃える方向に――固めてみせるところが何とも楽しいのです。

 そして、ヒヲウがスチームインジンの弱点を見出すのが、途中のアラシとの機巧勝負で、というのも定番ながらうまい(このシーン、何だかとってもコロコロチックなんですが、それがまた微笑ましくてよろしい)。
 さらにその展開の中で、機巧を武器としてしか見ないアラシにも、もしかしたら自分の機巧を大事にする心が…とさりげなく見せるのも、また気持ち良いのでした。


 さて、原田はともかく(?)、才谷もあっさり一時退場して再び旅は子供たちだけに…飛騨高山への旅路やいかに?


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2010.01.23

「忍歌」第2巻 忍びと人間の間で

 誰よりも人間的な幸せを求めているのに、卓越した忍びの技をもつばかりに苦難の運命に巻き込まれる忍び・歌丸の死闘を描く「忍歌」第二巻にして完結巻の登場であります。
 服部半蔵正成に奪われた身重の妻・おみつを追っての歌丸の追跡行は、意外な結末を迎えることになります。

 おみつを追って国を抜けた末に、今川に雇われた歌丸を待っていたのは、今川・武田連合による、松平元康暗殺ミッション。
 松平元康は、言うまでもなく徳川家康の元の名であり、つまり服部半蔵の主君――ここで彼本来の目的と忍びとしての仕事が合致した歌丸は、勇躍、元康、いや半蔵正成の元に向かうのですが…

 そこで正成の二人の兄、そして父である半蔵保長を破ったものの、おみつは取り戻せず、かえって鉄の結束を誇る伊賀者たちにとってのお尋ね者となってしまった歌丸。
 それでもなお、妻を求めて流浪を続け、ついには忍び嫌いとして知られるあの武将と出会うことになるのですが…

 ここから先のクライマックスの展開とその結末は、かなり意外かつ切ないものではあるのですが――この二巻で完結ということを事前に知らなかったため、正直なところかなり面食らいました――しかし、歌丸が何のために戦ってきたかを考えればそれも納得の結末。
 彼が戦い続けてきた理由…それは、単におみつ恋しさに留まらず、おみつが、彼女の愛が――そしてその彼女を愛する自分の心を捨てずにいることが――今の「忍び」という非人間的な身分から、自分を「人間」にしてくれるからにほかなりません。
(そして彼の宿敵もまた…という展開には、その後半生を考えれば大いに納得であります)

 最下層の忍びに生まれ、生涯人の道具となるほかなかった彼が、妻と引き離されることにより、人間として生きるきっかけを掴むというのは、皮肉というより悪意めいた運命ではありますが、それだからこそ、想いを全うした彼の生き様が、印象に残るのでしょう。

 戦国時代の著名人を幾人も物語に絡め、忍者同士の死闘を達者なアクション描写で描きつつも、「忍び」と「人間」の間で揺れる主人公のドラマを描いた本作。

 忍歌が物語の中で段々扱いが軽くなっていった感もあり――忍歌という忍びとしての行動マニュアルと、それを実践しつつも、精神の上で外れていく歌丸の対比も面白かったのですが――また、やはり終盤は駆け足となってしまった印象もあるのですが、やはりこの作者の作品に外れはないと、改めて感じた次第です。


 ちなみに、登場人物の一部のデザインが、並行して連載されていた「信長戦記」のそれと同じだったのは(当たり前と言えば当たり前なのですが)ちょっと面白かったかな。

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 「忍歌」第1巻 人の心に忍びの技

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2010.01.22

「戦国SANADA紅蓮隊」第1巻 戦国でも平松節!

 武田家が滅び、雌伏を余儀なくされていた真田幸村。そんな彼の元に猿飛佐助がもたらしたのは、本能寺の変で織田信長が討たれたとの報だった。再び乱れるであろう天下の表舞台に立つため、幸村は佐助と共に旅立つ。

 「ブラック・エンジェルズ」「マーダーライセンス牙」の、あの平松伸二先生が戦国漫画を描いた! そう聞いたとき私の脳裏をよぎったのは、
・主人公は極めてクールか、極めて熱血漢
・悪役は一目でわかるビジュアル(目の下に真っ黒な隈など)で、改心の余地もない外道
・感情が激した時の台詞は「○○だぜエエエエ~~~!!!」「○○がアアアアア~~~!!!」
・で、無辜の民を鬱になりそうなほど無惨に殺した外道は、主人公に「この外道がアアアアア~~~!!!」と真っ二つにされる

…という作品だったのですが、豈測らんや、この予想がほとんど全て当たっていたとは。

 ――と、冒頭からベタなお話で恐縮ですが、しかし数十年来の隠れ平松ファンとしては、やはりテンションが上がらずにはおれません。
 この第一巻の中心となるのは、幸村と、生涯の宿敵である徳川家康とのファーストコンタクトですが…主人公の宿敵ですから、当然家康は絵に描いたような腐れ外道。
 ビジュアル的にも極悪ですが、戦で両親をなくした子供を捕まえてきて人間狩り(しかも約束を破って幸村の眼前で射殺)するという見事なまでの外道っぷりで、幸村もエキサイトであります。

 まあ、ここで家康を叩き斬っては歴史が変わってしまうため、残念ながら逃げられてしまうわけですが、この時、家康が幸村の背後に武田信玄のオーラを見て恐れおののくのが色々な意味でオカシイ。


 というように、戦国を舞台にしても平松節は平松節。
 正直なところ、幸村の豪快ヒーローぶりを描きたいのか、歴史ものとしても描きたいのか、この第一巻を読んだ限りではすっきりしないのが大きな欠点ではありますが、いんだよ 細けえ事は。
(いや、個人的にはバトル路線に行って欲しいんですけどね)

 いかにキャッチーなタイトルを付けようと、平松作品のジャンクな味わいは相変わらずですし、それで良いのです。
 これからも、いん細(ryスピリッツで突き抜けていただきたいものです。

 そのうち、どっかで見たような暗殺者やら忍者やら坊さんやらが出てきそうな気もしますが、それはむしろそれで

「戦国SANADA紅蓮隊」第1巻(平松伸二 日本文芸社ニチブンコミックス) Amazon
戦国SANADA紅蓮隊 1巻 (ニチブンコミックス)

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2010.01.21

「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第5巻 己の義を通す者たち

 大河ドラマの主役は兼続から龍馬に移ってしまいましたが(しかも同じ雑誌に連載されている龍馬ものが本書と同時発売)、こちらの兼続の活躍は、まだまだこれからが本番。「義風堂々!! 直江兼続」の第五巻であります。

 前の巻で謙信が没した越後を待つのは、上杉の家を二つに割っての跡目争い・御館の乱。
 上杉景勝と上杉景虎と…二人の争いは、しかし越後のみに留まることなく、景虎の生家である北条、そして上杉の宿敵たる武田をも巻き込んで、一国の内紛に留まらぬ規模となっていきます。

 この乱の緒戦でイニシアチブを取ったのは、北条と武田を味方につけた景虎ではありますが、もちろん、己の主君であり、また兄のように慕う景勝の窮地に黙っていられる兼続(与六)ではありません。
 与六が選んだ起死回生の一手…それは、槍持ち一人を連れ、飄然と武田の本陣に赴くことでありました――謙信の装束を身にまとって。

 この御館の乱において、初めは景虎側だった武田勝頼が、黄金一万両で買収されて景勝側に鞍替えした、というのは「甲陽軍鑑」などに見られるエピソードですが、本作ではその使者となったのが与六という設定。

 そして、与六と勝頼、快川紹喜の、男と男の会談となるわけですが…これが実に気持ちの良い、爽快なエピソード。
 それぞれ立場思惑の違いはあれど、義を抱くという点では同じ男と男。そんな奴らが酒を酌み交わせば、通じぬ想いなどない――

 時代錯誤? いやいや、王道はいつの時代も変わらないのであります。
(特に与六の「もう一杯じゃ!」は胸の熱くなるような痛快な台詞でありました)

 そして、勝頼と与六を――共に、偉大な父を持ち、また周囲の環境と運命に翻弄されながらも、己の義を通す者として描いてみせたのも、なかなか興味深いところです。

 さらに言ってしまえば、彼らの中に、名作「花の慶次」と本作の関係が重なってくる、というのはこれは穿ちすぎかもしれませんが…

「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第5巻(武村勇治&原哲夫&堀江信彦 新潮社バンチコミックス) Amazon
義風堂々!!直江兼続前田慶次月語り 5 (BUNCH COMICS)


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2010.01.20

「影の剣 風の忍び六代目小太郎」 修羅焼き尽くす上忍の火焔

 新年を間近に控えた江戸で、侍ばかりを狙う辻斬りが現れた。人を三つ胴に斬るその技に、伊織ら風魔一族は、化外の存在を感じ取り、警戒を強める。が、謎の辻斬りの魔の手は伊織の親友である柳生十兵衛にまで及んでしまう。恐るべき影の剣の遣い手の正体と目的とは…

 江戸の平和を密かに護る風魔の活躍を描く「風の忍び 六代目小太郎」シリーズの第三弾が刊行されました。
 表の顔は暇を持て余す小普請組の若者、しかしてその実体は、徳川家康から江戸の守護を託された風魔小太郎の名を継ぐ六代目小太郎こと風間伊織と、仲間たちの活躍を描く忍者アクションの快作シリーズであります。

 今回、伊織たちの前に現れるのは、侍ばかりを三つ胴に斬る謎の辻斬り。
 俗に人の身体を横に真っ二つに斬るのを二つ胴と言いますが、今回江戸に現れた辻斬りは、それよりももう一つ多く斬るということになります。
 動かぬ身体を二つにするのですら難しいものを、生きたまま、それも侍を相手に三つに斬るというのは、到底常人のできる技ではない…かくて、江戸を化外から守る風魔の出番ということになります。

 これまでのシリーズでも、瞬間移動と見紛う移動術を使う忍びや、あらゆる年齢・容貌に姿を変えるくノ一などと戦ってきた伊織ですが、今回の敵も奇怪さでは勝るとも劣らぬ強敵。
 常人の及ばぬ三つ胴を可能とする技は、忍法+剣法のまさに「影の剣」――伊織とは退屈仲間(?)でありながら、剣技においては当代随一の十兵衛に苦杯を嘗めさせたその技に挑む伊織…これまで同様、今回も痛快な忍者アクションを堪能させていただきました。

 そして、このシリーズの優れた点は、単に登場する忍法が面白いとか、アクション描写が巧みという点にとどまりません。
 本シリーズに登場する敵忍者は、いずれも、平和となった世に容れられず、その力を周囲に振るうことでもってのみ、自分の存在を示すことができる者たち。
 それに抗するのは、彼らと同様、戦国時代からの技を今に受け継ぐ風魔たち――つまり、ある意味同族たる者たちが相争う点に、本シリーズの基本構造があります。
 いわば戦国の亡霊とも言うべき彼らを救うことができるのは、道は違ったものの、彼らの苦しみを知り、理解する者のみ…本シリーズが忍者同士の死闘を描きつつも、決して殺伐としたもののみで終わらないのは、この構造ゆえでしょう。

 本作の「敵」は、そんなこれまでの化外の忍びとは少々趣を異にする存在ではあるのですが、しかし、太平の世では存在を許されない修羅を抱えた点では同じ。
 六代目小太郎がその力を振るう時に背負う上忍の証の火焔は、その修羅の業を焼き尽くすためのものなのであります。


 そんな本作において唯一不満があるとすれば、立ち位置としては実は「敵」と同様のところにあったにもかかわらず、十兵衛が途中で物語からフェードアウトしてしまうことですが…これは、彼の物語はまだこれから、ということなのかもしれません。
 その点も含めて――そして何よりも今や数少ない忍者アクションの快作として、今後もまだまだ楽しみなシリーズであります。


 しかし、小野家の皆さんの可愛らしさは一体どうしたことか。特に次郎右衛門の萌えキャラっぷりは異常。

「影の剣 風の忍び六代目小太郎」(柳蒼二郎 学研M文庫) Amazon
影の剣―風の忍び六代目小太郎 (学研M文庫)


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2010.01.19

「山風短」 第一幕「くノ一紅騎兵」連載開始!

 「Y十M 柳生忍法帖」完結からいささかの間をおいて、せがわまさき先生+山田風太郎先生の作品が三度の登場となりました。
 「月刊ヤングマガジン」誌の今月号から連載の始まったそのタイトルは「山風短」――その意味するところは山田風太郎短編、今度は山風先生の短編を漫画化していこうという企画であります。

 その栄えある第一弾として選ばれたのは「くノ一紅騎兵」。現在ではちくま文庫の「忍者六道銭」に収録されている作品です。

 舞台となるは関ヶ原の戦の直前、京の傾城町。傾城屋・扇屋を訪れた前田咄然斎、上泉主水、岡野左内、車丹波守(おお、「叛旗兵」!)と千坂民部という、上杉家ゆかりの豪傑たちの前に現れたのは、主人の養女となったという美少女・陽炎。
 千坂たちを窺っていた隠密の人質にされた陽炎は、しかし、見事な体術で隠密を取り拉いでしまいます。

 驚く一同に対し、陽炎は、自分を上杉家中に加えて欲しいと懇願するのですが、上杉は尚武――というより女嫌いの家風。
 にべもなく断られた陽炎が一同に見せたものは――と、ここで今回のサブタイトルである「大島山十郎」の意味が明かされて続く、となります。

 「バジリスク」「Y十M」と、せがわ先生の山風作品漫画化は、原作の内容を生真面目に再現しつつも、その絵の巧みさと、時折挿入されるプラスアルファの見事さで、原作読者をも感心させるものでしたが、それは言うまでもなく本作でも変わらず。
本作の主人公たる陽炎をはじめとして、直江四天王に千坂民部といった登場人物のビジュアルは、原作のそれを見事に再現したものでした。
 野暮を承知で原作を引用すれば――「霞のような眉、星がまたたいているかと思われる双眸、紅もつけていないのに露にぬれた朝の花のような唇」という陽炎の描写を、見事に具現化しているのです。

 それにとどまらず、今回のプラスアルファとしては、原作では比較的地味だった陽炎が隠密を取り押さえるシーンを、(それまでが静かな展開だっただけに)目の覚めるようなアクションで見せてくれるのも嬉しい。
 このあたりの緩急のつけ方は、さすがと言うべきでしょう。

 というわけで、今回も今後の展開に全く心配なさそうな「山風短」 第一幕「くノ一紅騎兵」。
 この「山風短」は約半年で一つの作品ということながら、実は今回だけで原作の約半分を消化しているというのがちょっと気になりますが、これからいよいよ直江兼続に上杉景勝が登場し、物語が本編に入ることになります。
 ここは、せがわ先生がいかに原作を料理してくれるのか、楽しみにおとなしく待つとしましょう。


 にしても、約四十年前に「男の娘」を書いていた山風先生こそまさに恐るべし…

「山風短」 第一幕「くノ一紅騎兵」(せがわまさき&山田風太郎 「月刊ヤングマガジン」2010年2月号掲載)


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2010.01.18

「変身忍者嵐」 第27話「妖怪! 毒ぐもタランチュラ!!」

 呪いの箱に閉じこめられた嵐は、箱の弱点を見抜いて脱出、月の輪もタランチュラの手から逃れた。嵐は操られていた忍太夫らの術を解き、スフィンクスに深手を負わせる。里に帰ってきた大仙人の息子・源太夫に守りを任せ、スフィンクスを追う嵐たち。だが、忍太夫はタランチュラが化けていた源太夫に斬られ、最期の息でそのことを嵐に告げる。嵐はそこに現れたスフィンクスを倒し、術が敗れて復活した大仙人がタランチュラを撃退するものの、大秘巻天の巻を奪われてしまう。タランチュラを追い詰め倒す嵐だが、天の巻はメドーサの手に…ハヤテたちは天の巻を追って旅立つのだった。

 忍者大秘巻を巡る伊賀の戦いの後編。前編ラストで二大西洋妖怪の前に窮地に陥った嵐と月の輪ですが、あっさりとピンチから脱出…呪いの箱の四方に描かれた蜘蛛マークが怪しいと気付いて「嵐四方破りの術」(四方に衝撃波を出す技…?)で箱を粉砕する嵐はともかく、月の輪は謎の呪文で仙人の孫・千秋ともどもテレポートというすっ飛ばしぶりで、いやはや、この辺りは今にも続く東映特撮の伝統かもしれません。

 ここで月の輪はふっつりと姿を消してしまうのですが、嵐は休む間もなく操られた伊賀忍者たちと対決。もちろん相手にならず追い詰められた伊賀忍者のリーダー格・忍兵衛は自決しようとするのですが、これはたまらんと体から巨大蜘蛛が逃げ出したおかげで、正気に戻ります。
(ちょっとややこしいのは、タランチュラのみならずスフィンクスも蜘蛛を操ることで…あるいは、スフィンクスの操る蜘蛛のリーダー格がタランチュラなのかもしれません)

 その隙に大仙人を襲っていたスフィンクスも撃退し、里の危機を知って大仙人の息子・源太夫も帰ってきて迎撃体制は万全…と思いきや、見るからに怪しい源太夫。
 ハヤテはこのへん全くニブチンなので気付かないのですが、千秋が源太夫に飛ばしたはずの伝書鳩が届いていない(=源太夫は危機を知らない)というところから源太夫の正体に気付くという展開はなかなかよろしいと思います。
 ちなみにこの源太夫に化けているのはタランチュラの方。スフィンクスといい、人間に化けて神出鬼没な強敵コンビであります。

 今度はタランチュラが大仙人に迫り、その間にスフィンクスはハヤテと対決…ここで、スフィンクスの術でハヤテが地割れに呑まれたそのすぐ次の瞬間に、ハッハッハと笑い声も高らかに嵐が崖の上に立っているというのは、快傑ズバットを思い出す(もちろん嵐が先ですが)迷シーン。
 このシーンに限らず、西洋妖怪編に入ってからはハヤテの変身シーンがオミットされているため、嵐の登場シーンに微妙に不条理感が漂っているのはいかがなものか…まあ、時代劇ヒーローの定石ちゃあ定石ですが。

 さて、ここで何故か(本当に何故か)腹の獅子の文様が弱点と見抜いた嵐はスフィンクスの腹をブッスリと突き刺し――とはいえ、弱点でなくてもこれは普通死ぬ――そこで術が解けた大仙人も復活。
 せっかくのアラカンもこの後編ではほとんど寝たきりでしたが、復活してみればやっぱり強い。迫るタランチュラを軽々と撃退し、片腕をたたき落としてしまうのですから見事です。

 が、それでも天の巻を奪ったタランチュラも見事。結局あっさり嵐に倒されますが、死の瞬間に天の巻を魔女メドーサに託したのですからもって瞑すべし、でしょう(この辺りの呼吸は実に忍者ものしていてよろしい)。


 ちなみにスフィンクスは、「アバランダー、イバランダー」という謎の呪文を発するのですが、これって仮面ライダーの怪人・エジプタスの鳴き声(?)の「アバラバラバラ、エバラバラバラ」と関係が…あったら楽しいなあ。


前回と今回の西洋妖怪
スフィンクス
 「アバランダー、イバランダー」の呪文と共に様々な超能力を操る西洋妖怪。ワラ人形に込めた呪いで相手を自在に操る他、巨大蜘蛛を操ったり、水面を走る「ナイルの川渡り」といった術を使う。
 不気味な雲水に変身して忍者大秘巻を奪うため伊賀の里に出現。伊賀忍者たちを操り、呪いで百地大仙人を人事不省に追い込んだ。さらに嵐をエジプトの呪いの箱に閉じこめて苦しめるが、最後の対決ではワラ人形を手裏剣で叩き落とされた末、弱点である腹の獅子の文様に刀を刺され倒される。

タランチュラ
 スフィンクスの配下と思われる巨大な蜘蛛の西洋妖怪。口から吐く毒煙は溶解効果を持つ(らしいが劇中では不発)。百地大仙人の息子・源太夫に化けて里に侵入し、大秘巻を奪おうとするが、折悪しくスフィンクスが倒され術が破れたため、大仙人に片腕を落とされた末、嵐に追い詰められて斬られる。が、最後に大秘巻天の巻を魔女メドーサに託した。
 なお、月の輪との対決した際には、顔面に刀を刺された上に、あっさりと逃げられている。


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変身忍者 嵐 VOL.3 [DVD]


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2010.01.17

「機巧奇傳ヒヲウ戦記」 第03話「敵討ち!? 幕末英雄登場」

 父・マスラヲを求めて飛騨高山に向かおうとするヒヲウ一行。山中で風陣の襲撃を受けたヒヲウとシシは、槍遣いの浪人・原田に救われる。一方、マチの前には、マスラヲ譲りの銃で風陣の男を捕らえた浪人・才谷が現れる。同じ武士ながら全く異なる立場の原田と才谷だが、シシは原田の言葉に従い、敵討ちに逸る。そんな彼らの前に再び風陣が出現する…

 いよいよヒヲウたちが本格的に幕末の有名人たちと絡む第三話。タイトルの幕末英雄とは、言うまでもなくあの人ですが…

 その前に、アバンタイトルで描かれるのは桜田門外の変。
 言うまでもなく井伊大老が暗殺された大事件でありますが、しかしここで描かれるのは、突然変形して刺客を蹴散らす井伊の駕籠に、その仕掛けもろとも駕籠を吹き飛ばす巨大機巧――
 えええええ、と見ていてひっくり返る展開ですが、ここで機巧から現れ、風陣に協力しているのは何とマスラヲ…彼は「マツリとは世を治めること…」と呟くのですが…

 …と探し求める父がそんなことになっているとは露知らず、父が最後の手紙を送ってきた飛騨高山に向かおうとするヒヲウ一行ですが、その前に現れる二人の浪人。
 一人は、機巧もものとはせず、その槍でもって風陣を次々と蹴散らす豪の者、原田。
 そしてもう一人は、何とも武士らしからぬ飄々にして、マスラヲとも面識のある男・才谷。

 幕末ファンであれば一発でわかるでしょう、この二人の正体は原田左之助と才谷梅太郎(もちろんそのまた正体は…)。才谷さんはともかく(?)ここで原田が登場するとは! と驚かされます。

 もちろん、有名人を二人、わざわざ賑やかしのためだけに出してくる本作ではありません。
 本作での二人は、同じ武士でありながら、全く対照的な立場にあるものとして、ヒヲウたちの前に現れるのです。

 武士であることを重んじ(原田と言えばアレ、の切腹痕ネタも当然登場)、風陣に対する敵討ちを勧める原田と、生き延びることが大事と、それに否定的な才谷と――
 どちらの言うことも、それなりに正しい二人の大人の言葉の前に、ヒヲウ一行は迷うことになります。

 本作では、この場面に限らず、幾度となくヒヲウたち子供と、大人との立場・意見の違いが語られるのですが、今回は大人サイドにも相反する意見があることが示されることにより、それがより深化した形で描かれている…と言えるでしょうか。

 その意見を受けて、ヒヲウたちがどのような選択をするのか…その答えを出す前に、マユが人質に捕らわれるというピンチのまま、次回に続きます。


「機巧奇傳ヒヲウ戦記」(バップ DVD-BOX) Amazon


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2010.01.16

「ばけざる」 化猿、天下を騒がす!

 小田原北条家総攻撃を開始した豊臣秀吉は、その最大の障害を除くため、風魔狩令を発する。そんな中、異形の右足により忌み嫌われてきた青年・カエンは風魔小太郎の名を継ぐ。反撃のために秀吉暗殺を決意するカエンと風魔一族だが、その前には妖忍神君・百地丹波の影が…

 忍者ものの中で、伊賀に継ぐ人気を誇るのは、やはり北条家に仕えた風魔でしょう。
 特にその頭領・風魔小太郎は、伝わっている特異な風貌やその最期がある程度記録に残っていることもあり、ヒーローとしてであれ悪役としてであれ、しばしば顔を見せるお馴染みの人物です。

 本作はその風魔小太郎を主人公に据えた忍者アクション。絵柄的には原哲夫調、登場するキャラクターも小太郎や秀吉をはじめとして、石田三成、前田慶次郎、石川五右衛門、百地丹波と、さほど珍しい顔ぶれでもなく…と書くと、本作はよくある忍者アクション劇画と思われるかもしれません。
 しかしさにあらず、小太郎をはじめとする登場キャラクター造形や、細かな題材・描写の部分で独自色が強く、実にユニークな作品なのです。

 本作の題名「ばけざる」とは、六代目小太郎の名を継ぐ主人公・カエンの異名。
 生まれながらに猿の右足を持ち、それゆえに化猿=カエン=ばけざると呼ばれ、忌み嫌われてきた彼の設定(考えてみればずいぶんギリギリの設定ですが)もユニークですが、何よりも面白いのはその足を活かしたアクションなのです。

 猿が、もう一つの手のように足を使って物を掴んだり樹にぶら下がったりする姿はTVなどでご覧になったことがあるかと思いますが、カエンの技はまさにそれ。
 相手の腕を押さえる、武器をもう一本持つ…右足を第三の手として使うことが、忍びにとってどれだけのアドバンテージたり得るか、それを見事に本作はビジュアライズすることに成功しています。

 そしてそのカエンの仲間たち、そして挑む相手もまた、本作ならではの個性的なものばかり。特に五右衛門と秀吉の怪物ぶりは、本作ならではといえるでしょう。
(特に後者は、ある意味予想はつくのですが無茶すぎて――しかしタイトル的に面白い)

 さらにも一つ本作の特徴は、その奇妙なギャグセンスであります。
 単行本で各話の間に挟まるおまけカットでギャグをやるのはまだわかりますが、本作では、ドシリアスな展開が続く本編でいきなりポカッとギャグが挿入されるのが恐ろしい。

 内容も内容、絵柄も絵柄だけに、一歩間違えると色々台無しになるところが、ギリギリで踏みとどまっているところに、また不思議な味わいがあるのです。
(しかし、立ちすぐり居すぐりのシーンのギャグの危険球ぶりはスゴい)


 冷静に考えると、一種カルト的な作品なのですが、しかしそれだけに好き者にはたまらない本作。
 作者は本作が初単行本のようですが、今後もこの味わいでいって欲しい…というのはわがままでしょうか。

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2010.01.15

「よわむし同心信長 消えた天下人」 長次郎、信長を救う!?

 今日も小者の藤吉郎、そして頭の中の信長と事件解決に勤しむ南町奉行所同心・信藤長次郎。そんな彼(ら)が、隠れ切支丹絡みの事件に巻き込まれた。切支丹たちの指導者である伴天連・向井ジョアンが江戸に潜伏しているとの報を受け、探索に勤しむ長次郎だが、頭の中の信長が姿を消してしまい…

 文庫書き下ろし時代小説の主流と思われる奉行所もの、その中でも設定の奇抜さでは間違いなくトップクラスと思われる「よわむし同心信長」シリーズ、待望の第三巻であります。
 気弱な信長マニアの町方同心の頭の中に、信長の精神が宿るという途方もない設定で度肝を抜いてくれた本シリーズですが、今回、「よわむし信長」こと信藤長次郎が挑むことになるのは、隠れ切支丹にまつわる事件。

 信長公とキリスト教は、言うまでもなく縁の深いもの。それを背景として、長次郎と信長にキリスト教絡みの事件を扱わせるというのは、なかなかうまいアイディアと言えるでしょう。

 そして今回の趣向はそれだけではありません。副題にあるように、常に長次郎の頭の中にいて彼を叱咤激励してきた信長の声が、ぱったりと聞こえなくなってしまうのであります。
 しかもそれが、長次郎たち自身が下手人として疑われた事件の真っ最中という最悪のタイミング。頼もしい後ろ盾なしに、長次郎がいかに苦境を切り抜けるか…これは大いに気になるところです。

 さらにさらに、最終エピソードでは、何と信長の危機を救うため、長次郎が奔走するという意外な展開。本能寺の変の真実を記したという書物に描かれた、信長の正体とは…と、時代ものの中に歴史ミステリという入れ子構造的な展開で、長次郎が信長の濡れ衣を晴らすため活躍するというのは、なるほど、こういう展開もアリか! と唸らされました。


 が…アイディアは良いのですが、それを活かす物語の展開、ミステリとしての仕掛けは正直なところ今ひとつ――
 個々の事件のトリックがかなり初歩的もしくは杜撰なものであって、長次郎が、信長が難事件に立ち向かうというコンセプトを十全に活かしていると言い難いのが何よりも勿体ない。

 最終エピソードにおいても、信長の濡れ衣を晴らすための手段があまりにも真っ当過ぎる…というよりそんなことも考えていなかったのか! 的なものなのが何とも。
(そもそも、架空の書物に記された信長の「真実」を否定するのが、信長本人の証言というのは反則スレスレというか完全にアウトというか…)


 結果的に大変厳しい評価になってしまいましたが、それだけ私が本シリーズに期待し、楽しみにしていることの裏返しと思っていただければ。
 他に類のない大変ユニークな設定の物語だけに、そこに小説本来の面白さが加わればまさしく鬼に金棒と思うのですが…

「よわむし同心信長 消えた天下人」(早見俊 コスミック・時代文庫) Amazon
よわむし同心信長―消えた天下人 (コスミック・時代文庫)


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2010.01.14

「風と雷」 漫画と歌舞伎と五右衛門と

 大坂を騒がす義賊・石川五右衛門は、天下を盗った豊臣秀吉に敵愾心を燃やし、聚楽第に忍び込んで秀吉最愛の茶々と結ばれる。秀吉の最も大事なものを奪ったと勝ち誇る五右衛門に、秀吉が語る驚くべき真実。果たして五右衛門の選択とは…

 偶然か、はたまた何かの理由があるのか、2009年は、石川五右衛門を主人公とした作品が幾つも発表された年でした。(その傾向は続く2010年も同様であります)

 その一つが、2009年の夏に、市川海老蔵により新橋演舞場で演じられた新作歌舞伎「石川五右衛門」であり、それを、歌舞伎と同じく樹林伸(地球は滅亡する! のあの人)を原作に、そして「哲也 雀聖と呼ばれた男」の星野泰視の作画で漫画化したのが本作です。

 物語は、天下人となり、この世に手に入らぬものなどない秀吉に、己が身一つで挑む五右衛門の姿を描いた一種のピカレスクロマン。
 五右衛門と秀吉というのは、それこそ本作の源流であろう「楼門五三桐」の頃からの宿敵同士ですが、本作ではそこに茶々(淀の方)を絡めることにより、二人の男の立場を浮き彫りにしているのが目を引きます。

 そして、そこから本作最大のサプライズである、秀吉と五右衛門の因縁へと視点が移り、ラストの五右衛門の選択に繋がっていくという展開も、なかなか楽しめました。
(この辺り、目力の効いた星野氏の絵柄がよくマッチしていたと思います)


 が、正直に言えば、秀吉のキャラ立ちが圧倒的だった分、五右衛門や茶々のキャラクターが今ひとつだった…という印象はあります。
 特に五右衛門が秀吉に燃やす敵愾心の理由が、サラッと描かれすぎていることもあって、五右衛門の行動原理が今ひとつはっきりしないのは、何とも残念です。

 この辺り、分量的な制約もあったかと思いますが、何よりも、漫画と、舞台上の役者の存在感である程度キャラクターを描くことのできる芝居との、メディアの違いから来るものであったようにも感じられます。
 さらに言ってしまえば、新作といいつつ、これまでの五右衛門ものの要素を無造作に(と見える)取り込んでいるのは、ちょっと違和感があります。

 と、わかったようなことを言いつつ、元の歌舞伎を見ていないのがなんとも歯がゆいのですが――


 しかし新作歌舞伎と漫画のコラボレーションというのは、やはり実に刺激的で、それでいて不思議と違和感のない組み合わせ。
 これからもこうした組み合わせはあってもいいな、とは感じたところです。

「風と雷」(星野泰視&樹林伸 講談社モーニングKC) Amazon
風と雷 (モーニングKC)

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2010.01.13

「ICHI」第3巻 市の抱えた闇

 映画の方はずいぶん前のこととなってしまいましたが、こちらは独自路線で突き進みます漫画版「ICHI」。その第三巻であります。

 長州のシリアルキラー・響と、彼と行動を共にする仮面の剣客・十内を巡り、講武所や試衛館の剣士たちが入り乱れての争いを描いた第二巻…
 それに続くこの巻で描かれるのは、前半で響たちとの決着、後半は市の壮絶な過去であります。

 次々と強行を繰り返す響に挑むのは、和宮護衛のために集った伊庭八郎・土方歳三・沖田総司…
 と、第二巻では有名剣豪組が目立ってしまい、市の存在感がすっかり薄くなってしまったのが気になりましたが、それは溜めであったらしく、一気にこの巻では市が物語の中心に位置することになります。

 響と十内との市の戦いを通じて描かれるのは、単に市の卓越した剣技、活躍のみならず、それを目の当たりにした剣士たちの想い。
 伊庭・土方・沖田、そして十馬…それぞれ、尋常ならざる腕前を持つはずの彼らが、自分たちをを遙かに上回る持つ市の技を見たこと――それが、その後の彼らの生き方に少なからぬ影響を与えたというのは、一つの伝奇的解釈として、実に面白い趣向と感じます。

 そして、それに続いて描かれるのは、市の過去の物語――
 ここに来て、ついに市が物語の中心となりましたが、ここで語られる内容はまことに重く、辛いものです。

 悪趣味と言えば悪趣味、目を背けたくなるような内容(と言っても、よくある展開ではあるのですが…)ではありますが、しかし、市というキャラクターを語るには、これほどの闇を必要とするということでしょう。

 この闇を抜けた先の物語に何があるか、それはまだわかりませんが、光があることを祈りましょう。

「ICHI」第3巻(篠原花那&子母澤寛 講談社イブニングKC) Amazon
ICHI 3 (イブニングKC)


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2010.01.12

「退屈姫君 恋に燃える」 楽しい大人の夢物語

 またも退屈を持て余していためだか姫の元に持ち込まれた天下の一大事。冷飯の一人で将棋修行中の榊原琢磨が、遠州横隅藩の末娘との身分違いの恋に苦しんでいるというのだ。俄然、この恋を成就させてみせると燃えるめだか姫だが、横隅藩に伝わる家康より拝領の水無瀬駒を巡り、田沼意次が奸計を巡らせる。果たして姫は横隅藩を救い、二人の縁結びに成功できるか!?

 「退屈姫君」シリーズ第三弾は、なかなか刺激的なタイトルの「退屈姫君 恋に燃える」。すでに人妻のめだか姫が恋に燃えるとは、これはけしからんと思えば、恋は恋でも他人の恋。身分違いの大恋愛に苦しむ美男美女を救うため、縁結び役を買ってでる…という内容であります。

 本人は現在(退屈を除けば)大いに幸せとはいえ、言ってしまえば政略結婚で輿入れしためだか姫。恋を知らないまま嫁いでしまった彼女にとって、人の恋物語というのは実に甘く甘く見えるもの。
 折からの退屈も手伝って、お馴染みくノ一お仙や諏訪、天童小文五や冷飯連中と共に、この恋を成就させるため、実に頼もしくもおせっかいな活躍を始めることとなります。

 さらにそこに絡むのは、カップルの片割れ・萌姫の家に伝わる水無瀬駒を巡る騒動であります。
 安土桃山時代の公家・水無瀬兼成の手になるという名駒中の名駒として知られる水無瀬駒。その駒を、神君家康が大名たちの恩賞(エサ)として用いていたという説を踏まえ、本作では田沼意次が色(実に悪趣味な!)と欲が絡んだ無理難題を吹っ掛けてくるという寸法。

 しかし、もちろん善男善女が泣かされることはないこのシリーズ、実に見事に伏線がピタッとはまってのクライマックスの大逆転は、毎度毎度のことながら痛快の一言であります。


 題材的に、これまでのシリーズに比べると些かスケール感という点では劣ること、また、下ネタがこれまで以上に横行すること(本当にこのシリーズの下ネタは、誰得としか思えませんが…)というマイナス点はありますが、それを考慮に入れても、やはり本作はまことに楽しい大人の夢物語であることは間違いありません。

 ちなみに、本作で幸せになるのは、若いカップルだけではありません。
 このカップルの片割れであり、将棋の天才(そして絶世の美形)の榊原琢磨に対し、様々な嫉妬から一度は妨害の挙に出るのが兄弟子の天童小文五。シリーズのレギュラーではり、前作では姫を守ってまさかの大金星を挙げた彼が、本作では器の小さい悪役になってしまうのか――と思いきや、さにあらず。
 彼が懊悩の果てに到達した境地の清々しさたるや、道こそ違え、己の往く道に迷いを持ったことのある大人であれば、誰もが笑顔で頷きたくなるものであります。


 しかし、誰よりも幸せなのは、やっぱりめだか姫。最後の最後で、本作のタイトルに偽りなしであることを証明してくれたのには…いやはや、ごちそうさま、と言うほかありません。

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2010.01.11

「変身忍者嵐」 第26話「死ぬか嵐! 恐怖のスフィンクス!!」

 大魔神像の手がかりを求めて伊賀の里に向かうハヤテたち。だが、里に隠された忍者大秘巻を狙ってスフィンクスが一足早く里を襲撃、百地大仙人も呪いに倒れてしまう。百地の孫・千秋も捕らえられ、大魔神像の生け贄にされかけた時、嵐が見参。しかし、エジプトの呪いの箱に閉じこめられてしまう。さらに千秋を救った月の輪の前にはタランチュラが…果たして嵐と月の輪の運命は!?

 この回から、日本中の忍者を支配できるという忍者大秘巻を巡る争奪戦がスタート。その開幕を飾る前後編は、大御所をゲストに迎えて豪華な内容となっています。

 その大御所とは、嵐寛寿郎! 鞍馬天狗役で大活躍した、元祖時代劇ヒーローとも言うべきアラカンが、「嵐」に登場であります。
 本作では、伊賀の里の総帥であり、タツマキの師匠である百地大仙人役として出演。さすがに出番は少ないものの、タランチュラの操る毒蜘蛛を一喝で粉砕したり、スフィンクスの人間体を、素手で軽々と取り拉いでしまう姿は、さすがの一言です。

 ちなみにこのスフィンクスの人間体、えらく怪しくインパクトのある雲水(スフィンクスが雲水になるというセンスもたまらない)だと思ったら、これがまた演じるのは江見俊太郎。
 もうこの対決だけで、満足満足であります。

 と、今回はゲストのみならず、内容の方もかなりの盛り上がり。
 これまで嵐たちと共に戦ってきた伊賀忍者の本拠地攻略にふさわしく、西洋妖怪もスフィンクスとタランチュラの二人が登場します。

 特に第21話で名乗りを上げた西洋妖怪第一陣最後の一人・スフィンクスは、強力な呪いの力で伊賀忍者を一人で壊滅させ、下僕に変えた上、大仙人も人事不省に追い込んだ強敵。ラストでは全ての超能力を封じる呪いの箱に嵐を閉じこめて水底に葬ってしまうのですから…

 面構えこそものすごいおっさん顔ですが、マッシブなボディの造形も格好良く前後編を大いに盛り上げてくれそうです。
(何故か呪う時に和風の藁人形を用いるのはご愛敬)

 もっとも、その(たぶん)配下であるタランチュラの方は作中で一、二を争うくらいひどい造形なのですが、それはさておき、ラストで嵐と別行動を取った月の輪の前に立ちふさがるというのも実に燃える展開。

 必死に探していた大魔神像が、向こうからホイホイと姿を現してしまうという展開は何ですが、しかし、嵐たちの運命は、忍者大秘巻のゆくえは、二大西洋妖怪との決着はと、実に先の展開が気になってしまう理想的なヒキで次回に続きます。


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2010.01.10

「機巧奇傳ヒヲウ戦記」 第02話「見よ! これが機巧だ」

 一旦は起動した炎も動力切れしてしまい、ヒヲウたちは隣村に助けを求めに行く。が、隣村はさる貴人の来訪に追われ、なかなか取り合ってもらえない。収まりのつかないシシとマチは村に向かい、村を襲った一団・風陣の男と出会う。親を人質に取られたシシは炎の隠し場所に男を案内するが、風陣は炎に火をかけようとする。そこにかけつけたヒヲウは隠されていた機巧を動かし、炎を山車から巨大な人型に変形させて難を逃れるのだった。ヒヲウたちは村を離れ、炎と共に父を訪ねる旅に出るのだった。

 さて、「機巧奇傳ヒヲウ戦記」第二話は、前回を受けての序章後編といった趣の内容。
 第一話のラストでついに起動したものの、しかし本来の性能を発揮できず、その場を逃れるのがやっとだった炎が、真の力を発揮するまでが描かれます。(この辺りもロボットものの定番パターンではあります)。

 それと並行して描かれるのは、前回、ヒヲウたちの住む村を襲った謎の忍びの集団の正体の一端であります。
 その集団――風陣は、実はヒヲウと同じ機の民。しかし機巧を武器として使う風陣は、自分たち以外の機の民を全て滅ぼそうとしていたのでした。

 ここで考えなければいけないのが、機の民の掟であります。
 第一話の感想で触れそびれましたが、長老の口から語られたその掟とは「機巧は力にあらず、ただマツリの為にもちうべし」というもの。第一話では、少年(それが実は風陣の若頭領・アラシだったのは皮肉ですが…)を追いかける博徒を、機巧でもって撃退したヒヲウを叱るためにこの掟が引き合いに出されることになります。

 この一見何ということもない素朴な掟の意味が、本作全編を通じて問い直されるわけですが、それはもちろん今後のお楽しみ。
 ただ個人的に極めて面白いと感じるのは、この掟の中に、社会における機巧=テクノロジーの在り方という視点が提示されていることです。
 原作の會川昇氏は、時折その作品の中でこの視点を提示してくるのですが――最近、それが最もはっきりと示されたのは「大江戸ロケット」であります――それを本作のような作品で描いてみせるところに、氏の面目躍如たるものが感じられます。
(さらに言ってしまえばこの掟、「神にも悪魔にもなれる力を持った時、人はどうするか?」というあの問いかけのリプライズでもあるのでしょう)

 そんなある意味時代劇離れした視点を用意する一方で、時代もの・歴史ものとしてうまくネタを投入してくるのもまた本作の楽しいところ。
 この第二話に登場するのは、隣村に立ち寄った曰くありげな貴人。ただ者ではない身のこなしの供を連れたその正体は――という興味を引っ張っておいて、そこからラストに、ヒヲウたちが窮地を脱する手段として繋げてくるのがまたうまい。
 実はこの貴人、実は降嫁する皇女和宮の一行に加わる神楽師(供は黒鍬者=忍者!)。その一行に加わることで、さしもの風陣も手出しを控えざるを得ないという展開には、そうくるか! と唸らされた次第です。


 さて、次回はいよいよあの人物が登場。いやあの人物も? というわけで、いよいよ物語は本格的に動き出すこととなります…


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2010.01.09

「大帝の剣」第4巻 激突、怪物vs怪物

 漫画版「大帝の剣」も順調に巻を重ねて、この第四巻より原作小説第二部の「妖魔復活編」に突入。
 新章突入に伴い、万源九郎を食いかねない強烈な、原作でも印象的だった連中が、巧みにビジュアライズされて登場します。

 その新キャラクター一番手は(正確には前の巻から登場していますが)、人と熊と犬が合体した怪人・犬権三。

 凶暴な熊と死闘の末に相打ちとなった猟師・権三と愛犬、三つの体が、謎の怪生物により一つに結びつけられた奇怪なキメラともいうべき犬権三は、ある意味――というより完璧に――時代ものの枠を踏み出した存在ですが、その怪物が、渡海氏のどこか無国籍チックな絵柄にはよく似合っているのです。

 そして、思わぬなりゆきからこの怪物と対決することになるのが、もう一人の怪物と言うべきかの剣豪・宮本武蔵その人であります。
 こちらも原作では相当に個性的なキャラだっただけに、果たしてどう描かれるかと楽しみにしておりましたが、あら、意外と普通…と思ったのは、彼が刀を抜くまで。

 一度仕合に及び、刀を抜いた途端、それまでのむしろ沈鬱とした表情が一変して――というのは、原作のイメージ通りで、こちらもなかなかのものです。

 渡海氏の画は、漫画というより絵物語的味わいが強いのですが、この武蔵と、権三に追われる才蔵が対面する場面など、その感覚をむしろ逆手に取ったような表現をした部分もあって、おっ、と思わされました。

 さてこの巻は、才蔵の策により権三と武蔵が激突したところで幕となるのですが、この二人の桁外れの怪物の戦いの行方がどうなるか――
 原作を既に読んでいる私にとっても、それが画として描かれるのが楽しみなのです。

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2010.01.08

「陰陽ノ京」 優しい陰陽師が示す陰陽の道

 賀茂忠行の子で文章生の慶滋保胤は、安倍晴明から、外法師・弓削鷹晃の素性を調べるよう依頼される。鷹晃が、人々を救うため竜に変じて盗賊を倒したため追放されたことを知る保胤だが、盗賊の残党は、鷹晃に強力な呪いをかけていた。鷹晃を救うため、保胤は術者に戦いを挑む。

 「陰陽ノ京」シリーズの第一弾であり、作者のデビュー作であります。このシリーズは、以前から紹介しようしようと思いつつしそびれていたのですが、先日、久方ぶりにシリーズ最新作が刊行されたこともあり、良い機会ですので取り上げたいと思います。

 陰陽師ブームのまっただ中である2001年に刊行された本作は、いわゆる陰陽師もののほとんどがそうであるように、平安時代を舞台とした作品。しかも、陰陽師ものの常連である安倍晴明が重要なキャラクターとして登場します。
 その点からすれば、本作は典型的な陰陽師ものにも思えるかもしれませんが、しかし、実際に読んでみれば、本作は他の陰陽師ものとは些か異なる印象を与えてくれます。

 その一番の理由は、主人公・慶滋保胤の人物造形でしょう。
 安倍晴明の師である大陰陽師・賀茂忠行の子であり、自身も陰陽道の才を持ちながら、姓を変え、文章生の道を選んだ保胤。
 糸目で穏やかな表情を崩さず、誰に対しても敬語をもって柔らかく接する保胤の特異なキャラクターは、どこか超然としたところのあるその他の陰陽師ものの主人公と、一線を画するものがあります。

 その彼が今回挑むのは、己の持って生まれた力が原因で周囲の人々から疎まれ、京に流れてきた外法師(フリー陰陽師)の青年・鷹晃を巡る事件。
 これはクライマックスの内容にも関わるのであまり詳しくは述べませんが、保胤にとって、力ある故に孤独を選んだ、選ばざるを得なかった鷹晃は、もう一人の自分とも言うべき存在であります。

 その彼を救うために、自ら禁じていた力を振るう保胤ですが、しかし、彼らは決して孤独な存在ではありません。
 保胤を、鷹晃を慕う仲間たち、女性たちが、力を合わせて敵に立ち向かう決戦は、実は案外珍しい陰陽師たちによる集団バトルの形式――そしてこれも本作を他の類作と隔てる特長であります――を取りつつ、人を人たらしめるもの、人と人との優しい絆というものを感じさせてくれるのです。

 この世は陰だけでも陽だけでも成り立たないというのが陰陽道の根本概念とすれば、保胤と、彼の仲間たちの戦いは、それを体現するものと言えるでしょう。
 陰陽の術を操るのみならず、その行動でもって陰陽の道を示す――本作がユニークで、優れた陰陽師ものと感じられるゆえんです。

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陰陽ノ京 (電撃文庫)

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2010.01.07

「なまずランプ」第1巻 大江戸クリフハンガー走る

 ちんけなごろつきの平次郎は、無実の罪で牢に入れられ、処刑の朝を迎える。苦し紛れに牢内で死んだ男の言葉を口走ったおかげでその場は助かったものの、江戸城御金蔵破りの犯人を探す羽目に…自分の身代わりに牢に入れられた妹を救うため、平次郎は江戸を駆ける。

 どこにどんな面白い作品が待っているかわからない…ということは、このブログを始めてから幾度となく感じています。
 書店で偶然単行本を手にした本作もその一つ。
 安政六年、大地震から四年後の江戸を舞台に、不運なごろつき・平次郎が、次から次へと降りかかる災難を口八丁手八丁でくぐり抜けつつ、江戸城御金蔵破りの犯人を追う、かなりユニークな時代サスペンスであります。

 堅固なものの代表格のような江戸城御金蔵ですが、実は史実でもこの安政年間に破られております。
 それは、幕末における幕府の権威の失墜を象徴する事件…と述べたのは岡本綺堂だったかと思いますが、本作では上の連中のことなど知ったものかは、大事件に巻き込まれた平次郎が、文字通り命懸けで奔走することになります。

 その平次郎の運命の変転たるや、冒頭からめまぐるしいの一言。
 岡っ引きにハメられて人殺しの罪で牢に送られ、死罪の裁きを受けて首の座に引き出され、そこで牢死した男の遺した謎の言葉を思い出してかましたハッタリで首が繋がったかと思えば、妹を身代わりにして牢から出て犯人を捜すことになり――
 これが本当に序の口。この後も次から次へと危機に陥る平次郎の姿は、まさにクリフハンガーという言葉がピッタリであります。

 そしてこの平次郎が、人並み優れたところが何もない、むしろ完全にダメ人間であるところが、逆に物語を盛り上げます。
 とにかく不運なダメ人間(縁談が決まった妹を身代わりにして出獄するくらいダメ人間)が、波瀾万丈に過ぎる運命に如何に立ち向かってみせるか――ヒーローでないからこそ描けるドラマが、ここにはあります。


 冒頭で設定されたタイムリミットがあっさりリセットされたり、サブタイトルの「都市伝説」が今一つ意味不明であったり(尤も、これはこの先の展開待ちでしょう)と、ちょっとひっかかる部分がないわけではありませんが、そんな小さなことを気にしている場合ではない大江戸クリフハンガーたる本作。

 最近の時代漫画としては――いや最近の時代小説と比べても――実にユニークな内容の作品であり、大いに好感が持てます(考証にもかなり力が入っている印象ですね)。

 これは確かに先が読めない…いや先が読みたくなる作品であります。

「なまずランプ 幕末都市伝説」第1巻(たかぎ七彦 講談社モーニングKC) Amazon
なまずランプ 1 (モーニングKC)

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2010.01.06

坂本龍馬 声優リスト

 今日は「龍馬伝」放送開始(本当は「PEACE MAKER」ドラマ化)記念の小ネタであります。
 先日の「龍馬伝」放送開始により、龍馬俳優に福山雅治氏が加わったわけですが、さて、それでは龍馬声優はどんな顔ぶれなのだろう? とtwitter上で話題が出たので、wikipediaを中心にちょちょっと調べてみました。
 以下、アニメ・ゲーム等で坂本龍馬を演じた声優のリストです。

井上和彦 「機巧奇傳ヒヲウ戦記」「新撰組異聞 蒼き狼たちの神話」(ドラマCD)
井上真樹夫 「浮浪雲」
江原正士 「PEACE MAKER鐵」
遠藤章史 「修羅の刻」
小野大輔 「風雲幕末伝」「剣豪ZERO」(いずれもゲーム)
櫻井孝宏 「新選組群狼伝」「カオスウォーズ」(いずれもゲーム)
佐々木望 「サムライガン」
関俊彦 「お~い! 竜馬」(青年期)
高山みなみ 「お~い! 竜馬」(幼年期)
三木眞一郎 「The Time Walkers 2 坂本龍馬」(朗読CD)
山寺宏一 「幕末機関説 いろはにほへと」
若本紀昭 「まんが日本史」

 ざっと十数名、人数として多いか少ないかは意見がわかれるかと思いますが、なかなか興味深い顔ぶれかと思います。

 まことに恥ずかしながら、私も全作品を実際耳にしてチェックしてみたわけではないですが、私の耳にした範囲で、また顔ぶれを見た上で考えると、一種最大公約数的な龍馬像が浮かんでくるように感じます。

 特に、井上和彦、江原正士、関俊彦、山寺宏一の、各作品で主役級(レギュラーキャラ)の龍馬を演じた各氏を見るとそれは顕著なのですが、声質的に
・穏やかさ
・飄々とした味わい
を感じさせるという共通点があるのは、実に面白い。
 確かに、龍馬という人物には、武士でありながら武張ったところがなく、どこか人より遠くを見ているような印象がありますから――

 もちろん絵や音は付くとはいえ、基本的に声のみでその人物を表現しなければいけない声優だからこそ、よりその人物のイメージが凝縮されて現れる…というのは言い過ぎかとは思いますが、後世の人間が、歴史上の人物をどう見ているかという一つの表れとして考えることができるのではないでしょうか。

 アニメはどうかわかりませんが、おそらく今年はゲーム・CDなどで龍馬関連作品が出るのではと予想しています。これからどのような龍馬声優が登場するのか、楽しみにしているところです。


 ちなみに若本紀昭というのは、若本規夫氏の昔の芸名。まあ、時期的にはヒロ兄やシャピロをやっていた頃ではありますが…

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2010.01.05

「AKABOSHI 異聞水滸伝」第2巻 挑む相手は梁山泊

 義賊「替天行道」の一員・戴宗が活躍する一大アレンジ水滸伝「AKABOSHI 異聞水滸伝」の第二巻であります。
 不安が的中して連載はアレしてしまいましたが、やっぱり単行本でまとめて読んでみると面白いんだよなあ…と今更ながらに感じる作品であります。

 第一巻では、王進を仲間に引き入れる任務を与えられた戴宗が、王進を守るため林冲と組んで関勝と対決するまでが描かれますが(第二巻では冒頭のみの登場となった王進ですが、林冲にそれでもやっぱりひたすら格好良い)、この巻では、梁山泊を奪取するため、戴宗と林冲が内部に潜入することに。そこに怪力美少女の扈三娘が絡み、梁山泊の頭領たちとのバトルあり、首領・王倫の暗躍ありという展開となります。

 キャラクター設定・描写の点で、少年漫画らしい豪快なアレンジが施されている本作ですが、実は基本的なストーリー展開自体は原典準拠。王進・林冲の受難から続き、林冲の梁山泊入り(そして梁山泊奪取)というのは、原典通りの順番であります(その後に晁蓋の生辰綱奪取がほのめかれておりますし)。

 もちろん、そのディテールは本作ならではの超アレンジの連続。原典ではこの段階では登場していない戴宗はもちろんのこと、扈三娘も登場して…というのはさておき、入山試験のため彼らが挑むこととなる梁山泊初期頭領――朱貴・杜遷・宋万――のパワーのインフレぶりが潔いほど凄まじい。
 朱貴はともかく、杜遷と宋万なんて、王定六ですら変換できるグーグル日本語入力でも変換できないのに…という各方面に失礼な表現はさておき、梁山泊で目立たないことでは筆頭格だった二人が、林冲をバトルで苦しめることとなるとは、ある意味水滸伝ファン瞠目の展開であります。

 そんなアレンジの一方で、随所に折り込まれるギャグ描写もまた楽しい。本来であれば殺伐としたものになり過ぎる、あるいはバトルだらけになりそうな内容を、メリハリの効いたものとする効果を挙げているのは評価できます。
 何よりも、結構テンポが良くて楽しいのです(虎(?)と化した林冲の咆哮とか大好き)。


 ――尤も、こうした本作ならではのアレンジは、いずれも裏を返せば真面目な水滸伝ファンからは眉をひそめられかねないものであるのは事実。本作が短命に終わった理由の一つに、その辺りもある…というのは言い過ぎですが、諸刃の剣となってしまっていたのは間違いのないところでしょう。

 と、湿っぽいことを今言っても仕方がない話。残すところあと一巻、戴宗vs梁山泊の戦いの行方を、素直に楽しむといたしましょう。

「AKABOSHI 異聞水滸伝」第2巻(天野洋一 集英社ジャンプコミックス) Amazon
AKABOSHI-異聞水滸伝 2 (ジャンプコミックス)


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2010.01.04

「変身忍者嵐」 第25話「恐怖怪談! 魔女ゴルゴン呪いの城!!」

 霧ヶ峰の大魔神像に向かうハヤテ一行。無人と化した屋敷に一人隠れていた花嫁から、謎の城の存在を知った一行は、彼女の案内で城に向かう。が、花嫁に化けていたゴルゴンによりツムジは捕らわれ、ハヤテも氷の落とし穴に落とされる。しかしそこに嵐が見参、人質たちも月の輪に救出される。ゴルゴンを倒した嵐は大魔神像に向かうが、その眼前で像は消え失せるのだった。

 霧ヶ峰の大魔神像を巡る一連の争いの一応の決着篇ともいうべき今回(本当に一応の、ですが…)。登場する西洋妖怪は魔女ゴルゴンであります。

 ゴルゴンとはギリシア神話に登場する異形の魔女。その生い立ちや姿、能力については諸説ありますが、本作でのゴルゴン像は…髪の毛の代わりに緑の蛇を生やした、黒マントに白タイツの女性(顔出し)というスタイルであります。

 これまでほとんどの化身忍者・西洋妖怪はいわゆる着ぐるみだったのに対し、このゴルゴンはある意味実に潔いビジュアルなのですが、それぞれのパーツが実にわかりやすく「魔女ゴルゴン」を主張していて、何だか納得させられてしまうのはちょっと凄いことだと思います。
(蛇の造形など、よく見ると情けないのですがほとんど気にならない)

 さて、神話のゴルゴンは石化能力持ちでしたが、本作のゴルゴンは凍結能力の持ち主。
 初登場シーンでは、(何故か)花嫁に化けて、綿帽子の下の顔を見た者を凍らせていきましたが、これは雪女のイメージでしょうか。

 さらに、捕らえたツムジを戸板に縛り付け、川を流れて戸板返しでハヤテの前に登場というシーンもあり、この辺りはゴルゴン的にどうかと思いますが、なかなか面白いシーンでした。

 まあ、お話自体は大した起伏もなく、ゴルゴンの城(何故彼女だけ城を持っていたのか…ちょっと謎)での罠をあっさりクリアした嵐が、これまたあっさりとゴルゴンを下しておしまい。
 嵐旋風斬りで叩き斬った上、額に刀を突き立てる嵐の鬼っぷりが際だつ対決でした。

 と、忘れるところでしたがついにたどり着いた大魔神像は、その場からあっさり消失(というか瞬間移動)という腰砕けの結末。また大魔神像探しの旅が始まります…ちなみに足で踏まれていたあの人もちゃんと転移されたのでしょうか。

 なお、物語前半で、悪魔道人がハヤテをスカウトしようとする場面があるのですが、もちろんハヤテはこれを一蹴。
 それはさておき、血車の下忍が何人死んでも一顧だにしない道人の姿に、彼の独特の立ち位置が現れていたかと思います。
 そもそも、「わしと一緒になれ」という台詞はどうかと思いますが…


今回の西洋妖怪
魔女ゴルゴン
 髪の毛の代わりに緑の蛇を生やした魔女。口からの冷気で周囲を凍らせる能力を持ち、口から生むツララを手裏剣として使う。鞭を武器とすることもある。
 難を逃れた花嫁に化け、大魔神像に向かう途中のハヤテ一行を氷の城におびき寄せて罠にかけようとするが、嵐との対決の果て嵐旋風斬りに破れ、亡骸は巨大な蛇の姿となった。


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2010.01.03

「機巧奇傳ヒヲウ戦記」 第01話「走れ! 炎」

 三河国蓬莱村に住む、機巧(からくり)使いの一族「機の民」。機の民の少年ヒヲウは、村祭りで博徒に追われる少年を機巧で助けるが、機巧は力にあらずと長老に叱られてしまう。むくれたヒヲウと彼の姉弟・友達たちは、誰も動かしたことのない大機巧・炎が眠る社に向かう。それと時を同じくして、謎の一団に襲撃される蓬莱村。村の危機を知ったヒヲウの必死の想いが、ついに炎を動かす…!

 今日から放送される2010年の大河ドラマ「龍馬伝」は、坂本竜馬が主人公ということで、このブログでも何か竜馬が登場する作品、もちろん伝奇もので、毎週紹介できるようなものを、と考えていました。
 果たしてそんな条件に適するものがあったかしらん…と頭を悩ませたのも一瞬のこと、私の頭に浮かんだのは本作「機巧奇傳ヒヲウ戦記」であります。

 丁度十年前に放映された本作は、機巧使いの機の民の少年・ヒヲウと仲間たちが、人型に変形する巨大機巧・炎と共に幕末の動乱に巻き込まれるという冒険アニメ。
 当然(?)有名無名を問わず歴史上の人物が多数登場するのですが、その中で最も重要な位置を占めるのが、竜馬その人なのです。
 これから約半年間にわたり、本作を紹介していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。


 さて、竜馬の登場は実は第三話からというのは置いておいて、物語の導入部となるこの第一話ですが…これが実に良い。
 何が良いと言って、アバンタイトルの、老シーボルトとヒヲウの出会いのシーンであります。

 上のあらすじには書きませんでしたが、本作の物語の始まりは、あのシーボルトが、三十年ぶりに日本を訪れる場面から始まります。
 日本に向かう船上で、愛する日本に想いを馳せつつも、その将来を憂えるシーボルト…と、その前に現れたのは、外国人の女性のスカートめくり(外国人の女性に尻尾はないか、踵がちゃんとあるか確かめに来たのです)にわざわざ機巧船で忍んできたヒヲウ。シーボルトは、目的を達成して慌てて逃げていくヒヲウに、自らの懐中時計を与える、というのがこの冒頭部分であります。

 激動の時代を迎え、望ましくない未来に向かっていく日本の運命を予感するシーボルトが、しかし、これだけは昔と変わらない――そしてこれからも変わらないであろう――日本の子供の姿に微笑みを取り戻すというこの場面は、この「機巧奇傳ヒヲウ戦記」という物語の視点と、そして何よりその物語でヒヲウが果たす役割というものを、強く視聴者である我々に印象づけてくれるのです。

 そしてこの第一話のクライマックス――謎の敵の襲撃にあって、これまで誰も動かすことの出来なかった炎をヒヲウが動かそうとする場面において、炎に力を与えた(体内のゼンマイ機巧を作動させた)のが、このシーボルトの時計のゼンマイであったというのがまたもう…!

 日本人でも知らない人間が大半と思われるシーボルトの再来日を題材に持ってくるという点も含め、この辺りのセンスはやはり原作・脚本を担当する會川昇氏の面目躍如たるものがあると感じます。

 更に言えば、これだけのテーマ性を忍ばせつつ、二十五分弱という限られた時間の中で、時代背景やキャラクターといった基本設定を盛り込み、そして敵の襲撃→封じられたロボットを起動させて反撃というロボットもの第一話の黄金パターンにもきちんと即している辺り、実に良くできた第一話であったと、今更ながらに感心した次第です。


 波瀾万丈の時代活劇の導入部として、先が楽しみで仕方なくなる――そんな第一話であります。


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2010.01.02

「退屈姫君 海を渡る」 風流・退屈、夢の競演

 今日も江戸で退屈を持て余していためだか姫の元に、国元に帰っていた夫・時羽直重が失踪したとという知らせが舞い込む。勇躍、仲間たちとともに風見藩に渡った姫を待っていたのは、直重なき藩を牛耳る謎の武士・六波羅景望だった。お家乗っ取りの危機に、姫の活躍は?

 新年最初の更新は、お正月らしく賑やかで楽しい作品を…というわけで、「退屈姫君」シリーズの第二弾、「退屈姫君 海を渡る」であります。
 もともとは「風流冷飯伝」と「面影小町伝」の間に挟まる、三部作の第二部だった「退屈姫君伝」ですが、あまりに人気があったということなのかスピンオフ(?)して単独のシリーズとなった、そのシリーズ化最初の作品が本作です。

 お話的には、「退屈姫君伝」の直後に当たる本作、夫で風見藩主の直重失踪の報に、「入り鉄砲に出女」もあるものかは、めだか姫は、くノ一お仙、守役の諏訪に将棋指南役の天童小文五という前作でもお馴染みのメンバーと海を渡って風見藩に赴くのですが…

 風見藩と言えば、そう「風流冷飯伝」の舞台であり、そこで待っているのは、飛旗数馬たち愛すべき冷飯食らいに、お仙の兄の幇間・一八という懐かしのメンバー。
 いわば「風流」「退屈」のオールスターキャスト、これだけで嬉しくなるではありませんか。

 ストーリー的には、お家騒動ものの一つといったところで、御国御前(側室)が藩主の子を孕んだのをいいことに、風見藩乗っ取りを企むその兄と、めだか姫は対決することになります。

 この悪役・六波羅景望は、城の腰元たちが黄色い声を上げるほどの色男である上に、奇怪な瞳術で人の意志を自在に操る怪人。
 既に藩の大半を掌握したこの怪人の前に、頼みの綱の冷飯や一八は、手も足も出ずに敗れ…って、これは頼むのが間違いですが、とにかく今回も、強力な敵を向こうに回し、イレギュラーな連中が奇策縦横立ち向かう様が、実に楽しく痛快に描かれていきます。

 そのイレギュラーの筆頭、めだか姫ですが、しかし、やはり主人公! と唸らされたのは、日和った国家老に対しての言葉。
 たとえ六波羅に直重公を亡き者とされ、国を乗っ取られたとしても、時羽の家さえ残れば…と言う家老に対し、私が嫁に来たのは時羽家ではない、家ではなく夫を守るために戦います! と凛然と宣言する姿は、実に痛快でありました。

 もちろん、うるさ型からすれば、この時代にこんなことを言う女がいるかい、ということになるんでしょうが、それは野暮というもの。
 そして、クライマックスでめだか姫たちが仕掛けた乾坤一擲の大逆転の痛快な一手――その背後にある、果たして「国」とは何なのかという問いかけと、実はこの啖呵が表裏一体となっていることを考えれば、なるほど! と感心せざるを得ないのです。

 さて、一つの事件を解決してめでたしめでたし、となっても油断のならない本シリーズ。
 めだか姫の退屈も、いつまで続きますことやら…と、以下は次の巻のお楽しみであります。

「退屈姫君 海を渡る」(米村圭伍 新潮文庫) Amazon
退屈姫君 海を渡る (新潮文庫)


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2010.01.01

明けましておめでとうございます

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 昨年は「歴女」が新語・流行語大賞のトップテン入りしたことに象徴されるように戦国もの・歴史ものに脚光があたりました。
 また、時代小説では昨年も文庫書き下ろし時代小説ブームが続き、驚くほどの点数が刊行されました。

 しかしながら、伝奇時代劇については昨年も厳しい状況が続き、特に時代小説では、上記の文庫書き下ろし時代小説ブームと表裏一体の伝奇不作の状態であります。

 正直に言って、この状況は今年も続くかと思いますが、そういう時だからこそ、面白い作品を探し出し、紹介するのがこのブログの務め。
 漫画では相変わらずイキの良い作品が次々と登場していますし、映像・舞台・ゲームの世界でも、伝奇ものはまだまだ元気です。

 小説の方でも、たとえ新作が少なくても、まだまだ紹介できていない過去の名作は山のようにありますし、今年も色々と楽しい作品を紹介できると思います…いや、ご紹介します。

 こんな時期だからこそ、今年はもっともっとアンテナを高くして、できるだけタイミング良く、面白い作品をキャッチして、紹介していきたいと思います。


 本年も毎日更新で頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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