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2010.01.16

「ばけざる」 化猿、天下を騒がす!

 小田原北条家総攻撃を開始した豊臣秀吉は、その最大の障害を除くため、風魔狩令を発する。そんな中、異形の右足により忌み嫌われてきた青年・カエンは風魔小太郎の名を継ぐ。反撃のために秀吉暗殺を決意するカエンと風魔一族だが、その前には妖忍神君・百地丹波の影が…

 忍者ものの中で、伊賀に継ぐ人気を誇るのは、やはり北条家に仕えた風魔でしょう。
 特にその頭領・風魔小太郎は、伝わっている特異な風貌やその最期がある程度記録に残っていることもあり、ヒーローとしてであれ悪役としてであれ、しばしば顔を見せるお馴染みの人物です。

 本作はその風魔小太郎を主人公に据えた忍者アクション。絵柄的には原哲夫調、登場するキャラクターも小太郎や秀吉をはじめとして、石田三成、前田慶次郎、石川五右衛門、百地丹波と、さほど珍しい顔ぶれでもなく…と書くと、本作はよくある忍者アクション劇画と思われるかもしれません。
 しかしさにあらず、小太郎をはじめとする登場キャラクター造形や、細かな題材・描写の部分で独自色が強く、実にユニークな作品なのです。

 本作の題名「ばけざる」とは、六代目小太郎の名を継ぐ主人公・カエンの異名。
 生まれながらに猿の右足を持ち、それゆえに化猿=カエン=ばけざると呼ばれ、忌み嫌われてきた彼の設定(考えてみればずいぶんギリギリの設定ですが)もユニークですが、何よりも面白いのはその足を活かしたアクションなのです。

 猿が、もう一つの手のように足を使って物を掴んだり樹にぶら下がったりする姿はTVなどでご覧になったことがあるかと思いますが、カエンの技はまさにそれ。
 相手の腕を押さえる、武器をもう一本持つ…右足を第三の手として使うことが、忍びにとってどれだけのアドバンテージたり得るか、それを見事に本作はビジュアライズすることに成功しています。

 そしてそのカエンの仲間たち、そして挑む相手もまた、本作ならではの個性的なものばかり。特に五右衛門と秀吉の怪物ぶりは、本作ならではといえるでしょう。
(特に後者は、ある意味予想はつくのですが無茶すぎて――しかしタイトル的に面白い)

 さらにも一つ本作の特徴は、その奇妙なギャグセンスであります。
 単行本で各話の間に挟まるおまけカットでギャグをやるのはまだわかりますが、本作では、ドシリアスな展開が続く本編でいきなりポカッとギャグが挿入されるのが恐ろしい。

 内容も内容、絵柄も絵柄だけに、一歩間違えると色々台無しになるところが、ギリギリで踏みとどまっているところに、また不思議な味わいがあるのです。
(しかし、立ちすぐり居すぐりのシーンのギャグの危険球ぶりはスゴい)


 冷静に考えると、一種カルト的な作品なのですが、しかしそれだけに好き者にはたまらない本作。
 作者は本作が初単行本のようですが、今後もこの味わいでいって欲しい…というのはわがままでしょうか。

「ばけざる」(西河原義秋 講談社ヤンマガKC) Amazon
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コメント

おばんです!
TBがうまく送信できなかったので、コメントにて失礼致します。
「ばけざる」、こちらのレビューを拝見した当時は、
まさかこれほどキワった作品だとは思いませんでした(笑)。
読み始めの方こそ戸惑いましたが、ページが進むにつれ、
ニヤニヤしながら楽しんでいる自分がいました。
最近、こういう勢いのマンガは珍しいような…。

この作風に味をしめて、次作を楽しみにしたいと思います。

投稿: まるひげ | 2010.02.02 01:13

まるひげ様こんばんは。
丁度そちらのブログにコメントしようかと思っていたところです(笑)

いや、本当に「カルト」というか、まさにキワった作品でしたね。
波長が合うと本当に面白い作品です。危険球連発のギャグシーンとか…

どういう次回作が来るのか全く想像もつきませんが、それもまた楽しみということで!

投稿: 三田主水 | 2010.02.02 01:53

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