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2010.01.12

「退屈姫君 恋に燃える」 楽しい大人の夢物語

 またも退屈を持て余していためだか姫の元に持ち込まれた天下の一大事。冷飯の一人で将棋修行中の榊原琢磨が、遠州横隅藩の末娘との身分違いの恋に苦しんでいるというのだ。俄然、この恋を成就させてみせると燃えるめだか姫だが、横隅藩に伝わる家康より拝領の水無瀬駒を巡り、田沼意次が奸計を巡らせる。果たして姫は横隅藩を救い、二人の縁結びに成功できるか!?

 「退屈姫君」シリーズ第三弾は、なかなか刺激的なタイトルの「退屈姫君 恋に燃える」。すでに人妻のめだか姫が恋に燃えるとは、これはけしからんと思えば、恋は恋でも他人の恋。身分違いの大恋愛に苦しむ美男美女を救うため、縁結び役を買ってでる…という内容であります。

 本人は現在(退屈を除けば)大いに幸せとはいえ、言ってしまえば政略結婚で輿入れしためだか姫。恋を知らないまま嫁いでしまった彼女にとって、人の恋物語というのは実に甘く甘く見えるもの。
 折からの退屈も手伝って、お馴染みくノ一お仙や諏訪、天童小文五や冷飯連中と共に、この恋を成就させるため、実に頼もしくもおせっかいな活躍を始めることとなります。

 さらにそこに絡むのは、カップルの片割れ・萌姫の家に伝わる水無瀬駒を巡る騒動であります。
 安土桃山時代の公家・水無瀬兼成の手になるという名駒中の名駒として知られる水無瀬駒。その駒を、神君家康が大名たちの恩賞(エサ)として用いていたという説を踏まえ、本作では田沼意次が色(実に悪趣味な!)と欲が絡んだ無理難題を吹っ掛けてくるという寸法。

 しかし、もちろん善男善女が泣かされることはないこのシリーズ、実に見事に伏線がピタッとはまってのクライマックスの大逆転は、毎度毎度のことながら痛快の一言であります。


 題材的に、これまでのシリーズに比べると些かスケール感という点では劣ること、また、下ネタがこれまで以上に横行すること(本当にこのシリーズの下ネタは、誰得としか思えませんが…)というマイナス点はありますが、それを考慮に入れても、やはり本作はまことに楽しい大人の夢物語であることは間違いありません。

 ちなみに、本作で幸せになるのは、若いカップルだけではありません。
 このカップルの片割れであり、将棋の天才(そして絶世の美形)の榊原琢磨に対し、様々な嫉妬から一度は妨害の挙に出るのが兄弟子の天童小文五。シリーズのレギュラーではり、前作では姫を守ってまさかの大金星を挙げた彼が、本作では器の小さい悪役になってしまうのか――と思いきや、さにあらず。
 彼が懊悩の果てに到達した境地の清々しさたるや、道こそ違え、己の往く道に迷いを持ったことのある大人であれば、誰もが笑顔で頷きたくなるものであります。


 しかし、誰よりも幸せなのは、やっぱりめだか姫。最後の最後で、本作のタイトルに偽りなしであることを証明してくれたのには…いやはや、ごちそうさま、と言うほかありません。

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