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2010.01.30

「朧村正 鳥籠姫と指切りノ太刀」 原作に忠実に、原作を超えて

 村正に魅入られ忍びを抜けた鬼助は、強力な結界の中に迷い込む。お静という少女の導きで隠れ里にたどり着いた鬼助だが、里は十年に一度、妖怪・蛟姫に生け贄を捧げていた。一方、同じく村正を持つ少女・百姫は、蛟姫の賓客として招かれていた…

 昨年発売され、ゲーマーに好評をもって迎えられた――ちょうど先日、任天堂の「みんなのおすすめセレクション」にも選ばれたばかりです――Wii用ソフト「朧村正」。
 時代ゲーマー(?)として、私ももちろん大好きな一本ですが、その「朧村正」が小説化が登場しました。

 内容的には、ゲームのストーリーの小説化ではなく、ゲームの設定を用いての外伝ストーリー。ゲームからのキャラクターも、鬼助・百姫(飯綱陣九朗)・柳生雪之丞の三人のみとなっています(ゲームの重要キャラ・虎姫は登場しませんが、それは本作の内容的に仕方はないところでしょう)。

 しかし、一読してみれば、本作は紛れもなく「朧村正」。妖しく殺伐とした、しかしどこかコミカルな世界に、鬼助たちゲームのキャラも本作オリジナルのキャラも、違和感なく混じり合って存在しています。
 また、温泉での回復や刀同士の激突、巨大キャラとのバトルなど、ゲームをプレイしたことのある方であればニヤリとできるような要素を、違和感なく小説の中に盛り込んでいるのにも感心させられます。

 しかし――本作の最大の魅力は、ゲームの世界を小説の中に再構築しつつも、ゲームでは(アクションゲームという性質上)決して描けない部分を中心に据えて、一個の小説として成立させている点でしょう。
 そう、本作では主人公たる鬼助の心情、心の動きを、克明に描き出しているのです。

 鬼助というキャラクターは、そもそも幼い頃から忍びとして育てられ、それ以外の世界を知らぬ少年。それが、任務で村正を手にしたことから妖刀に憑かれ、忍びの世界を抜けることとなるのですが――
 本作では、そのある意味狭い世界を飛び出した鬼助のとまどいが、そして、自分が自分として生きることの意味と喜びが、妖怪との戦いの中で描かれていくこととなります。

 鬼助が初めて知った、隠れ里での穏やかな暮らし(これもまた、ゲーム中では表現できない部分であります)。子を産み、育て、次の代へ繋げていく人々の生と、それを守ることの意味…ただひたすらに切れ味のみを求め他者の生を奪うために作られた村正を手にした鬼助が、そのためにそんな人の生を知ることになるという皮肉な構成も面白く、この「朧村正」の世界でこのようなアプローチもできたかと大いに感心した次第です。

 そして、そんな自由を手に入れた鬼助と対比されるように描かれるサブタイトルの「鳥籠姫」の存在も実に切なく、この辺りはベタではあるのですが、しかしそれが、ラストで鬼助が初めて××というシーンに繋がってくると――そして鬼助の太刀の名を重ね合わせれば――素直にグッとくるのであります。


 原作ゲームを知らない方が読んでどう思うかは、私にはわかりませんが、少なくとも原作ファンであれば読んで絶対損はしない、原作に忠実に、それでいてある部分では原作を超えた作品だと、私は感じます。

 ただ一点、挿絵が原作ゲームのイラストを担当した神谷盛治氏であればベストだったのですが…しかし話の内容的に、氏だと艶やかすぎたかな?

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