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2010.01.14

「風と雷」 漫画と歌舞伎と五右衛門と

 大坂を騒がす義賊・石川五右衛門は、天下を盗った豊臣秀吉に敵愾心を燃やし、聚楽第に忍び込んで秀吉最愛の茶々と結ばれる。秀吉の最も大事なものを奪ったと勝ち誇る五右衛門に、秀吉が語る驚くべき真実。果たして五右衛門の選択とは…

 偶然か、はたまた何かの理由があるのか、2009年は、石川五右衛門を主人公とした作品が幾つも発表された年でした。(その傾向は続く2010年も同様であります)

 その一つが、2009年の夏に、市川海老蔵により新橋演舞場で演じられた新作歌舞伎「石川五右衛門」であり、それを、歌舞伎と同じく樹林伸(地球は滅亡する! のあの人)を原作に、そして「哲也 雀聖と呼ばれた男」の星野泰視の作画で漫画化したのが本作です。

 物語は、天下人となり、この世に手に入らぬものなどない秀吉に、己が身一つで挑む五右衛門の姿を描いた一種のピカレスクロマン。
 五右衛門と秀吉というのは、それこそ本作の源流であろう「楼門五三桐」の頃からの宿敵同士ですが、本作ではそこに茶々(淀の方)を絡めることにより、二人の男の立場を浮き彫りにしているのが目を引きます。

 そして、そこから本作最大のサプライズである、秀吉と五右衛門の因縁へと視点が移り、ラストの五右衛門の選択に繋がっていくという展開も、なかなか楽しめました。
(この辺り、目力の効いた星野氏の絵柄がよくマッチしていたと思います)


 が、正直に言えば、秀吉のキャラ立ちが圧倒的だった分、五右衛門や茶々のキャラクターが今ひとつだった…という印象はあります。
 特に五右衛門が秀吉に燃やす敵愾心の理由が、サラッと描かれすぎていることもあって、五右衛門の行動原理が今ひとつはっきりしないのは、何とも残念です。

 この辺り、分量的な制約もあったかと思いますが、何よりも、漫画と、舞台上の役者の存在感である程度キャラクターを描くことのできる芝居との、メディアの違いから来るものであったようにも感じられます。
 さらに言ってしまえば、新作といいつつ、これまでの五右衛門ものの要素を無造作に(と見える)取り込んでいるのは、ちょっと違和感があります。

 と、わかったようなことを言いつつ、元の歌舞伎を見ていないのがなんとも歯がゆいのですが――


 しかし新作歌舞伎と漫画のコラボレーションというのは、やはり実に刺激的で、それでいて不思議と違和感のない組み合わせ。
 これからもこうした組み合わせはあってもいいな、とは感じたところです。

「風と雷」(星野泰視&樹林伸 講談社モーニングKC) Amazon
風と雷 (モーニングKC)

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