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2010.01.20

「影の剣 風の忍び六代目小太郎」 修羅焼き尽くす上忍の火焔

 新年を間近に控えた江戸で、侍ばかりを狙う辻斬りが現れた。人を三つ胴に斬るその技に、伊織ら風魔一族は、化外の存在を感じ取り、警戒を強める。が、謎の辻斬りの魔の手は伊織の親友である柳生十兵衛にまで及んでしまう。恐るべき影の剣の遣い手の正体と目的とは…

 江戸の平和を密かに護る風魔の活躍を描く「風の忍び 六代目小太郎」シリーズの第三弾が刊行されました。
 表の顔は暇を持て余す小普請組の若者、しかしてその実体は、徳川家康から江戸の守護を託された風魔小太郎の名を継ぐ六代目小太郎こと風間伊織と、仲間たちの活躍を描く忍者アクションの快作シリーズであります。

 今回、伊織たちの前に現れるのは、侍ばかりを三つ胴に斬る謎の辻斬り。
 俗に人の身体を横に真っ二つに斬るのを二つ胴と言いますが、今回江戸に現れた辻斬りは、それよりももう一つ多く斬るということになります。
 動かぬ身体を二つにするのですら難しいものを、生きたまま、それも侍を相手に三つに斬るというのは、到底常人のできる技ではない…かくて、江戸を化外から守る風魔の出番ということになります。

 これまでのシリーズでも、瞬間移動と見紛う移動術を使う忍びや、あらゆる年齢・容貌に姿を変えるくノ一などと戦ってきた伊織ですが、今回の敵も奇怪さでは勝るとも劣らぬ強敵。
 常人の及ばぬ三つ胴を可能とする技は、忍法+剣法のまさに「影の剣」――伊織とは退屈仲間(?)でありながら、剣技においては当代随一の十兵衛に苦杯を嘗めさせたその技に挑む伊織…これまで同様、今回も痛快な忍者アクションを堪能させていただきました。

 そして、このシリーズの優れた点は、単に登場する忍法が面白いとか、アクション描写が巧みという点にとどまりません。
 本シリーズに登場する敵忍者は、いずれも、平和となった世に容れられず、その力を周囲に振るうことでもってのみ、自分の存在を示すことができる者たち。
 それに抗するのは、彼らと同様、戦国時代からの技を今に受け継ぐ風魔たち――つまり、ある意味同族たる者たちが相争う点に、本シリーズの基本構造があります。
 いわば戦国の亡霊とも言うべき彼らを救うことができるのは、道は違ったものの、彼らの苦しみを知り、理解する者のみ…本シリーズが忍者同士の死闘を描きつつも、決して殺伐としたもののみで終わらないのは、この構造ゆえでしょう。

 本作の「敵」は、そんなこれまでの化外の忍びとは少々趣を異にする存在ではあるのですが、しかし、太平の世では存在を許されない修羅を抱えた点では同じ。
 六代目小太郎がその力を振るう時に背負う上忍の証の火焔は、その修羅の業を焼き尽くすためのものなのであります。


 そんな本作において唯一不満があるとすれば、立ち位置としては実は「敵」と同様のところにあったにもかかわらず、十兵衛が途中で物語からフェードアウトしてしまうことですが…これは、彼の物語はまだこれから、ということなのかもしれません。
 その点も含めて――そして何よりも今や数少ない忍者アクションの快作として、今後もまだまだ楽しみなシリーズであります。


 しかし、小野家の皆さんの可愛らしさは一体どうしたことか。特に次郎右衛門の萌えキャラっぷりは異常。

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