« 「陰陽師 天鼓ノ巻」 変わらぬからこその興趣 | トップページ | 「御家人斬九郎」 肩の力を抜いた無頼 »

2010.02.11

「AKABOSHI 異聞水滸伝」第3巻 そして夜明けを告げるもの

 「週刊少年ジャンプ」に連載されながらも、惜しくも短期で終了することとなった「AKABOSHI 異聞水滸伝」の、泣いても笑ってもこれで最終巻であります。
 梁山泊奪取を目指す戴宗たちの戦いは意外な方向に展開し、さらには真の敵と戴宗との因縁が描かれた上で、惜しくも物語は終幕を迎えることとなります。

 義賊集団「替天行道」のリーダー・宋江の命で梁山泊奪取のために潜入した戴宗と林冲。しかしそこで待ち受けていたのは、奇怪な術でもって梁山泊を支配する怪人・王倫。さらに、官軍と結んだ王倫の裏切りにより、梁山泊に迫る四人の刺客――
 善魔入り乱れての激戦の中、百八の星の真の意味を知る戴宗ですが、その前に現れた巨悪・高キュウとの間の因縁が描かれたところで、物語は一応の閉幕となります。

 …まあ、要するに打ち切られたわけですが、それ故の早急さはあるものの――さすがに終盤の戴宗と高キュウの対面は豪快すぎるかと――しかし、変格水滸伝マニア(?)として本作に抱いてきた好感は、最後まで変わることはありません。
 一見無茶苦茶な原典アレンジと、しかしその背後でかなり計算されている人物描写とストーリー展開が相まって生まれる興趣は、無視できるものでは決してないと思います。

 特に、戴宗と高キュウの間の因縁が、一見無感動無気力な戴宗のキャラクター形成に強く影響していたというくだりは、ありがちではありますが、そこに「笑えねー」といういかにもイマ風(?)の戴宗の口癖を絡めてくることで、そういうことか! という嬉しい驚きを感じさせてくれました。
(も一つ、百八星の意味付けも、本作のキモであろう星の力のみならず、暗闇から星空へそして夜明けを告げるものという象徴的なそれも実に格好良いのです)

 もちろん、不満点も存在するわけで、敵キャラ(特にこの巻に登場した四人組)に魅力が感じられなかった点は、キャラクターのパワーバランスがどんどんメタメタになっていく点も相まって、強く感じさせられました。
(もっとも、ほとんど名前のみとはいえ、天山勇をここまでフィーチャーした漫画はおそらく世界初ですし、何濤のイカれた忠誠心の描写にはニヤリとさせられたのですが、それはごく一部のマニアの感想)


 と、後ろ向きなことはこれくらいにして、嬉しかったのは書き下ろしエピソードやおまけページが充実していたこと。

 書き下ろしエピソードでは、本編では顔見せに終わった九紋竜史進と王進のその後の姿が描かれるのですが、これがまた短いながら史進の男っぷりが描かれた、実にイイ話。
 さらにも一つ、翠蓮(皇甫端涙目w)のその後が描かれた掌編も書き下ろしというサービスぶりであります。

 おまけページでは、本編最終話に一コマだけ登場した好漢たちの名前が記され、色々想像が膨らむ――と思えば、ラストには彼らが活躍する続編の予告まで! …まあ、ウソ予告なんですが。

 これでラスト、せめて最後くらいは…という作者のサービス精神かと思いますが、しかし、読者としてはこういうのが一番嬉しいし、応援したくなるもの。
 一水滸伝ファンとして、本作の存在を忘れず語っていこうと、心に誓ったところです。


 …でも、やっぱりMETEORAはないと思う。

「AKABOSHI 異聞水滸伝」第3巻() Amazon
AKABOSHI-異聞水滸伝 3  (ジャンプコミックス)


関連記事
 「AKABOSHI 異聞水滸伝」第1巻 実はしたたかな計算あり?
 「AKABOSHI 異聞水滸伝」第2巻 挑む相手は梁山泊

|

« 「陰陽師 天鼓ノ巻」 変わらぬからこその興趣 | トップページ | 「御家人斬九郎」 肩の力を抜いた無頼 »

コメント

戴宗の決め台詞「笑えねえ」はなんとなくキャラ立てのために無理やり言わしているようで開始当初よりそこはかとなく違和感を感じていたのですが、この巻のエピソードで得心、あああああそういうことだったのか・・・・・とその設定の周到さにかなり衝撃を受けました。

掲載誌特有の縛りがきつかった(性急な展開やパワーバランスの崩壊などはそこに端を発していると思います)と思うのですが、もし将来他誌にて続編掲載があるならばぜひ読みたい作品の一つです。

投稿: 伯爵 | 2010.02.11 20:10

そうなんですよね…そこに限らず、よく見るとキャラ造形とか構成とか、「おっ」と思わせるところがあったのに感心させられます。

作品としての(編集サイドの?)狙い方や、そしてそれが受けなかった理由も何となくわかるのですが、どうにかして欲しいですね…ジャンプスクエアとか似合うと思うのだけれども

投稿: 三田主水 | 2010.02.14 00:36

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/47537660

この記事へのトラックバック一覧です: 「AKABOSHI 異聞水滸伝」第3巻 そして夜明けを告げるもの:

« 「陰陽師 天鼓ノ巻」 変わらぬからこその興趣 | トップページ | 「御家人斬九郎」 肩の力を抜いた無頼 »