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2010.02.20

「相棒」 意外さで定番を包んだエンターテイメント

 大政奉還を数日後に控え、将軍慶喜の駕籠が何者かに狙撃された。倒幕派の薩摩・長州も、佐幕派の会津も、みな大政奉還に反対している状況下で、幕閣は双方の勢力に通じる二人の男を密かに招いた。土方歳三と坂本龍馬…敵同士の二人は、残されたわずかな時間内に下手人を捕らえることができるか?

 既にほとんどの方が突っ込んでおられるのであまり突っ込みませんが、非常に紛らわしいタイトルの本作。
 内容はもちろんあちらとは全く関係なく、幕末オールスターキャストを向こうに回し、土方と龍馬、二大ヒーローが活躍する快作であります。

 もちろん、相棒どころか宿敵の間柄の二人をそうそう簡単に組ませられるわけはない。そこで本作が用意したのは、薩摩の西郷との秘密会談に向かう途中に起きた、徳川慶喜狙撃という一大事件であります。

 会談の存在を知るのは、幕府側も薩長側もごくわずかの人間のみ。しかしながら、双方それぞれの思惑から大政奉還に反対している状況下では、そのほとんど全てが容疑者と言っても良いような状況…
 ここでもめるようなことがあれば、慶喜が翻意するやもしれず、至急下手人を捕らえる必要がある――そこで白羽の矢が立ったのは、それぞれの勢力の裏の裏まで知り尽くした二人、という展開に相成ります。

 はっきり言ってしまえば、この設定自体は、土方と龍馬にコンビを組ませるというシチュエーションありきのもの。
 その一方で、土方と龍馬、そして彼らが捜査の最中に対面する幕末の人々のキャラクターは、定番と言うべきか、史実や様々な作品を通じて我々が持っているイメージを、一歩も出るものではありません。

 その意味では、本作を深みがないと切って捨てる人がいてもおかしくないかなとは感じるのですが、しかしこれはこれで割り切ってしまえば、実に楽しい作品です。
 水と油の二人が不承不承コンビを組み、衝突を繰り返しながらも共に危機を乗り越えているうちに…というのは、いわゆるバディものの定番展開ではありますが、しかしそれがあの、「我々がよく知る」土方と龍馬というのは、実に痛快ではないでしょうか。

 また、二人が佐幕派・倒幕派双方を捜査する過程で、二つの勢力の、そしてそれに属する人々の立ち位置というものが明快に語られていくというのもなかなか面白い。
 一見単純なようでいて、実は複雑怪奇に思惑が絡み合った幕末の勢力分布図を、ミステリの形を借りて描いていくというのは、一つの工夫と言えるでしょう。

 実は、意外なシチュエーションも定番のキャラクターも、このための仕掛けなのでは…というのは都合よく考えすぎではありますが、この点は評価すべきではないでしょうか。


 このように欠点はありますが、水準以上の作品であることは間違いない本作。
 意外さで定番を包んだエンターテイメントとして、気軽に楽しめる作品です。

「相棒」(五十嵐貴久 PHP研究所) Amazon
相棒

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