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2010.02.09

「狐憑きの娘 浪人左門あやかし指南」 二つの不満が…

 川辺で子供たちが目撃した侍の死体が消え、子供たちも次々と死んだ。生き残った一人が通う手習い塾の師匠・良峻は、夜な夜な怪しい人影に悩まされ、左門と甚十郎が見張りに当たることになった。そんな中、甚十郎に持ち上がった見合い話の相手は、良峻の娘で狐憑きの噂のある弓枝だった…

 酒と怪談をこよなく愛し、怪談の裏を暴くことを飯の種にしている浪人・平松左門と、主家の剣術指南候補の好青年ながら無類の恐がりの苅谷甚十郎の名(迷)コンビが、怪談絡みの事件に挑む「浪人左門あやかし指南」の第四弾「狐憑きの娘」であります。

 釣りに出かけた子供の一人が侍の死体を目撃するも、死体は忽然と消失。その子供たちのうち二人が謎めいた死を遂げ、生き残った一人の周囲に出没する怪しい影…
 その影の正体を暴くために雇われた左門に引っ張り込まれた甚十郎の前には、彼が以前巻き込まれたいざこざで斬り、川の中に消えたはずの男が現れ、さらに、国元からやってきた甚十郎の先輩剣士が持ってきた見合い話は、奇行が多く狐憑きの噂がある娘で…と、今回も怪談としか思えぬような事件が頻発する中、左門がその裏に潜む企てを暴いていくこととなります。

 シリーズ第四作目ということもあって、既にお馴染みと言っても過言ではない左門と甚十郎のキャラの楽しさは相変わらず、特に今回は甚十郎の恋が物語の軸の一つになることもあり、そのイジられキャラっぷりはこれまで以上で、大いに楽しませていただきました。
 およそキャラクターノベルとしては、水準以上の作品であることは間違いありません。


 が――シリーズ第一作からの読者としては、大きな不満が、それも二つあります。

 一つは、怪談が物語のアクセント以上の役割を果たしていないこと。

 本シリーズでは、様々な怪談が作中で物語られるのが定番となっています。もちろんそれは、物語の雰囲気作りという意味合いもあるのですが、例えば第一作では、怪談という曖昧さを内包する情報の固まりを用いたトリックが描かれ、また第三作では、その曖昧さが事件の後始末にある役割を果たし――
 と、本シリーズでは怪談を、その特質にまで踏み込んで、有機的に物語の中で活かしてきたという特長がありました。

 本作ではそれがほとんど感じられず、物語の賑やかしに留まってしまっているのが、残念で仕方ないのです。

 もう一つは、事件の内容と、それにまつわる人間関係に、あまりに偶然の結びつきが多すぎることで――これは物語の内容に密接に絡んでしまうために詳述できませんが、簡単に言ってしまえば、どれだけ甚十郎の藩は江戸でやらかしているのかと。

 もちろん、きちんと最後まで読めば、その中に必然も含まれていることがわかるのですが、しかし全体として偶然による部分が多すぎるため、その必然まで印象が薄くなり、全体として(非常にきつい言葉ですが)ご都合主義に見えてしまっているのです。


 個人的にはこうしたことを書くのは大嫌いなのですが、大好きなシリーズであるだけに、今回はあえて書かせていただきました。
 上記の通り、キャラクターノベルとしては面白いだけに、なおさら残念であり、また心配であるところなのです。

「狐憑きの娘 浪人左門あやかし指南」(輪渡颯介 講談社) Amazon
狐憑きの娘 浪人左門あやかし指南


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