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2010.02.18

「やわら侍・竜巻誠十郎 寒新月の魔刃」 二人の探偵が追う陰謀

 江戸の町を激しい嵐が襲った翌朝、男女の水死体が発見された。女の水死に関する本所方同心の懈怠の疑いに、誠十郎は目安箱改め方として調べを開始する。一方、水死した男の弟・勘次も、兄の死に不審を持ち、独自に調べを始める。二人の調査は、やがて意外なところで交錯し、巨大な陰謀を浮かび上がらせる。

 将軍吉宗の時代、目安箱への匿名による訴えを秘密裏に調査する影のお役目・目安箱改め方を拝命した浪人・竜巻誠十郎の活躍を描くシリーズ第四弾。今回は、嵐の後に発見された水死体から、思わぬ陰謀があぶり出されていきます。

 本所方同心が川にはまった女を見殺しにしたという訴状の調査を行うこととなった誠十郎。
 一度は備え付けの鯨船(あの、破れ奉行が乗って突撃する船)を出しながらも、何故か任を果たさず帰還したというその同心は、しかし、誠十郎の調べでは謹厳実直をもって知られる人物で、とても懈怠をするような人物ではないことがわかります。
 それでは、一体何故同心は女を救うことができなかったのか? それが、本作の大きな謎として、解き明かされていくことになります。

 さて、本作の特徴は、ここでもう一つの謎、そしてもう一つの探偵役が登場することであります。
 もう一人、水死体となって発見された男…その弟の漁師・勘次は、兄が簡単に溺れ死ぬとは思えないと、独自に調査を開始します。
 その過程で浮かび上がるのは、兄が訳ありの儲け仕事についていたこと、そして何かを知り、逃げだそうとしていたこと――

 ここに、誠十郎と勘次、二人の探偵役がそれぞれ追っていた男女の水死体の謎が重なりあい、クライマックスの大活劇に繋がっていくこととなります。

 個人的には――前の巻の感想でも述べましたが――本シリーズ当初にあった、人の心の微妙な陰影と、それを優しく救う誠十郎という人情ミステリ的要素が完全に薄れてしまったのが残念ではあるのですが、これはもう、シリーズ自体がマクロな対決の物語に移行したということなのでしょう。
(ちなみに、本作の帯にある「長屋で暮らす派遣労働侍」というキャッチも、本作ではあまり前面には出ていないのですが…)

 事実、今回の陰謀は豪快の一言で、本シリーズの背後に描かれてきた幕府と尾張の暗闘も、いよいよクライマックスに近づいてきたことが感じられます。
 そしてラストには、次回が何とも気になるヒキも用意されており、色々と思うところはあれど、やはりこれからの展開が見逃せないシリーズであります。

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