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2010.02.06

「真田幸村 家康狩り」 真田vs家康、最後の死闘

 道みちの者を束ねる真田昌幸と、徳川家康――実は信濃の醜鳥の戦いは、信長が倒れ、秀吉が天下を統一した後も続いていた。その中で、昌幸の次男・幸村も、十勇士を率いて家康配下と暗闘を繰り広げる。昌幸がこの世を去り、家康の奸計で豊臣家が危機に瀕する中、幸村の最後の戦いが始まる。

 朝松健先生の「真田昌幸 家康狩り」三部作に続く完結編「真田幸村 家康狩り」が、ついに発売されました。

 真田家が、道みちの者――遊芸者や歩き巫女等、諸国を放浪する制外の者たち――の大檀那(庇護者)であったとの設定の下に描かれてきた本シリーズ。
 真田昌幸が徳川家康――実は幼い頃に死んでいた家康に成り代わった下忍の子・信濃の醜鳥――を倒すべく繰り広げてきた死闘、すなわち「家康狩り」は、昌幸の子・幸村の代に引き継がれることとなります。

 秀吉の小田原攻めの少し前、幸村の少年時代から物語は始まり、大坂夏の陣に終幕を迎える本作は、かなり長い時間の流れを舞台とするため、いささか駆け足となっている部分は否めないのですが、しかし登場人物の造形と、史実上の事件の伝奇的解釈の面白さは、さすがに伝奇の達人ならでは、と言うべきでしょうか。

 特にユニークなのは、豊臣秀吉のキャラクター。同じ作者の「五右衛門妖戦記」では大悪人として描かれていた秀吉ですが、本作、いや本シリーズでは、ある意味戦国時代の象徴的存在として、昌幸と共に物語の前半を強力に牽引することとなります。
 晩年の秀吉を語る上で避けては通れない朝鮮出兵についても、ユニークかつ思わず納得(個人的には森田信吾の「影風魔ハヤセ」を想起)の理由付け。
 本作は、幸村を主人公としつつも、幸村の目を通して最後の戦国武士たちの姿を描く側面も強いのですが、その強烈な代表格として、楽しませていただきました。

 また、朝松ファン的には、(全く別の物語であるのですが)霧隠才蔵のキャラクターが、あのお馴染みの強烈だったのも嬉しいところでありました。


 と、十二分に楽しませていただきながらこういうことを書くのも何ですが、残念な部分――というより勿体ないところがあるのもまた事実。
 それは先に挙げた分量の問題で、通常の文庫書き下ろしに比べれば結構な多さではあるのですが、それでもやはり幸村の活躍を描ききるには、少々厳しかった、という印象はやはりあります。

 せめてもう一巻あれば、戦国武士…というより室町武士道の善き部分を継いだ新時代の武士としての幸村の個性を十全に描きつつも、新しい武士道――と言いつつもそれは支配者のツールとしての精神なのですが――を打ち立てようとする家康との、一種イデオロギー対立を存分に描くことができたのでは、というのが正直な心境であります。
(また、結末に描かれた「家康」の想いも、より痛切なものとなったと思います)


 そして失礼を重ねますがもう一つ。「家康狩り」はここに終わりましたが、真田の戦いはまだ終わっていないはず。
 新しい武士道の下で、道みちの者たちを守るための、もう一人の真田のより困難な戦いがあったのではないかと――そう夢想するとともに、その夢想が現実となることを祈っている次第です。

「真田幸村 家康狩り」(朝松健 ぶんか社文庫) Amazon


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