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2010.03.19

「雪月記」第1巻 軍師が視た死の未来

 一年のほとんどを雪に閉ざされ、夏短く作物はほとんど育たない照遠の地。神子と呼ばれる村長・緋乃は、己に備わった未来を視る力「浄天眼」を用い、常勝の軍師として知られていた。村を滅びから救うために、己の心身を削りながらも緋乃は未来を視る…

 「アフタヌーン」誌にて連載中の時代ロマン「雪月記」の単行本第一巻が刊行されました。中世の北陸を舞台に、相争う武士たちに、己の未来視の力を売り込む「軍師」照遠緋乃の物語です。

 人界から遠く離れた照遠の、その長の家に生まれた(この辺り、色々と裏がありそうですが現時点では不明)緋乃が持つ力「浄天眼」。それは、避け得ない未来を視る力であります。

 なるほど、あらかじめ未来を知っていれば、戦場でその結末を確実にする方法を指南するのは容易いこと、作中で緋乃が常勝の軍師として、半ば畏怖を以て迎えられるのも頷けるところであります。
(避け得ない未来が見えるため、負ける未来が見えた相手には雇われないというのもちょっと面白い)

 しかし緋乃の能力は、単純な予知能力・千里眼の類ではありません。
 その能力を正確に表せば、己が触れた相手が近く死を迎える場合、その死をあらかじめ体験する能力…人の死を媒介にした未来視とも言うべきものなのです。

 すなわち、彼が知ることができるのは、あくまでも個人レベルの死の未来。それを軍師としての助言に足るものに高めるためには、死の未来視の数を、それだけ増やす必要があるのですが――
 しかし、単に人の死を視るのではなく、死を己のものとして体験する彼の力は、言うまでもなく諸刃の刃。
 緋乃は、己の心身を削りながらも、軍師としての務めを果たしていくことになります。

 そんな緋乃の能力は、それ自体の面白さもさることながら、己の手を血で汚すことなく、幾多の生死を生む軍師という存在の残酷さを、逆説的に浮き彫りにしている感があるのが、実に面白いところです。

 この第一巻のラストでは、なぜそこまでして緋乃が軍師として金を稼ごうとするのか、その理由が描かれます。
 緋乃の未来に何があるのか、そして本当に未来を変えることはできないのか――
 派手さはありませんが、先が気になる(その意味では実に「アフタヌーン」掲載らしい)作品であります。


 ちなみに、ある場面で、この宿場は食べ物が悪くなったと言いつつ、時代背景を考えるとやたら良いものを食べているように見えるのですが…実際どうなんでしょうね。

「雪月記」第1巻(猪熊しのぶ&山上旅路 講談社アフタヌーンKC) Amazon
雪月記 1 (アフタヌーンKC)

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