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2010.03.20

「幕末めだか組」第1巻・第2巻 二重写しの青春群像

 1864年、欧米列強の脅威を知った幕府は、勝海舟の下、軍艦乗りを育成するために神戸海軍操練所を設立した。その伝習生の一人、薩摩出身の一路隼人が配属されたのは癸組。しかし、幕臣・藩士入り交じり、一癖ありげな者ばかり集まった癸組は、周囲から「めだか組」と呼ばれることになる…

 今年の大河ドラマは坂本龍馬が主人公ということで、時代ものでも幕末ものが増えているやにも感じられます。
 連載開始以来、単行本化を待ちこがれていた本作「幕末めだか組」もおそらくはその一つ。
 幕末の神戸に実在した海軍操練所を舞台にした青春群像劇であります。

 この海軍操練所は、当時軍艦奉行であった勝海舟の建言によって設立された、歴とした幕府の機関ではありますが、しかし今の目から見ると興味深いことに、そこで学んでいたのは、幕臣のみならず、薩摩・長州・土佐といった、後に維新の原動力となる諸藩の士でした。
 もっともこれは、その前身とも言える長崎海軍伝習所時代からそうではあったのですが、しかし、1864年と言えば、前年に八月十八日の政変が起き、長州と幕府(そして薩摩)の間が非常に険悪なムードとなった頃。その時期に、こうした場が存在していたというのが、実に面白いではありませんか。
(ちなみに坂本龍馬はここの塾頭だったという説とそうでないという説がありますが、本作では後者を取っている模様)

 そして、物語の主人公たちが所属することになる癸組、通称「めだか組」は、そのユニークさを象徴するかのように、幕臣・藩士が入り交じって構成されたクラス。
 他のクラスは、幕臣は幕臣、藩士は藩士でまとまっている中で、唯一の混成であり、しかもどこか変わり者が集まったはみだし集団であります。

 超ポジティブシンキングの薩摩隼人に、夢を見失った元○○○の青年、金持ちのボンボンに、薩摩に敵意を燃やす長州のはぐれ者、ワケありな美青年幕臣…
 個性の固まりのような連中が繰り広げるドラマは、いつの時代も変わらぬ若者たちの学園ドラマであると同時に、極めてその時代特殊の事情を背景にした時代劇でもあるのです。

 そんな二重写しの物語を、無理なくイキイキと成立させているのは、これはやはり作り手の技というものでしょう。
 原作は遠藤明範、作画は神宮寺一――遠藤氏は三遊亭円朝を主人公とした時代小説を過去に発表し、そして神宮寺氏は(このブログでも取り上げている)「機巧奇傳ヒヲウ戦記」を見事にコミカライズした、それぞれに時代ものに親しんだクリエイターであります。

 正直なところ、この第一、二巻では、まだ伝習生たちが軍艦に乗る前の物語であり、かなり地味な展開ではあるのですが、それでもしっかりと物語に引きつけられるのは、さすがだと感じます。


 幕末のごくわずかの期間存在した海軍操練所。そこでめだか組の若者たちが何を見て、何を経験することとになるのか――実に先が楽しみな作品です。

「幕末めだか組」第1巻・第2巻(神宮寺一&遠藤明範 講談社KCデラックス) 第1巻 Amazon/第2巻 Amazon
幕末めだか組(1) (KCデラックス)幕末めだか組(2) (KCデラックス)

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