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2010.03.26

「シグルイ」第14巻 希望と絶望の御前試合へ

 ついに駿河城御前試合開幕か!? というところまでたどり着いた「シグルイ」第十四巻。時系列でいえば、ほぼ第一巻冒頭にまで追いついた(?)こととなりますが、まだまだ一波乱も二波乱もある景色であります。

 ようやく復活したかに見えた藤木。しかし心身ともに度重なるダメージを受け続けた彼は、ついに昏睡状態に。
 その藤木の前に現れたのはなんと伊良子…

 と、相変わらず堂々巡りを続けているようにも見える本作ですが、しかしむしろこれは螺旋階段を上っている(あるいは下っている)というべきか、少しずつ、少しずつ事態は、そして人の心は変わっていきます。

 その最たるものが、藤木その人。伊良子の差し入れの夜叉猿(違 の黒焼きが良かったか、奇跡的な復活を遂げた彼は…
 何だか見違えるように真っ当で爽やかな武士に。

 あの師匠に心酔していた故か、言動はかなりアレだった藤木。それが一度ならず死にかけ、どん底に落ちた末、たった一つ残った己が守るべきものに気付いたとき――彼は変わったのでしょう。

 そして、冷静に考えればイケメンの藤木の真情に触れ、三重の心も和らいでいきます。
 その二人が、まず最初にしたことが、あの虎眼先生の顔が浮き出た血染めの打ち掛けを焼いたことだったのは、二人が過去の呪縛から、未来の希望へと解き放たれた第一歩なのでしょう。

 いや、第十三巻の感想で予想したことが悉く覆された感があるのは汗顔の至りですが、藤木が一個の人間として高みに上ったことを考えれば、これは大いに喜ぶべきでしょう。

 と、そのまま最終回にしたいくらいのめでたい展開ですが…どう考えても悲劇の前振りというか、同門の表現を使えば、雑巾を貶めるには雑巾を飾りたてること、ということでしょうか。

 そう、御前で武技を見せる相手が常人であれば知らず、この御時世に、真剣に武装蜂起を考えている狂人であったとは、藤木の思いも寄らぬところだったでしょう。
(この辺りの描写は、原作読者をまず悩ます車典膳の宿敵・五位鷺志津馬も登場するなど、「武魂絵巻」の要素も取り入れてられているのが嬉しい)

 そんな藤木をはじめとして、それぞれの思いを抱きつつも御前試合に臨む剣士たちが、この十四巻の巻末で勢ぞろいしました…と、思いも寄らぬところで欠員が出てしまう有様。

 希望と絶望と――後者が圧倒的に強いものの――その両者が込められた駿河城御前試合、いよいよ待ったなしであります。

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